順天堂医学
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原著
アルツハイマー病の危険因子
--順天堂浦安病院老人性痴呆疾患センター相談例における検討--
熊谷 亮宇田川 正子飯塚 美乃田中 茂樹一宮 洋介
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2004 年 50 巻 4 号 p. 392-398

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抄録

目的: 千葉県浦安地域におけるアルツハイマー病の危険因子を検討するため, 順天堂浦安病院老人性痴呆疾患センター相談者について後方視的研究を行った. 対象: 当センター相談後に順天堂浦安病院メンタルクリニック外来を受診し, 専門医の診察を受けた症例のうち, DSM-IV (Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders) の診断基準を満たし, 頭部CT・MRI・SPECTなどの検査所見からアルツハイマー病と臨床診断された60症例を対象とした. 方法: 対象となった症例について, これまでにアルツハイマー病との関連が指摘されている性別・発病年齢・既往歴および合併症などの項目とアポリポ蛋白E遺伝子型を調査した. また, 併せて塩酸ドネペジルに対する反応も検討した. 結果: 男女比は1:1.9と女性に多く, 平均発症年齢は72.3±8.4歳であった. アポリポ蛋白E遺伝子型はε4/4が5名 (平均年齢72.8±7.2歳;男性2名, 女性3名), ε4/3が29名 (平均年齢73.8±7.7歳;男性11名・女性18名), ε4/2が1名 (77歳;女性), ε3/3が24名 (平均年齢69.8±8.6歳;男性9名, 女性15名), ε3/2が1名 (76歳;女性) であった. そのうち, 70歳以下で発症した症例はε4保有者に多く見られた. 高血圧・糖尿病・高コレステロール血症といったいわゆる〈生活習慣病〉に罹患している症例が過半数を占め, 総コレステロール値が220mg/dlを超えると症例数が増加する傾向が示された. 9年以下の教育歴の症例は33名おり, うち29名を女性が占めていた. また, 塩酸ドネペジルはほとんどの症例で痴呆の進行を抑制する形で効果を発現していたが, ε4保有者には無効例が目立った. 結論: 女性・加齢・ε4が危険因子である事は従来の報告と一致していた. また発症までの生活習慣, 特に高コレステロール血症が発症に関与していることが示唆された. 今後アポリポ蛋白E遺伝子型の精査も含め, どの様な検査がアルツハイマー病の早期発見・早期治療に繋がるか検討を続けていく必要がある.

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© 2004 順天堂医学会
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