森林総合研究所研究報告
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アカマツの窒素利用特性と生育適地の関係 -林木の栄養生理における一考察-
赤間 亮夫溝口 岳男長倉 淳子
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2020 年 19 巻 3 号 p. 221-244

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抄録

森林は本来養分の少ない環境であるが、大気汚染は窒素の負荷の増大という面がある。大気汚染等の環境の変動が森林に及ぼす影響を考える際には、アカマツのようなやせ地に適応した樹木の特性を知ることが重要である。アカマツの適地とされる土壌は酸性が強く、相対的にアンモニア態窒素の供給量が多いと考えられる。水耕や土耕試験では、アンモニア態窒素を施用した場合にアカマツ苗の成長は優れることなどから、アカマツは好アンモニア性と考えられる。アカマツの樹体内の遊離アミノ酸としては、グルタミンとアルギニンが多く、根から地上部への転流形態としてはグルタミンが主である。根や針葉、および木部に存在する水にはほとんど硝酸態窒素は検出されない。アカマツ苗に吸収された無機態窒素は、根の呼吸活動と関連しながら、アミノ酸態へと同化されると考えられる。野外に生育する複数の樹種の中で比較すると、アカマツの葉は塩基類、特にカルシウムの含有率が低い。スギでは吸収した硝酸態窒素の一部は、電気的バランスをとるためにカルシウムを伴って転流し地上部で還元されていると考えられるが、アカマツは、主な窒素源としてアンモニア態を利用しており、硝酸態を吸収した場合には根において速やかに還元・同化する。アカマツは樹体内に硝酸態の窒素を保留しないことにより、塩基類の要求性が低いため、土壌が酸性で、塩基類の不足している環境に適応していると考えられた。

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