日本生物学的精神医学会誌
Online ISSN : 2186-6465
Print ISSN : 2186-6619
神経生理学的研究からみた統合失調症の GABA 機能障害
平野 羊嗣
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ジャーナル オープンアクセス

2015 年 26 巻 4 号 p. 199-203

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抄録

最近の,脳波や脳磁図,光遺伝学といった電気生理学的研究の進歩や,死後脳研究の知見により,皮質の周期的神経活動(neural oscillation)の異常が,精神疾患の病態生理に深くかかわっていることがわかってきた。神経活動の中でも主にγ帯域の周期的皮質活動(γ band oscillation)が,認知や知覚,または意識に関連していることが知られているが,認知機能や知覚処理の障害,自我意識障害を有する統合失調症患者では,特にこのγ band oscillation が障害されていることが明らかになってきた。γ band oscillation の障害は,神経回路内のリズムメーカーとしての機能を担う GABA 作動性の抑制性介在ニューロンの機能低下と,興奮性ニューロンの障害(NMDA 受容体の機能低下)ならびに,この両者のバランス(E/I バランス)が破綻することにより生じるとされている。さらに,これらの現象は種を問わず認められ,統合失調症のモデル動物でも同様の結果が得られるため,統合失調症の新たな病態モデル,治療ターゲットとして注目されている。

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© 2015 日本生物学的精神医学会
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