日本薬理学雑誌
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創薬シリーズ(3) その3 化合物を医薬品にするために必要な安全性試験
血液毒性
岩瀬 裕美子筒井 尚久
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2008 年 132 巻 6 号 p. 343-346

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抄録

薬物誘発性の代表的な血液毒性として,赤血球減少(貧血),白血球減少,血小板減少がある.その主な機序として,造血器における造血系細胞の分化増殖過程への障害と末梢における成熟細胞の破壊が考えられている.医薬品の研究開発では,実験動物を用いた一般毒性試験の中で,末梢血を用いた血液学的検査により血液毒性を日常的に評価している.加えて,フローサイトメトリーを用いた造血系細胞の解析は,薬剤誘発性の血液毒性の機序推定に有用と考えられる.また,薬物による造血系細胞の分化増殖能への影響を調べるため,コロニー形成試験や細胞内ATP含量を指標に求める実験(ATPアッセイ)が行なわれている.近年,臨床における血液毒性を予測するため,in vitroのコロニー形成試験とin vivoの毒性試験の結果から算出されるモデルが提示されており,前臨床段階におけるリスク評価に有用と考えられる.

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© 2008 公益社団法人 日本薬理学会
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