年金研究
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サラリーマンの生活と生きがいに関する調査: 中高年の会社員と公務員の比較
長野 誠治
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2018 年 9 巻 p. 30-74

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抄録

本研究は、平成28年度に実施した「第6回サラリーマンの生活と生きがいに関する調査」の結果を利用して、特に中高年(50歳以上74歳以下)のサラリーマン(OBを含む)に着目しながら、対象者を企業年金のある会社員、企業年金のない会社員および公務員の3つに区分[1]し、仕事や家庭さらには生きがいなどについてどのように感じているかを男性・女性別、現役・完全退職者別(全12分類)に比較した。また、家計や資産状況についても実態の比較を行った。

仕事に関しては、仕事の内容、就業の継続性(失業不安など)、休暇の取りやすさ、家庭と仕事の両立などの面において、公務員の方が企業年金のある会社員および企業年金のない会社員に比べて満足感は高かった。

地域活動やボランティア活動に関して、それらに「定期的に参加している」「ときどき参加している」という回答は、自由時間が確保しやすい完全退職者の方が現役よりも多かった。また、現役では公務員の方が会社員よりも参加割合が高かった。一方、参加していない理由については、総じて「興味がない、関心がない」「時間がない」「自分にあった活動の場がない」が多かった。

現在の生活満足感に関しては、健康面では現役の方が完全退職者よりも低く、また男性の方が女性よりも低かった。現役・公務員男性が12分類中で満足感は一番低かったが、完全退職者では公務員の方が会社員に比べて満足感は高かった。時間的ゆとりでは、完全退職者は総じて満足感が高い一方、現役では男性が特に低かった。ただし、現役女性のなかでは公務員の満足感が比較的高かった。経済的ゆとりは現役・完全退職を問わず3グループ間で大きな違いがみられた。すなわち、満足感が高かったのは公務員、次いで企業年金のある会社員であり、逆に企業年金のない会社員では不満がかなり強かった。現役に比べて完全退職者の場合、グループ間の格差はいくぶん縮小するが、この傾向は変わらなかった。

生きがいに関しては、完全退職者の方が現役よりも生きがいを持っている割合が高かった。現役・公務員女性では生きがいとして「仕事」「自分自身の内面の充実」という回答割合が会社員に比べて高かった。

定年や退職に関しては、現職退職後の仕事について男性は3つのグループともに50%以上が「できれば仕事を継続したい」と回答した。企業年金のある会社員女性と公務員女性では「できれば仕事を継続したい」の回答が40%台前半にとどまったのに対して、企業年金のない会社員女性では60%台前半となり、男性の3つのグループのいずれの回答割合を上回った。

仕事継続の時期について「元気なうちはいつまでも」という回答は、企業年金のない会社員女性が一番高く86%に達し、企業年金のない会社員男性が79%でそれに続いた。一方、公務員男性と女性の場合、そのような回答は60%前後であった。企業年金のない会社員女性の仕事継続への意欲の強さが際立った。

退職後における生活原資の第1位は、男性と女性およびグループを問わず「本人の公的年金」であった。第2位は、企業年金のある会社員男性は「企業年金」、企業年金のない会社員男性は「就労による収入」、公務員男性は「退職金」、企業年金のある会社員女性および企業年金のない会社員女性は「預貯金の取りくずし」、公務員女性は「配偶者の公的年金」であった。世帯収入は中央値の高い順に、①現役・企業年金のある会社員男性、現役・公務員男性と女性、②現役・企業年金のある会社員女性、現役・企業年金のない会社員男性、③現役・企業年金のない会社員女性、完全退職・公務員女性、④完全退職・企業年金のある会社員男性と女性、完全退職・企業年金のない会社員男性と女性、完全退職・公務員男性となっていた。暮らし向きについては、現役、完全退職者を問わず全般的に苦しいという回答が多かった。

[1] これらの3区分を本稿では3グループと呼ぶ(以下同様)。

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© 2018 長野誠治
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