日本毒性学会学術年会
第48回日本毒性学会学術年会
セッションID: W7-3
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ワークショップ7
がん化学療法誘発性末梢神経障害および口内炎の予防/治療薬の開発
*中川 貴之
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抄録

殺細胞性抗がん薬を用いたがん化学療法では、骨髄抑制、嘔気・嘔吐、下痢・便秘、脱毛など様々な有害作用が高頻度に生じる。これらの有害作用を如何にコントロールするかが患者のQOL向上だけでなく、がん化学療法を完遂させ治療効果を上げるための鍵ともなる。しかし、末梢神経障害や口内炎など現在も対応が不十分な有害作用もあり、有効な予防/治療法の開発が求められている。がん化学療法による末梢神経障害(CIPN)は感覚神経に対する抗がん薬の神経毒性が主な原因となるが、我々は微小管阻害作用を有するタキサン系抗がん薬などが、末梢神経で髄鞘を形成するシュワン細胞に低濃度から作用し、シュワン細胞を脱分化させることを見出した。さらに、シュワン細胞脱分化に伴いシュワン細胞から産生・遊離されるガレクチン-3がマクロファージを誘引するこによりCIPNの症状の1つである痛みを誘発することを明らかにしてきた。また、シュワン細胞を分化誘導できる薬物がCIPNの予防/治療薬候補になり得ると考え、これまで既承認医薬品や化合物ライブラリー等がスクリーニングを行ってきた。その中で、PDE阻害薬シロスタゾールがシュワン細胞分化誘導能および抗がん薬によるシュワン細胞脱分化抑制作用を示すことを見出し、また、CIPN動物モデルにおいてもその有効性を確認した。現在、他の予防/治療薬候補についても検討を行っている。一方、通常のがん化学療法で30〜40%、造血幹細胞移植時の移植前処置(大量化学療法)では70〜90%の患者で口内炎が発生する。現在は口腔内保清/保湿や痛みが強いときには鎮痛薬や局所麻酔薬の含漱で対処されているが、有効な予防/治療はない。これまで、漢方薬の半夏瀉心湯を溶かした含漱水が効果を示すことが報告されているが、その有効性には限界がある。そこわ我々は、薬剤部で半夏瀉心湯軟膏を製造し、その有効性をモルモット口内炎モデルで確認してきた。現在、臨床試験の実施に向け準備中である。

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