「結婚相手に求める条件」のこれまで
あなたは全て答えられるか?

 知人の40歳の独身男性は結婚願望がうっすらとあり、なんとなくマッチングアプリに登録している。彼の肩書は“年収1000万円以上”であり、次から次にマッチングできるそうである。

 本人に言わせればプロフィールの書き方や写真のチョイスなど、マッチングを成功させる秘訣が十重二十重に張り巡らされているらしいが、筆者からすれば、やはり“年収1000万円”が大活躍しているとしか思えない。お金はあって困ることはなく、伴侶となる人の稼ぎが良ければそれに越したことはない。だから、いくら「3高は古い」といっても“高収入”は依然として強いし、ほかの“高身長”や“高学歴”にも強みは残っている。

 ただ、目立って着目される点は時代ごとに変わってきている。「結婚相手に求める条件」には過去どのようなものがあったのかを紹介しよう。

 まず、おさらいがてら「3高」であるが、この語はバブル期に生まれて1990年代から流行語となったらしい。1990年代といえば筆者の年齢が10~20歳であり、結婚を考える年齢ではなかったため、実際に3高がどれくらい重要視されていたのかを肌で感じる機会がまったくなかった。 

 ただ、知識としてはよく聞いていたので、身長が低い筆者は「3高には決して届かない」という暗い思いを引きずりながら約20年間過ごしてきた(30歳頃にようやく「身長が低くてもいいじゃないか」と開き直れた)。

 実は「結婚相手に求める条件」は、3高誕生から今に至るまで幾度も変わってきていたようであった。いや、正確には「3高」などの古い価値観が死滅して次の価値観が席巻してきたわけではないのだが、その時々の世相を反映して「ズバリ、今はこれがその条件です!」と度々取りざたされてきたのである。

 ざっと挙げてみると、まずバブル崩壊後に「3C」というのがあった(らしい。筆者はこの原稿を書く上で調べて初めて知った)。これは「comfortable(十分な給料)」「communicative(価値観が一緒)」「cooperative(協調的)」の三つであり、バブルの崩壊を受けて「高望みはしないけれど、これくらいは望みたい」という、バブルなる夢から覚めて現実路線に回帰しつつある意識をうかがわせるものであった。

 また、これとだいたい同じ時期に「3平」というのも出てきた。平成元年が1989年に始まったので、元号にも絡めたネーミングである。こちらは「平均的な収入」「平均的な容姿(『平凡な外見』とも)」「平穏な性格」の三つであり、3Cよりさらに地に足をつけた条件となっている。「もう多くは望みませんから人並みの幸せをお授けください、神様」というところである。

 そしてさらにそのあと、今度は「4低」(『3低』から変化したとも言われる)というのが出てきた。この語の誕生は、知恵蔵miniでの記載が2017年と確認できたので、時期的には2010年代半ばあたりであろうか。「低姿勢」「低依存」「低リスク」「低燃費」の四つが結婚相手に求める主な条件として挙げられ、改めて「3高」と比べてみるとすさまじい差である。3高に夢があって華々しかった分、4低は現実の生ぐささと女性の悲痛な叫びをうかがわせる感がある。

「4低」ともなると、男性としては、こちらとて精いっぱい生きているのに「あばら家でもいいから雨宿りさせて」とお願いされているようで心外だ。しかし、女性側にそんなつもりはなく、世相や己が置かれた状況と折り合いをつけた上で現実的に最大限望めるポイントが「4低」というだけである。そもそも「4低」は字面に漂うネガティブな気配が強いだけで、4つの“低”を冷静に見てみればかなり高い水準の要求がなされている。