日本温泉気候物理医学会雑誌
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原著
足浴がエネルギー代謝に及ぼす影響の検討
中村 雅俊藤堂 萌海老根 直之福岡 義之高倉 久志北條 達也
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2018 年 81 巻 2 号 p. 70-75

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抄録

  足浴は,古くから医療現場において疾痛の軽減や入眠改善などに用いられ,血管拡張による血流量の増加,むくみの改善,リラクゼーション効果,深部体温上昇効果があると報告されている.しかし,足浴がエネルギー代謝および生理学的指標に与える影響については不明確である.そこで本研究では,足浴がエネルギー消費量および生理学的指標(心拍数および鼓膜温,血圧)に与える影響について明らかにすることを目的とした.健常な成人男性9名(年齢:23.0±1.0歳,体重:66.5±5.6kg,体脂肪率:15.1±4.3%)を対象とした.環境制御室(室温25°C,湿度40%)内にてフード法により回収した呼気ガス中の酸素消費量と二酸化炭素排出量からエネルギー消費量を算出した.被験者にはフード内で測定開始から終了まで安静座位を保持させた.まず,30分間の安静座位の後,足浴を30分間実施し,さらに足浴終了後60分間安静座位とし,エネルギー消費量を評価した.また,心拍数を経時的に,鼓膜温(深部体温)と血圧を15分毎に測定した.なお,足浴は膝下まで浸漬とし,湯温度は恒温器を用いて41°Cを保持させた.統計処理は,全ての項目において一元配置分散分析を用いて検討した.統計処理の結果,全ての項目において時間に有意な主効果が認められなかった.これらの結果より,足浴によるエネルギー消費量の有意な経時的な亢進はみられず,心拍数および鼓膜温,血圧においても有意な変化が生じないことが明らかになった.これら結果より,41°Cで30分の足浴では,エネルギー代謝の有意な変化はみられない可能性が高いことが示唆された.

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© 2018 日本温泉気候物理医学会
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