2001 年 49 巻 11 号 p. 688-691
12年前に生まれ, 数奇な運命をたどって短い生涯を閉じた(ように見える)「常温核融合」は, 20世紀最後(かつ最大?)の科学スキャンダルとも言われる。そのいきさつを, 個人的な体験を交えて振り返ってみたい。一見したところ清浄無垢な自然科学の世界も, お金と名誉を求め, メンツにこだわり, 権威に寄りかかり定説を鵜呑(うの)みにして思考を止め, 都合の悪いデータには目をつぶる……そういう生臭い人間の営みだという事実を, 常温核融合ドラマはよく教えてくれる。