芭蕉db
   一有が妻

暖簾の奥ものふかし北の梅

(真蹟懐紙)

(のうれんの おくものふかし きたのうめ)

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 貞亨5年春。『笈の小文』の旅で、伊勢の一有<いちゆう>宅にて。一有は園女の夫で医師。園女については、後に元禄7年「白菊の目に立て見る塵もなし」と詠んでいる。

暖簾の奥ものふかし北の梅

 お宅に招かれて暖簾の向こうを眺めてみると見事な梅が咲いています。
 ところでこの「北の梅」は北堂の梅のこと、すなわちこの家の主婦の住いの庭の梅、転じて一有の妻園女のことである。暖簾は医業をさす。あなたの医業を支えているのは奥ゆかしい北庭に住む妻園女の内助の巧のゆえですねというのであろう。芭蕉は、園女に対して「白」のイメージを持っていたらしい。