貯蔵ショウガの根茎を食害し,腐敗を伴う被害を与えるクロバネキノコバエは,ヒトトゲクロバネキノコバエPsilosciara flammulinae SASAKAWAとショウガクロバネキノコバエPhytosciara zingiberis SASAKAWAの2種で,後者は新種である。
ショウガクロバネキノコバエによるショウガ根茎の被害の進行状況を観察したほか,長崎県内における被害発生の実態ならびに室内飼育による本種の生態を調査した。その結果,貯蔵庫内での被害発生は,ショウガの収穫と同時に,根茎への食入幼虫あるいは産下卵の付着した根茎の搬入に起因していると考えられた。
成虫はショウガの茎葉基部や根茎表面に産卵する。幼虫はまず根茎の茎葉切断部や萌芽部の組織の柔らかい部分を食害する。その後,次第に根茎内部に食入してゆき,ついには繊維質だけが残ったスポンジ状の根茎となり,雑菌の侵入を伴ったばあいには根茎の腐敗を伴う。
灰色かび病菌を培養したPDA培地による飼育での卵・幼虫・蛹期の有効積算温度はそれぞれ72.1, 135.6, 62.5日度であった。
貯蔵庫内ではショウガ収穫後約1か月経った12月上旬から成虫の発生がみられ,1月上旬に第1回目の発生ピークが,つづいて2月中に第2回目のピークがみられたのちは3月下旬まで多発した。したがって貯蔵期間中に2∼3世代経過するようで,世代を経るにつれて被害が激増した。