日本調理科学会誌
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水の硬度が煮出し汁の嗜好性と溶出成分に及ぼす影響
坂本 真里子河野 一世熊谷 まゆみ赤野 裕文畑江 敬子
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2007 年 40 巻 6 号 p. 427-434

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抄録

硬度の異なる3種の水,南アルプスの天然水,エビアン,コントレックスを用いて,かつお節だし,野菜スープ,牛肉のスープストックを調製した。総窒素,遊離アミノ酸,イノシン酸,グアニル酸,有機酸の分析および官能評価を行い,水の違いを比較した。
かつお節だしでは用いた水の種類によって,遊離アミノ酸のパターンが異なっていた。官能評価では総合的な好ましさに有意の差は無かったが,エビアンと南アルプスの天然水が好まれる傾向にあった。野菜スープでは南アルプスの天然水に殆どの遊離アミノ酸が多く,次いでエビアンに多かった。官能評価ではこの両者が有意に好まれた。牛肉スープストックではコントレックスがアクを最も多く分離してスープは清澄であった。遊離アミノ酸合計量はエビアンに最も多く,ついでコントレックスであった。エビアンはイノシン酸,グアニル酸も有意に多かった。官能評価で最も好まれたのはエビアンであった。
硬度の異なる水で3種の煮出し汁を調製すると,溶出成分に差があった。煮出し汁の好ましさは溶出成分だけでなく,水そのものの味も影響することから,溶出成分と水の味との兼ね合いで好ましさが決まるといえる。

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