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【佐伯チズ】伝統ってステキだ“和” 今の女性は「テイク&テイク」

2011.02.02


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 「日本中の女性をキレイにしたい」と書いた美肌の本はシリーズで200万部超の大ベストセラー。東京・銀座でエステティックサロンを経営し、ひと呼んで「ゴッド・ハンドを持つエステティシャン」。最近は、テレビのコメンテーターとしても活躍している“美のカリスマ”である。

 ゲラン、ディオールといった“ブランド”外資系企業に勤務し、アメリカでの生活も長い。華麗なる経歴から、生活様式や価値観は、さぞかし「ドライな洋風」と思いきや、これがスジ金入りの『和風』なのだ。

 「日本ほどいい国はありませんよ。四季があって、それを五感で感じる文化がある。振る舞いやしぐさ、作法やあいさつ、日本の伝統によって培われてきたものがどれほど素晴らしいことか。外国で生活し、ドライな外資系企業で長く働いた私だからこそ、よけいに分かるんです」

 和の心、日本人の伝統的な価値観を教えてくれたのは、おじいちゃんやおばあちゃん。ご飯を食べるのはお父さん(家長)が箸をつけてから。「あいさつ」は最高のコミュニケーション。「もてなし」という、まごころ。凛とした和服の素晴らしさ…。

 でも、昔は当たり前だったことが、現在の日本では急速に失われつつある。核家族化の進行で“おばあちゃんの知恵袋”もない。生活様式や価値観はアメリカナイズされ、「合理的に」「お金さえあれば」という考え方に子供まで染まっている。

 それに、イマドキの女の子ときたら、幼いころから厚化粧に茶髪、金髪。簡単にセックスしてしまい、その揚げ句は“できちゃった婚”。美のカリスマには、それがガマンならない。

 「せっかくきれいな肌や黒髪をもっているのに、若い女性はどうして10代のうちから濃い化粧をしたり、外国人のまねをして茶髪や金髪に染めてしまうんでしょうね。だからお肌はボロボロ。外国人は茶髪の若い女性を見て不思議がっています。これは、教えないお母さんがよくない。政治も教育もダメ。流行をもてはやすメディアにも責任がありますよ」

 このままじゃ、日本の素晴らしき伝統が失われてしまう。「私が教えてもらったことをしっかりと伝えていかねば…」との決意を込めて書いたのが、『佐伯チズの和美人の本』である。その内容は、「装い」「ふるまい」「思いやり」「五感」「伝統」で、きれいになる…。つまり、内面からにじみ出てくる女性の美しさだ。

 たとえば、《「尽くす」という和の「女道」》。男性を立てる女性は美しい−という伝統的な日本の価値観なのだが、いまや“化石状態”。そもそも、そんなことを男性が口にしようものなら、「女性蔑視」「時代錯誤」の大ブーイングは間違いなしだ。

 「それがおかしい。今の若い女性は、ギブ&テイクじゃなく、テイク&テイク。私は主人に対して、『あれもしてあげたい、これもしたい』の気持ちでいっぱいでした。すると、不思議なことに主人も妻としての役割を全うしようとする私に『尊敬』と『感謝』の念をもってくれたのです」

 そのご主人とは、ずっとラブラブ状態だった。1985年、がんで52歳の若さで亡くなったときは、あまりのショックに茫然自失となり、寂しさのあまり、ご主人の遺骨を口にしたことまで…。目が覚めたのは母の一言だった。「アナタ、お骨をウンチにするつもりなの、って」。

 「私は何をやっていたんだろう」。そこから再チャレンジが始まった。看病で、ほったらかしになっていた肌を引き締め直し、無我夢中で仕事に取り組み始めた。

 「約束なんですよ。私の仕事を応援してくれた主人のためにも、『がんばらなきゃ』って」

 今あるのも、ご主人のおかげ。「おかげさま」の心もまた、「和の心」である。(ペン・大谷順 カメラ・三尾郁恵)

プロフィール さえき・ちず 1943年6月23日、旧満州・新京(現・中国東北部長春)生まれ、67歳。ゲラン、クリスチャン・ディオールの日本法人勤務を経て、2003年、東京・銀座にエステティック・サロン「サロン ドール マ・ボーテ」をオープン。テレビ、執筆、講演でも活躍し、女性の圧倒的支持を得ている。主な著書は『美肌革命』(講談社)、『佐伯チズ 人生の歩き方』(NHK出版)など。昨年秋、『佐伯チズの和美人の本』(東京書籍)を出版した。

 

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