2014 年 39 巻 p. 11-16
日本産樹上性リス類による森林被害に関する論文として,論文検索サイトによりキタリス(Sciurus vulgaris)およびタイリクモモンガ(Pteromys volans)各1編,ニホンリス(S. lis)3編,ムササビ(Petaurista leucogenys)9編の4種14編を収集した.ムササビによるスギ(Cryptomeria japonica)やヒノキ(Chamaecyparis obtusa)の被害は餌植物の不足によるもの,ニホンリスによるキノコ類のほだ木の剥皮害は材内幼虫を捕食するためと考えられた.シカやネズミ類などと比べて樹上性リス類による被害は小さく,むしろ樹上性リス類の健全な生息環境を維持するための休息・繁殖場所となる樹洞の維持,通年多様な食物を提供する針広混交林の創出,移動を妨げない連続した森林配置などの樹上性リス類に適した森林管理が,生態系の改善に向けて重要な課題と考えられる.