第462回 番組審議会議事録

1.開催年月日
平成17年05月13日(金)
2.開催場所 クラブ関西
3.委員の出席 委員総数 10名
出席委員数 8名
出席委員の氏名 秋山喜久、金剛育子、林 千代、馬淵かの子、野村明雄、
阪口祐康、佐古和枝、川島康生
欠席委員の氏名 熊谷信昭、老川祥一
会社側出席者 土井共成 (代表取締役会長兼社長)以下13名
4.審議の概要 番組視聴
「ウエ―クアップ!ぷらす」
放送日時 2005年4月16日(土)放送分 
毎週土曜日 朝8時00分~9時25分放送
放送エリア 全国ネット
 5月度の番組審議会は5月13日(金)大阪市内で行われ、報道局制作の報道番組「ウエ―クアップ!ぷらす」について審議した。
委員からは「一週間の出来事をいろいろな観点から振り返ってくれて、なるほどと思うことが多く、毎週楽しみに見ている」「在阪で唯一の全国ネットの報道番組ということで、ぜひ日々のニュースを関西の目線で分析するというコンセプトを堅持していってほしい」など番組を評価する意見が出された。また、「ニュース番組がワイドショー化する中で、冷静に伝えるという姿勢が大切」「視聴者が問題意識を持つように、いろいろな視点を踏み込んで見せてほしい」「現象面を捉えるだけでなく、底流にある問題を十分議論できるような番組にしてほしい」といったニュースの選び方や見せ方、伝え方などについての指摘や要望もあった。
この後、4月に寄せられた視聴者からの意見や抗議、苦情などについて概要を報告した。

【審議内容】
社側
それでは平成17年、新年度を迎えました番組審議会を始めさせていただきます。
本日は熊谷委員長と老川委員が所用のため欠席でございます。
まず新年度の委員長互選をお願いいたします。事前のご案内で、委員長、副委員長につきましては、再任でご了解をいただいているところですが、改めて、この場でご承認をいただければと思っております。委員の方々いかがでしょうか。
(一同拍手)
ありがとうございました。それでは本日はご欠席でございますが、熊谷委員長、それから野村副委員長、馬淵副委員長で、本年度もお願いいたします。
それでは審議に入ります前に会社側を代表して、土井会長兼社長より一言ごあいさつをさせていただきます。

社側
きょうはお忙しいところありがとうございます。新年度も引き続きまして、よろしく審議をお願いいたします。容赦のないご叱責をいただきたいと思います。
最近もJR西日本さんの記者会見で、記者の質問の仕方が、いかがなものかと思うようなことがあり、世間からも、皆さんからも、ご批判をいただいております。我々も本当に気を引き締めていかなければならないと思っております。
特に放送が始まりまして50年。今まで考えてみますと、つくる側の論理で「こういうものをつくってみよう」というのが優先してきたように思います。
これからは、ますます見ていただく側、読んでいただく側の目線で、それに合わせて、どういうふうにつくっていくかということを考えていかなければいけないと思っています。
また、今年当初からお騒がせしましたライブドア問題のように、経営の上には資本の論理というものが、我々の視野の中に入ってきております。これに対しても、どういうふうにしていくか、今年の6月の株主総会で対策をご提案させていただきたいと思って検討しております。
いずれにしましてもコンプライアンスをはじめ、いろいろな面でテレビを見る目も厳しくなっております。皆さん方の一層のご批判、またはご指導、ご示唆をいただきまして、これから読売テレビとして頑張っていきたいと思っております。新年度も、きょうはご欠席でございますが、熊谷委員長、また野村様、馬淵様の両副委員長をはじめ、皆さま方のご協力、ご支援をお願いしたいと思いまして、新年度のごあいさつとさせていただきます。(拍 手)

社側
それでは審議に入らせていただきます。本日ご審議していただく番組は、毎週土曜日の朝に放送しております『ウェークアップ!ぷらす』です。この4月から司会が桂文珍さんから弊社の辛坊解説委員に代わりまして新たなスタートを切っております。関西で唯一の全国ネットの報道番組として評価いただいております。番組の責任者であります山内プロデューサーから番組の概要について簡単に説明をさせていただきます。

社側
報道局チーフプロデューサーの山内です。よろしくお願いします。
『ウェークアップ!』、この4月から『ウェークアップ!ぷらす』になりましたが、お手元の資料にもございますように長寿番組でして、湾岸戦争の直前の91年1月に第1回放送をスタートしております。放送開始から14年になりますが、番組は、いろんな形に姿を変えて今に至っております。
制作局が制作していたときもありますし、「ワイドショー」というふうにタイトルが銘打たれていた時期もあります。例えば1回目の放送には、キャスターとして高島忠夫さんが登場されてますし、林家こぶ平さんなんかもリポーターとして出ていただいています。
途中、替え歌のコーナーを設けたり、いろんな取り組みをして、まさに時代に合わせて、視聴者ニーズに応える形で今まで成長してきたと思っております。
長寿番組として支持されていくには、やはり時代にマッチしたものを打ち出す必要があるのではないかと私自身も考えております。今後、どういう方向性で番組づくりを目指すのか、どういう形で、より進化していくのかということを考えていたときに、ちょうど去年の今頃、イラクや北朝鮮と、本当に世の中が、日本が動くような大きな出来事が次々と起こっておりました。やはり世の中が報道モード、ニュース的なモードに入っていったように当時感じておりました。
我々の制作体制は今、オール報道局として取り組める体制になっております。また、日本テレビをはじめとした系列の強力なネットワーク体制を享受できるような番組づくりができますので、やはりここは報道で真っ向勝負しようということで、きちっとニュースと向き合っていこうと、より、これまで以上に報道的なアプローチを強化していきたいと、この1年間、取り組んでまいりました。
番組コンセプトは、いろいろ考えましたけれども、伝えるべきものは、しっかり正しく伝えていこうと、放送しようということであります。1週間に起きたこと、最近起きたトピックスなど硬軟取り混ぜて紹介いたします。デイリーのニュースを追う最近のテレビ報道は、すごく断片的で表層的な現象面だけ取り上げて、本質的な部分、深いものが見えてこないというご批判もあります。それを1週間、もしくはもう少し長いスパンでとらえ、そのニュースがどういう意味を持っているのか、深い分析、検証を加えることによって、普段のニュースで見えてこないものを何とかしてあぶり出したいという気持ちで取り組んでまいりました。
もう一つこの番組が、今や東京情報一極集中といわれる中で、唯一の全国ネット報道番組ということであります。我々は、それを使命として日々番組制作に取り組んでおります。東京から離れているからこそ見えてくるもの、そういうものを関西だから打ち出したい、そういったこだわりを大事にしていきたいと常々考えております。
今回、ご覧いただく郵政民営化の問題にしても、どうも関西から見ておりますと、東京の報道は当事者的な立場に立って、永田町という中での権力闘争、紛争を何かプロレスのショーのように攻防戦だけをとらえていて、本質の部分、その後ろにある大義ですとか、狙い、そういうものが、もう一つ伝えられ切っていなかったような気がしておりました。そこであえてもう一度、原点に戻って郵政民営化の狙いは何だったのかというものをじっくりと議論してみたいという思いから、ご覧いただく放送ではコメンテーターとして猪瀬直樹さんに出演いただき、キー局とは違った目線で取り上げてみました。
さらに4月からは、辛坊治郎解説委員がMC、司会者席に座りましたので、これまで以上に、私が申し上げてきました目線、切り口、こだわりを大事にして、おかしいものはおかしいというふうに言える番組づくりを目指していきたいと思っています。ただ「おかしい」といって無責任に議論をするだけではなく、じゃあどうすればそれを変えられるのか、ニュース番組でそれをどこまで世の中の人に訴えられるのか分かりませんが、それでも愚直に訴え続けていきたいというふうに思っております。
タイトル名につきましても、辛坊とともに、また新しい伝統を築いていきたい。これまで支持され愛されている部分はそのまま受け継ぎ、さらに、これまで以上のものを目指したいという思いから「ぷらす」という言葉をつけ加えさせていただきまして、再スタートを切っております。今後とも、よろしくお願い申し上げます。

社側
それでは早速VTRのほうを見ていただきたいと思います。
先ほど申しましたが、本日ご覧いただくのは4月16日に放送しましたもので、関西で8.9%、関東で12%の視聴率を獲得しております。視聴率的には東高西低というのが、この番組の特徴でもあります。

<VTR視聴>

社側
ご視聴ありがとうございました。それでは野村副委員長、お願いいたします。

副委員長
きょうは熊谷先生がご欠席でございますので、ご指名により進めさせていただきます。ご覧いただきましたダイジェストのVTR、それから先に頂戴しております全編を思い出してご意見いただきたいと思います。

委員
私はニュース番組がもともと好きで、この番組もいい番組だと思います。いつもよりも甘い点数をつけることになるかもしれないが、長く続いているということはとても結構なことだと思います。
先ほどの話で、「ワイドショー的な扱いであった時期もある」ということでしたが、それでちょっと納得できたんですが、その名残が、まだ少しあるんですね。
ニュースをいろいろ考える番組に、殊更に騒々しく司会しなくてもいいのになという気がいたしました。もっと冷静に、お互いに話し合うような番組にしていただければ、もっといいのではないかなと思います。特に司会者だけがはしゃいでいるような感じをどうしても受けましたし、それから時間が迫っているわけでもないのに人の話を途中で司会者が取ってしまうのは失礼です。ああいうことのないような静かな番組にしていただくと、もっとよかったのではないかなという気がいたしました。
内容そのものは、いろいろ人によって考えがあろうかとは思いますが、ただ、いただいた資料のコンセプトによると「表に出てこない深いところを追求する」ということが書いてありました。それであれば、やはり中国の問題にしましても「簡単に思想統一のできる危ない国である」ということを、もう少し鮮明に、視聴者に分かるようにしていただいてもよかったのではないかと思いました。殊に、あんなデモだってやめようと思えば、すぐにあの国は指示を出してやめられるわけです。そして見事にやめてしまった。「やめられる国」ということを、やはり視聴者に示したほうがよかったんではないかな。
それから郵貯の問題は非常によく示されていて、なぜ郵政事業を民営化しなければならないかというのが、かなり分かるように説明されていたと思います。ですが財投について、「財投」という言葉は、あんまり出てきませんでしたが第2の国家予算といわれるぐらいの大きなおカネです。これが国民の審判を受けることなくお役人だけで勝手に決めて好きなようにばらまいているという現実。ここをもう少しはっきり示していただければよかったなという気がいたしました。

委員
いろんなニュースが、とても要領よく整理してあって、郵貯の問題でも委員がおっしゃったように、何か基本的な部分をやっと教えていただいたなという感じがしました。とてもよかったと思うんですが、私も仕事柄、ちょっと歴史にかかわっているもので、どうしても今の中国、韓国の日本に対する報道というのが気になります。辛坊さんが最後のほうでおっしゃっていましたが、「だからどうしたらいいんだ」という部分が、やっぱりいろんな報道を見ていても、そこまで踏み込んでいるケースというのはあんまりないんじゃないかなと思います。出てくる意見も、政府とか、企業のレベルであって、見ている一般人にとっては、どうすることもできないレベルの世界ですよね。そうすると、ああいう抗日運動のところばかり、あれも事実としてしっかり知っておかなければいけませんが、そればかりがクローズアップされてしまう。見ている人たちは、「中国って何か厄介やな」「韓国って何か近寄らんとこう」みたいに思っちゃう人がすごく増えるんじゃないかというのが逆にちょっと心配になったりするんです。
中国は確かに、私たちが発掘調査をしていても「何て国なんだろう」とちょっと思うところもあったりなんかして、そういう部分を伝えていくことは必要なんですが、それがすべてではないという部分もあるんじゃないかなと思うんです。
韓国の人たちは、私の付き合っている範囲でいえば「あれは国同士の話」「俺とお前は友達だ」というのをきちんと割り切って付き合ってくれるんで、実際に韓国に行ってみたら多分、全然反応が違うと思うんですね。日本人が「うわ、怖いな」と思っている印象とは全然違う、すごく友好的に歓迎してくれるという部分があるんです。でも日本人はそれをチャンポンにしてしまうから「どうしたらいいんだろう、どうしたらいいんだろう」と、おどおどしちゃう。そういう部分が余計何か煽られて、結局、ますます何か関係が難しくなっていくんじゃないのかなという気がするんです。
最後のほうに横浜の市長さんが、「冷静に対応すべき」と、ちょっと一般人の心構えみたいなことをおっしゃっていましたが、関西のこだわりということでいえば、東京よりも、やっぱり関西のほうが今回の中国や韓国の問題を身近に感じている人が多いんじゃないかと思います。国レベルじゃなくて民間レベルでしっかり友好のラインというのを育てていこうみたいな、何かそういう投げかけがなかったら、「どうしたらいいんだろう」という思いばかりが残っちゃいそうな気がしました。特に、この番組だけに限ることじゃないですが、表に出てこないことにこだわるとか、伝えるべきことをしっかり伝えるというところを大切にして、いろんな人たちの、いろんな局面を伝えていただけたらいいなと思いました。

委員
この番組は、日々のニュースの背景とかを深く踏み込んで、しかも、在阪で唯一の全国ネットということで、在阪の目線で分析する。この番組コンセプト自体は絶対守っていただきたい、何が何でも維持すべきところだと思います。
ただ、いろんな報道番組とかを見ていて、ふと思うんですが、見るほうとしては番組を見たときに、それなりの納得感を得るために見ているだけなんでしょうか。それならば、時間の限りのある番組の中で、それなりの納得感を与えるものを出していくことになるんでしょうが、みんなが何となく納得するので、「まあまあそんなもんか」というところで番組のほうも思考が止まってしまったと思うときが、たまにあります。世の中の問題というのは、簡単に20分や30分ぐらいで納得できるような問題では、正直ないと思うんです。いろんな視点があって、本質がある。番組の中で、そういう視点をある意味、挑戦になるのかもわかりませんが打ち出していただいたらいいのではないか。納得感を出すというのではなく、もっと見ているほうが「これはもっと勉強しよう」とか「もっと自分なりに突っ込んで考えるべき問題だ」と思わせるような問題提起をしてもいいのではないかと思いました。つまり「そこから先は視聴者が考えることですよ」といったつくり方もあっていいのかなというのが、私の見た印象です。

委員
中国のデモの様子が番組でとりあげられていましたが、私はちょうどそのころ中国に行っておりました。帰ってきてから、テレビを見ると、えらいこちらで大きく報道されている。向こうのテレビでは、あんまり報道はなかったんです。帰ってきて、「えらいことになっていたんだわ」という感じで、それが非常に引っかかっていました。中国のこの問題に関しては、日本人が「靖国神社、また出てきたわ」といって何か自虐的な感じがするんですが、向こうの人は実際そんな反日感情なんか持っていないんですよね。上海でも北京でも。帰ってきて「中国は大丈夫でしたか」とみんなに言われたんですが、私どもの交流はほとんどスポーツの関係ですから、どこへ行っても皆さん友達で「日本と今何かやっているね」「デモがあるね」「大使館がやられたね」なんて聞きましても、あれは勝手に国がやっているから、もうすぐに収まると、向こうの人は、そう言っていました。それがすごく温度差を感じて、この中国問題が出てくるたびに、私ため息が出るんです。こんな気持ちは私一人かしらと思って、そういう感覚で見させていただきました。
それにしても『ウェークアップ』では、一ヶ月前のライブドアの騒動も出ていましたが、この一ヶ月前というのが、えらく古い感じがしました。中国の大騒ぎも一ヶ月前、何かひと昔前のような感じがすごくしましたね。
今回のテープは4月16日放送分なので、これを見ていたら、「こんなこともあったんだ。こんなことも言っていたんだ」と、何かすごく古い感じで、今はJR西日本ばっかりやっていますから、もうほとんど忘れてしまっている。人間の脳みそって案外単純だなと思います。
私自身は普通の素人ですから、そんなにじっくりとは見ないんですが、「なるほど、そういう見方もあるのか」とか、今回のも結構、私自身はいろんなことを、いろんな観点から見せていただいて、気軽にいい知識をいただいたと思っています。
ですから、全体で2時間近く、1週間のニュースを本当に丁寧な分析や解説を交えて報道してくれているということは、私はすごくいいことだし、これからも続けていってほしいなと思います。

委員
番組のコンセプトにある「在阪局唯一の全国ネット番組」という文字は非常に力強く関西復権の起爆剤になってくれたらと思います。昔はもっと全国ネットが多かったと思うんですが、今回、これがとても嬉しかったです。
何か関西で事件が起こると東京の方からリポーターなり、司会者がやってきます。これはちょっと違うな、関西の肌と合わないなというようなコメントや伝え方をその人達がしているとイライラしていたんです。やはり、大阪あるいは関西のことをよく知っている人が、全国に向かっていろんな情報を伝達していってくれるという意味では、この番組のコンセプトはとてもいいことだと思います。
それから、放送の中でも、あまり標準語にこだわらないで、もう少し大阪の言葉を入れてもいいんじゃないかと思います。そうすることで関西から全国ネットするということを、もう少し活かしていただけたらいいかなと思いました。
内容について言いますと、いろんなことを教えていただけてありがたいんですが、例えば、郵貯の問題にしても、いろんなものを教えていただいて見ている国民というか庶民が、非常に腹立てる。私も腹を立てますけど、じゃ、その怒りをどこへ持っていったらいいかまでは説明がありません。「はい、怒ってくださいよ」いうだけで、それでパッと番組が終わってしまうと不満が残ります。この辺をもう少し何かの形で答えを出していただけたらいいのかなと思いました。
反日感情の教育もそうですが、私も昨年、中国へ行ったときに、あまりにも貧富の差が激しく、又ハードの部分はすごく高いビルを建ててきれいでも、ソフトの面は全然進んでないんだと感じました。今回の騒動のときにインターネットで友人にメールを送ったら「全然知らない。テレビも何もやってない」「何で、そんなに騒いでいるの」と言われて、そういうものが全部日本の過剰報道ということではないと思いますけれども、そういうやり取りがありました。
日本の放送で「ゴールデンウイークがあって、騒動のため中国へ行く観光客が少なくなりました」といったニュースは、単に現象を伝えているだけで、じゃ我々は何をしたらいいのかというようなものを示してくれません。そういったことをちょっと何かの形で教えてもらうとか、こういうことをしたらいいんじゃないかとかを番組で教えていただいたらありがたいと思いました。
例えば、ODAにしても大体どれぐらいの金額が、今まで援助されているのかということは、数字としてはちょっと見えなかったので、その辺を見せていただいた上で、戦後60年経つ日本が今、いいのか悪いのか、メディアの使命として示していただけたらいいんじゃないかと思いました。

委員
私も、この番組は以前からわりと好きで時間があると、よく見せていただいております。今回のビデオを見せていただきまして、例えば、郵政の民営化の問題一つ見ても、さまざまな番組で今までいろんな取り上げられ方をしています。さまざまな立場の方が、それぞれの思いで議論し合ったりしていますが、いくつ見ても、なかなか本当の姿が私ども国民に見えてこないというのが実感です。私たち国民からすれば唯一知りたいのは、本当のことは何かということで、それが何のテーマでも同じだと思います。そこが今、何かにつけて見えにくい時代になっていると思いますが、そういう意味で、この番組は、とらえ方として郵政問題では国民の「見えない負担」というところで分かりやすく説明していただいており、非常によかったと思います。
委員がさっきおっしゃっていましたが、こういう問題は20分、30分で、なかなか議論すること自体が難しい。しゃべっている方も、ちょっと消化不良みたいな感じで、なかなか本当の姿が見えてこないということがあります。番組では、いろんなテーマを取り上げておられますが、ぜひ、限られた時間の中で、本当のことは何かということを、国民に分かりやすく、番組を見た人達が「よく考えよう」とか、「もっと勉強しよう」とか思わせられるような番組に、これからもしていただけたらと思います。
ただ私の場合、忙しくて1週間なかなかニュースを詳しく見られない時など、この番組を見ていますと、いろいろなことが分かって、すごくいい番組だなと思って、いつも楽しみに見させていただいております。

委員
最初に、この報道番組は1週間の出来事を追いかけて、一つの方向性を見いだしていこうというコンセプトだったんで、そういう意味では面白い番組だと思います。ただ、その方向性を見いだすときに、何かその中で一つの潜在的な問題意識を持って編成するのか。あるいは、とりあえず出来事を出来るだけ現象面を並べることによって、「あとは視聴者の方が考えなさいよ」というアプローチでいかれるのかいずれなのか。問題意識を持つのであれば、出来るだけ突っ込んだ分析がいるだろうと思います。それから「あとは考えなさいよ」ということになれば、面白くとか、分かりやすくという点に重点を置かれることになるんだろうと思います。その辺が、どちらをこれから狙っていかれるのか、新しい『ウェークアップ!ぷらす』の方向性として検討していかれたらいかがかと思います。
今回、取り上げられたいくつかの話題の方向性を言うとすれば、潜在的には民主主義国家としての国家戦略なり、あるいは、市民尊重という基本精神が欠けているんではないかなと感じたんですが、そうであれば、そういったアプローチが少し入ってきてもいいんじゃないかなと思いました。
例えば、郵政の民営化についても、国鉄の場合は大阪-京都間が2倍の料金で、しかも赤字だと、とんでもない非効率だということで、変えねばいかんという意識に、みんなあったんです。しかし郵政の場合は、番組の中でもおっしゃっていますが、国民の中に必ずしも反発がない。なぜ民営化やらなければいかんかという基本理念がよく分からないんで、国会の先生方も右往左往している。国民の方も、まあ、民営化して効率化するに越したことはないという意識を持っておられると思うんですが、それをただ単に簡保の無駄があるとか、あるいは、中央郵便局の庁舎が低層のままで高度利用されてないという現象面だけをとらえて突っ込んでいって本当にいいのかどうか。そもそも、この問題というのは郵貯の出口問題から出てきたと思うんです。600兆円とも400兆円とも言われるカネを無駄な財投に入れて、それが無駄遣いになって、どんどん出てきている。この郵貯の出口問題から入ってきた問題が今、郵便局の窓口論的な話になってしまっている。郵便局の窓口というのは、要するに飛脚が非常に暴利をむさぼってうまくいかないという市場の失敗から、じゃ何とか官営化しようということで地方の名士に出来るだけ無料でサービスしてもらって、国にとっての血液であり血管である郵便事業として何とか成り立たして今日までやってきたという歴史があるわけです。だから郵便局の職員の人は、ものすごくよく働く。ほとんど無料奉仕に近い形でコミュニティー・プラザとしての機能をいろいろ果たしておられるわけで、それはそれなりにいいところもあると思うんです。世論調査してみると、ガス、電気、水道あるいは市役所だとか、いわゆる公共サービスの中で一番親切なのはどこだといったら郵便局なんです。生い立ちから見て、そういった使命感を持って公共のために尽くすんだということでやっておられるから地域の人たちの信頼は厚い。そういった機能まで本当に民営化しちゃっていいのかということです。
民営化すれば当然、儲からんことはやらないということになる。田中直毅さんが、この前来られて、「山形県庁が全部郵便を民間に委託したんだ」と、「そんなことがあるから郵便局は駄目だ」と言うけど、それは違うんです。大口だとか、都会というのは、民間に任した方が安くていいんですが、そうじゃなくてユニバーサル・サービスで全国一律にやろうということのために郵便事業というのは成り立っている。郵貯の問題と郵便局との問題と、ごっちゃにしちゃっていいのかどうかということの突っ込みがいるんだと思います。
要するに民営化したら何がよくなるのか。中央郵便局が高層ビル化できるというけど、これは今、公社でやろうとしています。大阪の中央郵便局と東京の中央郵便局も建て替えてやり直そうと。それは民営化する前にやらんと土地を国に取られちゃいますから、公社のうちにやっちゃおうと、こういうことで今進めているんで、そういう現象面は、いろいろ対応策があると思うんです。
それと財投の方も年々40兆円くらいあったのが、今、18兆円くらいになっちゃっているんです。というのは利子が高いから誰も借りてくれない。いろいろな公社的なところも、みんな公社債を出して財投のカネは借りないということです。黙っていても10年も経たないうちに郵貯は崩壊しちゃうと思うんですけどね。
そういった中でなぜ民営化しなければならないのか。民営化の方が効率がいいんだということですが、事業が市場で失敗することだってあります。ただ単に猪瀬さんや田中直毅さんが言うように、民営化したらいいんだという固定概念で割り切らずに、本当にいいことなのかどうかといった突っ込み方もあったのかなと思いました。
反日問題についていいますと、歴史認識というのは、みんな勝手に解釈してますから、一致するはずがないんですね。例えば、日露戦争にしても、我々は白色人種から黄色人種を解放した歴史的な事件であると思うけども、中国にしてみると侵略戦争の始まりだということになる。でも、お互い引っ越しできない隣同士なんだから、その間で何かプラグマチズムでうまくやっていける方法があるんじゃないのかということです。要するに中曽根さんは靖国神社へ行く時に「俺は行くぞ」と断りに行ったんですね。だから向こうは何も文句は言わなかった。しかし小泉さんは何も言わずに勝手に行っちゃっている。そもそも靖国神社問題というのは、向こうの理屈としてはA級戦犯の被害で中国国民は苦しんだ、日本の国民もA級戦犯の犠牲者だ。だから、講和するにあたって日本の国民には賠償を請求しない。基本的な認識としては、そういうことなんで、A級戦犯の問題は単なる国内問題だと言い切るのは、ちょっと行き過ぎかなという気がするんです。まあ、それはそれとして、いろいろ靖国神社という宗教法人に対して、国が国家権力を及ぼすわけにはいかんので、それならば、ちゃんと向こうに断りに行けばいいんです。そしたら向こうも、まあまあメンツが立つんで、そういった意味で政治的に、いろいろプラグマチズム的な何か突っ込みがいるなと思うんですが、その辺を、ただ単に日本の方が、「反日運動がウワッと出ているよ」という現象面だけをとらえていてはいけないと思うんです。
確かに向こうは教科書は大したこと書いてないんですが、教師が反日教育をやるという指導要領に基づいてやってますから、ひどいことになっている。たしかにその辺はあるんですが、何かうまくプラグマチズムで、仲良くなる方法はないかと思うんですけどね。その辺のことを少しにおわすような突っ込み方が、番組にほしかったと思います。
大阪市の問題も、市が無駄遣いしているのはけしからんということですが、もともと交付金制度で一生懸命効率化すればするほど交付金が減ってしまうという実態がある。そんな中でうまく効率化やっていくというのは非常に難しいことだと思います。大阪市の場合は、横浜市長も言っていたように「ワアッ」と騒がれると、みんな世論が市の問題についても関心を持つという意味では大いに悪いところをつついてもらっていく最後の改革のチャンスだと思いますし、本当は、「あと3年も経ったら、赤字団体になって破産するよ」と、「だから職員も真剣にならないかんよ」というところから出発すればいいと思うんですが。
いずれにしましても、1週間の編集をされるときに、一番底流にある基本的な問題意識にしっかりスポットを当てていただくと、より面白い番組になってくるだろうと思います。ある程度、現象面をとらえないと見る人は見てくれませんから、視聴率を稼ぐ意味では現象面をとらえないといかんと思いますが、そのベースとしては何か、問題意識を持って今週はやっていこうと議論しあいながらやっていただいたら、より全国的ないい番組になっていくんじゃないかと思います。

副委員長
私も意見と、ちょっと質問をさせていただきたいと思います。大変話題のニュースがコンパクトに詰められていて、この土曜日、この1時間を見れば、かなり一定の見解も含めて理解ができるという点で非常に便利な、特に私どもサラリーマンには便利な番組だと思います。
見る側の理屈ですけども、これまでいろいろご意見があったように、要するに一定の見解を示して、視聴者に納得感を得るところまでの説明として提供されるのか、あるいは「こういうことがありました」という事実だけを情報として提供されるのかと、その取捨選択とバランスの問題だと思うんです。
そこで質問なんですが、一つは、テーマを取捨選択される。そして、解説を求めるためにどなたに登場していただけるか、そういうことを選択される一つのプロセスは、どうなっているんでしょうか。それが質問の一つです。
今一つは、報道番組が、だんだんワイドショー化していくといわれておりますけど、そのワイドショー化していくときに、本当に先ほどおっしゃった、例えば、東京では見えないもの、あるいは、伝えるべき大義という、そういうものが不当に誇張されたり、あるいは、場合によったら歪められたり、薄められてしまったり、そういうおそれがあるんじゃないかと思うんですが、制作されるお立場として、時間のこともありますので簡単にお答えいただければありがたいと思います。

社側
一つ目の質問ですが、おっしゃるとおり1週間を見通して、何が見えたかということを伝えるのが番組のコンセプトですので、金曜日ギリギリまでしっかり状況を見据えながら情報もテーマも含めてしっかり吟味しながら取り上げたいと考えています。JRの事故をはじめ情報が日々更新される中で、一番いい形にまとめて出したいということで、基本的な流れとしては水曜日に大体のテーマを打ち出していって、大きなものを二つか三つピックアップし、それにどう肉付けしていくか、先ほどから出ています、その切り口、我々の目線はどこに置くべきなのかということを議論しながら、切り口が決まった場合のゲストの選定、基本的に一人か二人は、準レギュラー的なゲスト、あとテーマに応じたゲストを、どう選んでいくのかを水曜、木曜あたりに行います。もちろん先方の都合もありますし、テーマとして取り上げたときにバランスをとるのか、それとも、もう少し両論に振った方を二人選んで討論を膨らませていく方向にするのか、いろんなアプローチがあるかと思います。その方向性、それからネタの枠的にどれぐらいの分量を取るのかということを含めまして、ゲスト選定なんかも決めて、最終的にフィックスしていくのは、ほぼ木曜日の午後、金曜日の午前中というような段階です。もし金曜日に何か起きた場合は、例えば、金曜日の夜からでもゲストを探して、間に合わない場合は日本テレビにお越しいただくというようなこともあり、柔軟かつ臨機応変に対応していく形で制作に取り組んでおります。
ニュースのワイドショー化といわれる中での我々のスタンスについては辛坊解説委員にお願いします。

社側
本当に、日々それは悩むことばかりでありまして、どうしたらいいんだろうというところなんですが、基本的には私も始めて一月なんで、とにかく恐る恐るといいますか、スタッフがつくってくれたレールの上でやっております。
スタジオでVTRを基本的にはつなぐということ以上のことは私はやっておりませんので、あまりその辺に関しては詳しくお話しできる立場ではないと思うんですが、ただ、一月やって、見ていただいたらお分かりだと思いますが、いわゆるワイドショーと呼ばれる最近の報道番組で、特に夜のゴールデンタイムの10時から他局でやっておりますが、そういう番組とは明らかに一線を画したものになっていると思っております。
正直に言って「こんなに上品なことをやっていて数字が取れるのか」というくらい、実はクォリティーが非常に「高いな」と、身内を褒めるのも何なんですが、基本的には最近、いわゆる放送法の「政治的に公平であること」、「意見の対立している事柄については出来るだけ多角的に論点を明らかにすること」、「報道は事実を曲げないですること」というのを明らかに逸脱したような番組が見受けられる中で、この番組だけは基本的に多様な論点、多様な視点を見てくださる方に提供したいというコンセプトでやっております。そういう意味では今のところ、私が一月やった印象で言いますと、いわゆる悪い意味でのワイドショー化することなく、ある程度の水準を保って放送をさせていただいているのかなという印象は持っております。

社側
もう1点申し上げさせていただきますと、ご意見ございましたとおり納得感のある番組づくりを目指すのか、それとも、もっと踏み込んだ番組として存在感を出していくのかという議論もございますけれども、辛坊解説委員が司会になりまして、寄せられるメールとか、ご意見もすごく変わってきております。キャスターですからバランスをとった中立的な立場で進めるべきだということと、辛坊さんらしい過激で厳しい、でも、ときに優しいものを期待される視聴者の方と両方がいらっしゃいますが、それは今までよりも非常に熱いメッセージとして送られてきておりますので、その辺を踏まえて本当に、どういうバランスが『ウェークアップ!ぷらす』土曜日の朝8時に求められている番組なのかということを、みんなで考えながら進化してまいりたいと思っております。

副委員長
ありがとうございました。ちょっと時間もオーバーしておるようですので、この番組審議に関しては以上で終わりたいと思います。

社側
いただいたご意見は、これからの番組作りの参考にさせていただきます。時間の方がちょっと押しておりますので、4月の視聴者からのご意見、苦情につきましては、お手元の資料で報告に代えさせていただきます。
きょうの審議は以上でございます。ありがとうございました。お手元に、この1年間のスケジュール表を添付させていただいておりますが、次回は6月10日金曜日、午前11時から読売テレビで通常どおり開催させていただきます。よろしくお願いいたします。本日はありがとうございました。

終わり
  • 平成17年度読売テレビ番組審議会委員
  • 委員長    熊谷信昭   兵庫県立大学名誉学長、大阪大学名誉教授
  • 副委員長    馬淵かの子   兵庫県水泳連盟   顧問   元オリンピック日本代表
  • 副委員長    川島康生   国立循環器病研究センター   名誉総長
  • 委員    秋山喜久   関西電力株式会社  顧問
  • 委員    金剛育子   能楽「金剛流」宗家夫人
  • 委員    林  千代   脚本家
  • 委員    阪口祐康   弁護士
  • 委員    佐古和枝   関西外国語大学教授
  • 委員    北前雅人   大阪ガス株式会社   代表取締役副社長執行役員
  • 委員    谷  高志   読売新聞大阪本社   専務取締役編集担当