ぴいぷる

【水谷八重子&波乃久里子】華咲く2人 舞台「香華」で母娘役

2010.08.03


水谷八重子さん(右)と波乃久里子さん【拡大】

 2人とも歌舞伎役者を父にもつ家に生まれ、育った。年の差は6つだが、母娘として昭和13年から戦後を描く舞台「香華」(8月5−22日、東京・日本橋三越劇場、25日−9月28日、地方公演)に出演する。

 男性遍歴を繰り返す母・郁代(水谷)と、奔放な母の姿を見ながら女の幸せを考える娘・朋子(波乃)。2人の数奇な人生を笑いあり涙ありで描く。

 水谷「郁代の生き方は、とても考えられません。私の母親(初代水谷八重子)とはかけ離れています。本当の姿が郁代に似ているのは久里子ちゃん、私はどっちかというと朋子のような…」

 波乃「え〜? 八重子姉(あね)の方が郁代っぽいかもしれません。私も朋子ではありませんけど。でも、先代(=初代水谷)からは『作ろうとしないで自然に』と言われました。16歳の役なら16歳なんだと思えばいい。目で芝居は変わるものです」

 水谷「まったく同感です。朋子の目をした久里ちゃんを見れば、自分も郁代になれちゃうのよね。相乗効果があるの」

 波乃「鏡なんですよ。特にお姉ちゃまとは。『芝桜』をやったとき、(演出の)小幡欣治先生から『久里子と良重は女優で生きようとせず、役で生きようとしているよね』と言われたわよね」

 水谷「うん。役と自分との区別がなくなるのが一番望ましいことですから。郁代は自由奔放でぜいたく好み。まるで(波乃を親指で指して)これ」

 波乃「50年もやっていると、おざなりの芝居になっちゃうのが怖い。だから、律さなければね。自分との闘いですよ。ベテランにはなりたくないんです。それが私の課題です。(初代)八重子先生に『ベテランと言われたら、恥と思いなさい』と言われました。だからベテランと言われるとゾーッとします」

 水谷「(ベテランは)年寄りって意味よ(笑)。ある舞台で一生懸命芝居をしたら、母に『あなた、普段でもそうする? そんな大げさに言う』と言われたことがあるの。私は(役者の)ほかに能がないんです。人の奥さんにもなりましたけど、合わなかったからやめました。主婦になる能もなかった。でも、あんた、まだ試してないわね」

 波乃「一生ないでしょうね。芝居と結婚しましたので。キザだけど(笑)。私は八重子先生に憧れていて、教わったことを少しでも若い人に伝授したいんです。女優のレベルを上げてくれたのが八重子先生ですから。父(17代目中村勘三郎)はかんしゃく持ちで芸術家。私は凡人でかんしゃく持ちだからどうしようもない。悪いところしか似なくてね。たいがい女の子は父親に似るもの。喜怒哀楽がひどい父だったから、冷静な八重子先生に憧れたの」

 水谷「私は父(14代目守田勘彌)と暮らしてはいないけど、似ていると思います」

 波乃「八重子先生は惚れてましたね、勘彌ちゃまに。だから、八重子お姉ちゃまの自由奔放ぶりに、惚れた目をしていたこともあったわよね」

 水谷「私がお酒を飲んでいたときに『パパそっくりだわ』って言われたことがあるわ」

     ◇

 一言水を向けただけで、あっという間に咲いた2人のおしゃべりの“華”。続きの香りは舞台で−。

 ペン・栗原智恵子

 カメラ・松本健吾

プロフィール みずたに・やえこ 本名・松野好重(まつの・よしえ)、1939年4月16日、東京都生まれ、71歳。51年に女優、55年に歌手デビュー。黒柳徹子、横山道代と3人娘と呼ばれた。朝丘雪路、東郷たまみと「七光り三人娘」を結成。59年にジャズドラム奏者の白木秀雄と結婚するが、63年に離婚。95年に母で初代水谷八重子の後を継ぎ、2代目を襲名。父は歌舞伎役者で14代目守田勘彌。2001年、紫綬褒章受章。09年、旭日小綬章を受章。

 なみの・くりこ 本名・波野久里子。45年12月1日、神奈川県鎌倉市生まれ、64歳。父は歌舞伎役者の17代目中村勘三郎。実弟は18代目中村勘三郎。50年、「十七世中村勘三郎襲名披露初春大歌舞伎」で初舞台を踏み、62年4月、劇団新派に入団。

 

注目情報(PR)