日本薬理学雑誌
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治療薬シリーズ (3) 高血圧症
食塩感受性高血圧とNa+/Ca2+交換体:食塩負荷から血管トーヌス亢進への古くて新しい機序
岩本 隆宏
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2006 年 127 巻 5 号 p. 387-392

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抄録

食塩過剰摂取が血圧を上昇させることは広く知られているが,その機序については不明な点が多い.最近,著者らはNa+/Ca2+交換体阻害薬および遺伝子改変マウスを用いた研究から,血管平滑筋の1型Na+/Ca2+交換体(NCX1)を介するCa2+流入が食塩感受性高血圧の発症に重要な役割を果たすことを見いだした.従来から,食塩過剰摂取により内因性Na+ポンプ抑制因子が増加することが報告されているが,NCX1を介する食塩感受性高血圧にはこの因子が関与する可能性が高いと考えられた.また,ごく最近,Na+ポンプ変異体のノックインマウスを用いた研究から,Na+ポンプの強心ステロイド結合部位が血圧調節に重要な役割を果たすことが証明された.これらの知見は,食塩負荷から,Na+ポンプ抑制因子の分泌,Na+ポンプ活性の低下(細胞内Na+濃度の増加),血管平滑筋のNCX1を介するCa2+流入,血管トーヌス亢進へ至る一連の機序が食塩感受性高血圧の発症にかかわることを強く示唆している.このルートを遮断するNa+/Ca2+交換体阻害薬およびウワバイン拮抗薬は,新たな高血圧治療薬として将来の治療応用が期待される.

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© 2006 公益社団法人 日本薬理学会
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