酪農科学・食品の研究
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原報
食肉中のミオグロビンに関する反射分光法
泉本 勝利小沢 忍
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1993 年 42 巻 5 号 p. A-157-A-169

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抄録

 食肉中には酸素型, 還元型, メト型の3種のミオグロビン誘導形態が存在し, 多様な色調を呈する。酸素型ミオグロビンは鮮紅色で望ましいが, メ卜型ミオグロビンの形成による褐色化は消費者に忌避される。そこで, 食肉の色調評価はメト型ミオグロビンの割合で一般に表現されている。しかし, 還元型ミオグロビンの濃い紫赤色は酸素型ミオグロビンの色調と大きく異なり, 好ましくない。それ故に, 食肉の色調の品質管理および評価のためにはメト型ミオグロビンの唯一の割合では不充分である。そこで, 酸素型, 還元型, メト型ミオグロビンの3種すべての誘導形態の割合を知る必要があるが, 抽出法では誘導形態が変化するので実用的ではなく, 確立されていない。また, 実際的な使用のためには必要な情報の取得はリアルタイムでなければならない。この目的のために, 反射率分光法による直接測定法を試みた。
 牛肉の反射率スペクトルの特性が解析され, ミオグロビン誘導形態の測定のための改良された方法が提案された。新しい関数は吸収係数/散乱係数の比と対応するを基本とするパラメーターから誘導された。得られた関数は食肉の色調現象およびスペクトルのパターンの特性と一致した。反射率スペクトルのデータは測定機と結合したパーソナルコンピューターに転送された。プログラム計算によって, 色調値, ミオグロビン誘導形態の割合はリアルタイムに算出された。この方法は食肉の色調現象の迅速な品質評価・管理および生化学的様相をモニターするために有用と思われる。

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© 1993 日本酪農科学会
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