2015 年 18 巻 1 号 p. 38-44
背景:エキノキャンディン系の抗真菌薬であるミカファンギン(micafungin: MCFG)は安全性と有効性から幅広く使用されてきているが,時に致死的なブレイクスルー感染症を経験するなど,近年の新規抗真菌薬の発売も加わり深在性真菌症治療はより複雑化している。目的・方法:MCFG耐性非カンジダ属真菌によるブレイクスルー感染症の発生動向と特徴を明らかにするために,2002(平成14)年から2012(平成24)年まで当科および関連施設で経験した同感染症について臨床的検討を行った。結果:20症例あり,内訳はトリコスポロン感染症が18 例(90%),クリプトコックス感染症,接合菌感染症がそれぞれ1例(各5%)であった。19例(95%)は基礎疾患に造血器疾患を有し,16症例(80%)が死亡していた。結論:報告の多いトリコスポロン感染症を中心にMCFG耐性真菌症の疫学情報はそろいつつあるが,散発的に稀な真菌血症が出現することや,患者背景の多様化に伴い造血器疾患患者以外にもMCFG耐性真菌症の発症頻度が上昇する可能性にも留意が必要である。