日本トキシコロジー学会学術年会
第33回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: P-114
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トキシコパノミクス
抗体投与によるInfusion Reaction回避のための新規前処置剤の予備検討
*鈴木 睦小島 健介林 砂緒川原 潤一
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抄録

【目的】抗体投与に伴う副作用として、Infusion Reactionが知られている。Infusion Reacitonの発現時にはTNF-αやIL-6の増加が認められており、サイトカイン放出症候群と言われることもある。しかしながら、現在Infusion Reactionの詳細な発現機序については不明な部分が多い。臨床現場では、この反応を回避する目的で抗体投与前に抗ヒスタミン薬などを前投与することも行われているが、全てのInfusion Reactionを抑制するには至っていない。そこで我々は、抗体によるInfusion Reactionを回避する前処置剤を探索する目的で実験を実施した。【方法】Infusion Reactionの反応が認められたサルから、Infusion Reaction前後の血液を採取し、包括的な遺伝子検索を実施した。解析後に選定された前処置剤候補について、マーモセットを用いてInfusion Reactionの回避を確認した。さらにInfusion Reactionで認められるサイトカイン放出に対する影響を検討する目的で、擬似的なモデルとしてラットにLPSを投与し内因性のサイトカインを誘導するモデルを用い、その誘導に対する影響を検討した。【結果】包括的な遺伝子検索の結果、カスパーゼ関連遺伝子の変動が認められた。そこで、マーモセットにカスパーゼ関連遺伝子の変動を抑える目的でミノサイクリンを前投与したところ、Infusion Reactionによる死亡や一般状態の悪化が認められなかった。さらにラットを用いた検討では、ミノサイクリンの投与によりLPSによるカスパーゼの変動が抑制され、各種サイトカインの誘導が抑制された。これらのことから、抗体投与によるInfusion Reactionに、新たにカスパーゼが関与することが考えられた。また、抗体投与によるカスパーゼ発現減少を抑えるミノサイクリンの前投与はInfusion Reactionを抑制する目的に有効である可能性が示された。

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© 2006 日本毒性学会
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