環境科学会誌
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降雨によるカラマツからのフェノール物質の溶出量とその季節変化
稲冨 素子牛久 保明邦小泉 博岩城 英夫
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2004 年 17 巻 4 号 p. 275-285

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抄録

 東京農業大学奥多摩演習林内のカラマツ林を対象に,樹幹流と林内雨中の全フェノール溶出濃度と溶出量を測定した。調査は1996年12月から1998年11月までの2年間にわたり毎月1回行われた。 樹幹流と林内雨を比較すると,全フェノール溶出濃度は樹幹流のほうが高いものの,流下する水量が林内雨よりはるかに少ないため,全フェノール溶出量は林内雨のほうが多かった。試験木から溶出したフェノール物質の量は林内雨,樹幹流とも降水量の多い時期に多かったが,降雨中のnss-SO42- やNO3- 沈着量の変動とは明瞭な関係を示さなかった。 全フェノール濃度を測定した試料の内1998年6月の試料中の14種類のフェノール物質についてそれらの濃度を調べたところ,6種類のフェノール性酸が検出された。試料中に含まれるフェノール性酸濃度は10-7Mと低いものの,既往の研究において野外で他感作用を引き起こす程度の濃度レンジであった。

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