日本蚕糸学雑誌
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卵浸漬法によるN-メチル-N-ニトロソウレアのカイコの発生に及ぼす影響と突然変異誘発
河口 豊土井 良宏伴野 豊藤井 博
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1985 年 54 巻 3 号 p. 213-221

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抄録

産下後0.5時間から24時間までのカイコ卵をN-メチル-N-ニトロソウレア (MNU) 溶液に浸漬処理して, その影響を調べた。精核と成熟分裂中の卵核とが共存する産卵0.5時間後でのMNU処理卵において, 受精率にはほとんど影響はなかったが, 胚子生存率は顕著に低下し, かつ, 孵化した幼虫には奇形をはじめ斑紋, 体色に異常を生じたものが多かった。胚子生存率, 孵化幼虫の形質異常のいずれを指標にした場合も, MNU感受性は受精期から分割期の初めにかけての間に高く, 分裂核が周辺原形質に入り細胞膜が形成されるに至ればMNUの効果はほとんど認められなかった。またMNU処理卵の後代から優, 劣, 種々の突然変異体を発見したが, 遺伝子の座位を確定し得たのは5種である。カイコの発生初期卵を用いる卵浸漬法は化学物質の突然変異原性の検定系として有効であるのみならず, 催奇性に関する簡便な第1次検定系としても利用し得ると期待される。

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