アレルギー
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気管支喘息の研究 : 第5報.そばアレルギーについて
中村 晋室久 敏三郎
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1970 年 19 巻 9 号 p. 702-717,728-72

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抄録

1)そば粉を摂取しあるいは吸入することによつて典型的アレルギー症状(鼻炎, 結膜炎, 喘息, 蕁麻疹, 胃腸症)を呈したと考えられる3例を経験し, アレルギー学的検索を試みたのでその成績を報告した.2)そばアレルギーの症候学的特徴につき文献的考察を試み, 筆者の経験を加味してそばアレルギーの典型的症候像を打ち出した.3)そばによる過敏症状は抗原抗体反応による典型的アレルギー反応と考えられ, 仮性アレルギーとしての意義は少く, また精神身体医学的因子が関与しないことを諸種アレルギー学的検査成績などより指摘した.4)本報告の症例3はそば屋に調理師として就業後9年という感作期間を経て発病した職業性そばアレルギーの貴重な症例であつて, わが国には未だ同様の症例の報告がない.5)そばアレルギー患者にX線透視下でそば添加造影剤を与え, 胃腸通過状況を検したところ, 対照に比して胃の著明な蠕動亢進があり、胃排出時間はむしろ短縮, 回盲部進入時間は著明に延長, 大腸通過は速いという結果が得られた.6)そばアレルギーの合理的かつ効果的治療法はまず抗原の除去ないし回避であり, 可及的に抗原よりの離脱をはからねばならないこと, 症例3のごとく職業上抗原に曝露を免れ難いものでは職場転換を考慮すべきで, これが不可能な時に減感作療法の適応となることを強調した.

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© 1970 日本アレルギー学会
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