社会言語科学
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富山・金沢方言における形容詞の副詞化接辞「ナト・ラト」と「ガニ」 : 方言に見られる文法化の事例(<特集>方言)
小西 いずみ
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2004 年 7 巻 1 号 p. 63-74

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抄録

富山・金沢方言では,共通語の形容詞連用形〜クに対応する形が,ナイやナルが後続する場合と,副詞的修飾を行う場合とに分かれており,さらに,後者には「前者の形+ナト・ラト」と「連体形+ガニ」がある.本稿ではこれらナト・ラト形,ガニ形の意味・用法を記述し,その発達過程を考察した.ガニ形は,金沢方言においては,結果の修飾用法も様態の修飾用法も持つが,富山県内の方言では結果の修飾用法はあるが様態の修飾用法がない.この差から,富山方言のガニは「形式助詞ガ+助詞ニ」という語源的構成・意味を保ったものだが,金沢方言のガニはそのような語源的構成・意味を失い,より文法化したものだと考えられる.ナト・ラト形は,富山・金沢方言ともに,ガニよりも広い用法を持ち,形容詞を副詞化する接辞としてより発達したものだと言える.

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