2020 年 9 巻 2 号 p. 81-90
目的:統合失調症の当事者が親に暴力を振るった経験を記述することを目的とした.
方法:親に暴力を振るった経験のある男性8名,女性1名に,親に暴力を振るった背景,暴力を振るった後の思いなどについて個別インタビューを行い,質的記述的に分析した.
結果:親に暴力を振るった当事者は,《辛さが蓄積》《親に反発》《発散できない辛さ》《鬱憤を親にぶつけるか葛藤》《親への暴力の発露》《快感は一転して後悔》《辛さが霧散》《状況の捉え直し》《親との関係を改善》という経験をしていた.
考察:支援者は,暴力が起きる前に,健康的にエネルギーを発散できるように支援することや,親子間の関係調整を行うことで暴力の発生を予防し得ると考えられた.また,暴力の発露は,リカバリーのきっかけになる可能性を秘めていることを視野に入れて関わることが望まれる.