土と微生物
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土壌真菌群集と植物のネットワーク解析 : 土壌管理への展望
東樹 宏和
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2015 年 69 巻 1 号 p. 7-9

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抄録

地球レベルで喫緊の課題となっている温暖化,土壌侵食,土壌汚染,食糧不足等の問題に対処するために,土壌生物圏の動態を包括的に理解する枠組みが求められている。農地であれ,森林であれ,ある植物種のバイオマスが増加すると,その相利共生(もしくは寄生)菌の量も増加すると推測される。こうした複雑な土壌生物圏の動態を包括的に理解することを目指し,生物種間の共生ネットワーク構造を大規模かつ標準化された手法で解明する手法を確立した。サンプリングから次世代シーケンシング,ネットワーク理論を用いたデータ解析までを統合したこの手法は,土壌中の生物間相互作用の動態を,時間軸および空間軸に沿って解明することを可能にする。原理的にあらゆる生物群をDNA情報に基づいて解析できる包括性と,柔軟な理論的基盤がもたらす拡張性により,これまで「ブラックボックス」とされてきた土壌生物圏の動態を定量的に評価できるようになると期待される。こうした技術的進歩により,今後は対象生物群や研究分野の垣根を越えて,一人の研究者が土壌生物圏の全体像を把握できる時代がやってくると考えられる。

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