横綱の暴行 元日馬富士に罰金50万円 貴乃花親方は理事解任

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 大相撲で、品格を求められる横綱が暴力事件を起こしました。元横綱日馬富士関(伊勢ヶ浜部屋)が巡業中、同じモンゴル出身の幕内貴ノ岩関(貴乃花部屋)を酒席で殴り、頭にけがをさせたことが判明。引退に追い込まれた元横綱は傷害罪で略式起訴され、鳥取簡裁から罰金50万円の略式命令を下されました。暴行現場に同席した横綱白鵬関(宮城野部屋)や親方衆も日本相撲協会の処分を受けました。今回の経緯を振り返ります。(年齢や肩書きなどは当時) 


元日馬富士、貴ノ岩への傷害罪で略式起訴(12月28日)

 大相撲の元横綱日馬富士関(33)(本名ダワーニャム・ビャンバドルジ)による十両貴ノ岩関(27)(当時、幕内)への暴行問題で、鳥取区検は28日、元横綱を傷害罪で鳥取簡裁に略式起訴した。

「家族や友達以上の存在」嵐・記者会見詳報

 捜査関係者によると、鳥取地検は、元横綱がカラオケのリモコンを使うなどしたことから、暴行を悪質とする一方、責任をとって引退したことなどを考慮。正式裁判ではなく、簡裁に書面審理のみで罰金刑などを言い渡すよう請求する略式起訴が相当と判断したという。手続きは、略式起訴を担当する区検が行った。

臨時理事会に臨む貴乃花親方(右から2人目)(28日午前11時、両国国技館で)=大石健登撮影
臨時理事会に臨む貴乃花親方(右から2人目)(28日午前11時、両国国技館で)=大石健登撮影

貴乃花親方を「理事解任」…評議員会に提案決定

 日本相撲協会は28日、臨時理事会を東京・両国国技館で開き、元横綱日馬富士関の傷害事件を巡る対応に問題があったとして、被害者の十両貴ノ岩関の師匠で巡業部長の貴乃花親方(45)(元横綱)の理事解任を評議員会に提案することを決めた。

「暴行」報告義務怠る 貴乃花理事を評議員会が解任(2018年1月4日)

 日本相撲協会は4日、東京・両国国技館で臨時評議員会を開き、元横綱日馬富士関の傷害事件を巡る一連の対応が理事の忠実義務に反していたなどとして、巡業部長の貴乃花親方の理事解任を全会一致で決議した。貴乃花親方は同日付で「役員待遇委員」の指導普及部副部長となった。相撲協会で理事が解任されたのは初めて。相撲協会の通告後、貴乃花親方からは電話で「わかりました」と連絡があったという。

 秋巡業中の昨年10月に事件が起きた際、貴乃花親方は巡業部長として相撲協会への報告を怠り、危機管理委員会(委員長・高野利雄外部理事=元名古屋高検検事長)の調査協力も再三にわたり拒否した。この日の評議員会には全7人のうち5人の評議員が出席し、表決に加わらなかった池坊保子議長(元文部科学副大臣)を除く4人(力士出身者3人、外部有識者1人)全員が解任案に賛成した。

 記者会見した池坊議長は貴乃花親方について、「協会で3番目の巡業部長という重い地位に就いているのに報告義務を怠った」などと批判した上で、八角理事長からの電話に応答しなかったことなどを挙げ、「礼を持って行動していただきたい」と注文をつけた。

 貴乃花親方は、初場所後の相撲協会理事候補選挙への立候補は認められている。当選した場合、一度解任された貴乃花親方を理事に選任するかどうかについて、池坊議長は「将来的な予測に関して私が述べるのは差し控えたい」と明言を避けた。

元日馬富士に罰金

 大相撲の元横綱日馬富士関による傷害事件で、鳥取簡裁は4日、傷害罪で略式起訴されていた元横綱について、罰金50万円の略式命令を出した。元横綱は罪を認めており、近く納付するとみられる。

【経緯】日馬富士が暴行 貴ノ岩全治2週間 休場届け出(11月14日)

貴ノ岩関
貴ノ岩関

 大相撲の横綱日馬富士関が、同じモンゴル出身の幕内貴ノ岩関に暴行を加えていたことが14日、明らかになった。日馬富士関は同日朝、福岡県太宰府市の伊勢ヶ浜部屋宿舎で報道陣に貴ノ岩関への暴行を認め、「大変迷惑をかけたことを深くおわび申し上げます」などと謝罪した。横綱は福岡国際センターで開催中の九州場所3日目の14日からの休場を日本相撲協会に届け出た。

 関係者の話によると、日馬富士関は秋巡業開催中の10月下旬、鳥取市内の飲食店でモンゴル出身力士同士の酒席の場で貴ノ岩関と口論になり、激高して貴ノ岩関に暴力を振るったという。

 貴ノ岩関は11月2日に貴乃花部屋宿舎のある福岡県田川市の市長を表敬訪問し、九州場所に向けた抱負も述べていたが、12日から始まった九州場所は初日から休場。相撲協会には13日、「脳しんとう、左前頭部裂傷、右外耳道炎、右中頭蓋底骨折、髄液漏の疑いで、全治2週間程度と考えられる」との診断書を提出した。

 秋場所で優勝を飾り、2連覇を目指していた日馬富士関は、ここまで初日から2連敗。14日も朝稽古をこなしていたが、稽古後に師匠の伊勢ヶ浜親方(元横綱旭富士)と話し合い、休場を決断した。貴乃花親方は取材に対し、「診断書に書いてあるとおりです。本人も『体調が悪い』と。(言うことは)これ以上、ありません」とコメントしている。

綱の暴力言語道断 協会、2日に情報

謝罪のため貴乃花部屋を訪れた日馬富士関(左)と伊勢ヶ浜親方(14日午前11時51分、福岡県田川市で)=秋月正樹撮影
謝罪のため貴乃花部屋を訪れた日馬富士関(左)と伊勢ヶ浜親方(14日午前11時51分、福岡県田川市で)=秋月正樹撮影

 伊勢ヶ浜部屋宿舎にはこの日、朝から大勢の報道陣が詰めかけた。日馬富士関は朝稽古を終えた後、報道陣に対応。神妙な表情で「貴ノ岩のけがについて、貴乃花親方、相撲協会、うちの部屋の親方に大変迷惑をかけたことを深くおわび申し上げます」などと、貴ノ岩関への暴行を認めた。

 日本相撲協会の鏡山危機管理部長(元関脇多賀竜)は、今月2日に暴行の事実を聞き、翌3日に貴乃花親方と電話で話をしたという。鏡山危機管理部長は、「警察に(被害届が)出ている以上、警察も黙っていないだろう。(協会内の)危機管理委員会を中心にやっていく」と話した。

 同協会の春日野広報部長(元関脇栃乃和歌)によると、伊勢ヶ浜親方と貴乃花親方は14日午後、福岡国際センター(福岡市博多区)で対面。伊勢ヶ浜親方は貴乃花親方に深々と頭を下げたという。日馬富士関は午後4時10分頃、報道陣の質問に無言のまま、宿舎に戻った。貴乃花親方は午後6時前、「何もありません。答えられないので、ここですみません」とだけ話した。

死亡事件、横綱引退…不祥事続出

 相撲界では2007年6月、時津風部屋所属の序ノ口力士がビール瓶で殴られるなどの暴行を受け、外傷性ショックの疑いで死亡した事件が、「けいこか暴行か」で、社会的にも大きな注目を浴びた。愛知県警は08年2月に傷害致死容疑で同部屋の親方(元小結・双津竜)と兄弟子3人を逮捕した。

 また10年1月の初場所中に横綱朝青龍(高砂部屋)が、都内の酒席でトラブルとなり暴力を振るったとして写真週刊誌が報道。朝青龍は同年2月に日本相撲協会の事情聴取を受け、騒動の責任を取る形で引退した。

 15年9月には、横綱白鵬が所属する宮城野部屋付きの熊ヶ谷親方(元十両金親)が個人的に雇ったマネジャー男性を金属バットでたたくなどしてけがを負わせた疑いで警視庁に逮捕された。同親方は同年10月に相撲協会から解雇された。

 暴力以外の不祥事も相次いだ。10年には、大勢の力士や親方が野球賭博にかかわっていたことが発覚。暴力団との関係も問題となった。その後、力士が八百長に関与していた問題も浮上。11年春場所が中止となり、多くの力士や親方が引退したり、解雇されたりした。

白鵬・鶴竜も同席 日馬富士が暴行の宴会(11月15日)

 大相撲の横綱日馬富士関が幕内貴ノ岩関へ暴行を加えた問題で、同じモンゴル出身の横綱白鵬関(32)が15日、騒動が起きた鳥取市内での酒席の場に同席していたことを認めた。

「ビール瓶は使ってない」同席の白鵬証言(11月16日)

 日馬富士関の暴行問題で、騒動の起きた鳥取市内での酒席の場に同席していた横綱白鵬関が16日、現場の状況について、「日馬富士は(殴った際に)ビール瓶は使っていない」などと証言した。

日馬富士、暴行認める 鳥取県警、傷害容疑で任意聴取(11月17日)

 大相撲の横綱日馬富士関が10月、鳥取市内での酒席で幕内貴ノ岩関に暴行した問題で、鳥取県警は17日、東京都墨田区の両国国技館で、九州場所を休場中の日馬富士関から傷害容疑で任意の事情聴取を行った。日馬富士関は暴行を加えたことを認めたという。

病院「相撲支障ない」 貴ノ岩ケガで認識

日馬富士関を乗せた車を報道陣が囲んだ(11月17日、両国国技館で)
日馬富士関を乗せた車を報道陣が囲んだ(11月17日、両国国技館で)

 一方、頭部骨折などの重傷を負ったとされた貴ノ岩関について、診断した病院が「相撲を取ることに支障がない」との認識を示していたことも日本相撲協会危機管理委員会の調査で分かった。

 危機管理委が11月9日付の診断書を作成した福岡市内の病院に聞き取り調査をしたところ、同病院は、頭部骨折についてはCT(コンピューター断層撮影装置)検査の結果、「もともと存在している縫合線である可能性が高く、過去の衝撃等が原因で生じた骨折線の可能性もあるので、今回の傷害との因果関係も分からない」と判断。「髄液漏れの疑い」との診断結果についても、「実際に髄液が漏れたという事実はない」と断定し、「受傷からすでに相当日数が経過していることを考えれば、髄液漏れが今後実際に生じる可能性は極めて稀(まれ)」とした。

 病院側の説明によると、貴ノ岩関は九州場所が始まる前の11月9日の時点で状態が安定。「相撲を取ることを含め仕事に支障がない」と判断されたにもかかわらず、休場したことになる。

 師匠の貴乃花親方は、14日の問題発覚後の相撲協会の聴取に対し、「ビール瓶で殴られたため、貴ノ岩の頭が割れた」と話していたといい、報道陣の取材に対しては「診断書に書いてある通りです。『体調が悪い』と。(言うことは)これ以上ありません」とコメントし、以降は取材に応じていない。

照ノ富士も数回殴られる(11月19日)

照ノ富士関(2017年5月、田中成浩撮影)
照ノ富士関(2017年5月、田中成浩撮影)

 日馬富士関が貴ノ岩関に暴行を加えた際、制止しようとした関脇照ノ富士関(26)(伊勢ヶ浜部屋)も殴っていたことが、他の同席者への取材でわかった。鳥取県警も経緯を把握しており、詳しい事情を調べている。

 同席者らによると、日馬富士関が貴ノ岩関を殴打し始めた際、2人の間に入った照ノ富士関も数回殴られたという。貴ノ岩関は負傷したが、照ノ富士関に目立ったけがはなかったという。

日馬富士「リモコンでも殴った」…平手は十数発(11月20日)

 大相撲の横綱日馬富士関が、鳥取市内で幕内貴ノ岩関に暴行した問題で、日馬富士関が鳥取県警の任意聴取に対し、「平手で十数発、殴った。カラオケのリモコンでも殴った」と話したことが、捜査関係者への取材でわかった。

貴乃花親方 協力拒否 協会要請に(11月22日)

場所入りする貴乃花親方(2017年11月22日、福岡国際センターで)=久保敏郎撮影
場所入りする貴乃花親方(2017年11月22日、福岡国際センターで)=久保敏郎撮影

 日馬富士関の暴行問題で、日本相撲協会の貴ノ岩関に対する聞き取り調査の要請を22日、師匠の貴乃花親方が拒否した。相撲協会が明らかにした。

 八角理事長(元横綱北勝海)が同日、貴乃花親方を呼んで要請したが、関係者によると、貴乃花親方は「貴ノ岩の体調がよくないのでお受けできない。警察の捜査に任せたい」と繰り返したという。

八角理事長と白鵬、ファンに謝罪(11月26日)

協会あいさつで頭を下げる八角理事長(中央)、横綱白鵬関(右から2人目)ら(26日、福岡市の福岡国際センターで)=永井哲朗撮影
協会あいさつで頭を下げる八角理事長(中央)、横綱白鵬関(右から2人目)ら(26日、福岡市の福岡国際センターで)=永井哲朗撮影

 横綱日馬富士関の暴行問題で揺れた大相撲九州場所は26日、福岡国際センターで千秋楽を迎え、日本相撲協会の八角理事長と、前日に40度目の優勝を決めていた横綱白鵬関が、それぞれ館内のファンに謝罪した。

 八角理事長は恒例の協会あいさつで、「皆様に多大なるご心配と、ご迷惑をおかけしたことを心よりおわびいたします」と声を震わせ、「一日も早い解決をするよう努力してまいります」と述べた。

 白鵬関も土俵下で行われた優勝インタビューの冒頭、自らこの問題に触れ、「場所中に水を差すようなことになってしまったことを全国の相撲ファンに力士代表としておわびしたい」と語った。「この土俵の横で誓います。場所後に真実を話して、うみを出し切る」との思いも明かした。

 白鵬関はインタビューで「日馬富士関と貴ノ岩関を再び、この土俵にあげたい」との願望も口にしたが、八角理事長は「(調査を担当している)危機管理委員会に任せている」と話すにとどめた。

日馬富士に横審「厳しい処分必要」…決議見送り(11月27日)

横綱審議委員会後、記者会見する北村委員長(27日午後、両国国技館で)=三浦邦彦撮影
横綱審議委員会後、記者会見する北村委員長(27日午後、両国国技館で)=三浦邦彦撮影

 日本相撲協会の諮問機関である横綱審議委員会(横審、北村正任委員長)は27日、東京・両国国技館で定例会合を開き、横綱日馬富士関が鳥取市内で幕内貴ノ岩関に暴行した問題を協議した。

 記者会見した北村委員長は、「暴力があったのは、ほぼ間違いない」とした上で、横審の総意として「厳しい処分が必要」との見解を示したが、警察の捜査や、相撲協会の調査が完了していないことを理由に、引退勧告などの決議は見送った。横審の内規では、横綱としての体面を汚すような行動があった場合、「出席委員の3分の2以上の決議により、激励・注意・引退勧告等をなす」と定められている。

白鵬の万歳「空気はよく分からない」横審が苦言

観衆と万歳する白鵬関(26日、大原一郎撮影)
観衆と万歳する白鵬関(26日、大原一郎撮影)

 27日の横審では、日本相撲協会の調査協力を拒んでいる貴乃花親方と、九州場所千秋楽のインタビューで観客に万歳を求めるなどした横綱白鵬関について、委員から苦言が相次いだ。

 記者会見で、北村委員長が明らかにした。

 貴ノ岩関への聞き取り調査を拒んでいる貴乃花親方に対しては、「親方の姿勢は納得できず、不可解。理事という立場であって、協会全体が進めることについて、ぶち壊すような動きをしているのではないか」などの意見が出たという。

 また北村委員長は、白鵬関の優勝インタビューも問題視。自身が暴力問題の現場にいたことなどを指摘し、「みんなで万歳しましょうという空気はよく分からない」と疑問を投げかけた。

日馬富士、引退を届け出…暴行問題で引責(11月29日)

九州場所2日目、貴景勝に敗れた日馬富士。翌日から休場していた(2017年11月13日、福岡国際センターで)=岩佐譲撮影
九州場所2日目、貴景勝に敗れた日馬富士。翌日から休場していた(2017年11月13日、福岡国際センターで)=岩佐譲撮影

 大相撲の横綱日馬富士関(本名ダワーニャム・ビャンバドルジ、モンゴル出身、伊勢ヶ浜部屋)が29日、日本相撲協会に引退を届け出た。秋巡業中の10月、鳥取市内で同じモンゴル出身の幕内貴ノ岩関に暴行を加えた問題の責任を取った。

 この問題では、鳥取県警が捜査に着手するとともに、日本相撲協会も危機管理委員会で調査を進めている。日馬富士は暴力を振るった事実を認めており、今月27日の横審では「厳しい処分が必要」との見解が示された。

 モンゴルから来日後の2001年初場所、「安馬」のしこ名で初土俵。2008年九州場所後に大関昇進を果たし、しこ名を「日馬富士」に改めた。2012年秋場所後に第70代横綱に昇進。今年秋場所で優勝を飾るなど、幕内優勝は9度を数えた。

 日馬富士関は29日午後、記者会見を開き、引退に踏み切った心境を語った。

 記者会見の一問一答はこちら

平手・リモコンで殴打 相撲協会中間報告(11月30日)


 日本相撲協会は30日、東京・両国国技館で理事会を開き、前日引退した元横綱日馬富士関による幕内貴ノ岩関への暴力問題を調査している危機管理委員会が調査の中間報告を行い、暴行の経緯を公表した。

日本相撲協会の理事会に臨む八角理事長(奥左端)と貴乃花親方(手前)(30日午後1時2分、東京都墨田区で)=小林武仁撮影
日本相撲協会の理事会に臨む八角理事長(奥左端)と貴乃花親方(手前)(30日午後1時2分、東京都墨田区で)=小林武仁撮影

 中間報告要旨や相撲協会の記者会見によると、元横綱は、横綱白鵬関が説教をしているさなかに貴ノ岩関がスマートフォンをいじったことに腹を立て、平手で十数発殴った後、カラオケのリモコンで頭を数回殴ったと断定。瓶や灰皿などで殴っていないと結論づけた。

 また、ここまで聞き取りに応じていない貴ノ岩関について、協会理事でもある師匠の貴乃花親方に協力を改めて要請したところ、貴乃花親方は警察の捜査が終了した段階で調査に応じることを明言した。この問題への対応を優先させるため、巡業部長を務める貴乃花親方を、長崎県大村市で12月3日に始まる冬巡業に同行させず、春日野広報部長が代理を務めることも決めた。

 このほか、九州場所千秋楽の優勝インタビューで観客に万歳を求めるなど一連の言動が問題視された横綱白鵬関には、厳重注意が言い渡された。

 中間報告要旨はこちら

日馬「貴ノ岩擁護」一変 2次会説教中「彼女メール」

 中間報告や会見では、事件の詳細が明らかになった。

 それによると、鳥取城北高校の卒業生の力士らを激励しようと、高校関係者が食事会を開いたのは、秋巡業中の10月25日夜。1次会の店には、白鵬関、元横綱、横綱鶴竜関(32)(井筒部屋)、照ノ富士関、貴ノ岩関のモンゴル出身力士、日本人力士の石浦関(27)(宮城野部屋)のほか、高校関係者が集まった。

 1次会の終盤、貴ノ岩関が9月、都内の飲食店で休場した力士に対し粗暴な言動をしたことについて、白鵬関が説教を始めた。「(貴ノ岩関は)間違っていません」とかばい、その場を収めたのは元横綱だった。

 元横綱は父親を交通事故で亡くし、貴ノ岩関は両親が他界している。境遇の似た貴ノ岩関をかわいがり、日頃からしつけを指導し、相談にも乗っていた。

「謝れ」十数発

 暴行が起きた2次会は、女性店員が接客するラウンジで行われた。店の奥の個室。白鵬関が貴ノ岩関と照ノ富士関に対し、「相撲で生活できるのは、高校の先生方にお世話になったからだ。恩を忘れないように」と説教していると、貴ノ岩関はスマートフォンをいじった。「彼女からのメールです」。元横綱が注意すると、貴ノ岩関はそう苦笑した。

 謝罪を求めて平手で顔を殴った元横綱を貴ノ岩関はにらみ返した。「すぐに謝れば、その先に行かなかったと思われる」。危機管理委員会の高野利雄委員長は会見で、そう振り返った。

 「謝れ」。元横綱はそう言いながら、平手で十数発、そばにあったカラオケのリモコンで頭部を数回殴打。シャンパンボトルも振り上げたが、手から滑り落ちた。白鵬関が止めに入るまで暴行は続いた。

 貴ノ岩関の師匠の貴乃花親方は相撲協会に対し、「ビール瓶で殴られた」と証言。馬乗りになったり、灰皿を投げたともされていたが、そうした事実はなかった。

 協会は貴ノ岩関の聴取はまだ行っていないが、中間報告では「相当程度、解明は進んだと考えている」としている。

白鵬へ「品格に関わる」

八角理事長の講話を聴くため集まった白鵬関(中央)ら。左は鶴竜関(28日、福岡市博多区で)
八角理事長の講話を聴くため集まった白鵬関(中央)ら。左は鶴竜関(28日、福岡市博多区で)

 この日の理事会には、横綱白鵬関が師匠の宮城野親方(元幕内竹葉山)とともに呼び出され、現役横綱に対する異例の厳重注意が言い渡された。記者会見した八角理事長によると、九州場所以降の白鵬関の一連の言動が問題視された。11日目の嘉風関(尾車部屋)との一番で自ら物言いをつけるように土俵下で抗議したことに加え、千秋楽の優勝インタビューでは「日馬富士関と貴ノ岩関を、再び土俵に上げたい」などと発言。さらに観客に万歳三唱を促すなどした行動が「横綱の品格に関わる」とみなされ、「今後は慎むように」と厳しく注意を受けた。

 関係者によると、白鵬関は28日に八角理事長が行った暴行問題に関する講話の際に、「貴乃花巡業部長のもとでは冬巡業に参加できない」と発言し、理事長から「力士会を通じて言うように」とたしなめられていた。

元横綱日馬富士を傷害容疑で書類送検…鳥取県警(12月11日)

引退の記者会見で頭を下げる日馬富士関(29日午後2時16分、福岡県太宰府市で)=大原一郎撮影
引退の記者会見で頭を下げる日馬富士関(29日午後2時16分、福岡県太宰府市で)=大原一郎撮影

 大相撲の元横綱日馬富士関が幕内貴ノ岩関に暴行した問題で、鳥取県警は11日、元横綱を傷害容疑で鳥取地検に書類送検した。検察は年内にも、元横綱を略式起訴する方針だ。

 県警によると、元横綱は、鳥取市内のラウンジで10月25日にあった酒席で、貴ノ岩関を平手やカラオケのリモコンで十数回殴打し、頭部に全治10日程度の裂傷を負わせた疑い。

 元横綱は、酒席に同席していた横綱白鵬関が貴ノ岩関を説教した際、貴ノ岩関がスマートフォンを触ったことに腹を立てたという。調べに対し容疑を認め、「申し訳ないことをした。体だけでなく心も傷つけた」などと話している。県警は、検察に起訴を求める「厳重処分」の意見をつけた。

日馬、貴ノ岩を暴行後に白鵬ら数人とラーメンへ

 「大横綱に失礼だ。謝れ」。捜査関係者によると、横綱白鵬関から注意された際にスマホを触った貴ノ岩関に、元横綱はこう言って殴りかかったという。

 鳥取市内のラウンジの個室であった酒席には、同じモンゴル出身の横綱鶴竜関や関脇照ノ富士関らもいた。同席者は鳥取県警に「横綱が後輩を叱っているという状況だっただけに、止めにくい雰囲気があった」と証言。暴行は1~2分に及び、無言で身を守っていた貴ノ岩関が出血してようやく、白鵬関が制止した。

 場が落ち着いた頃、元横綱は貴ノ岩関に「やり過ぎた」と謝罪。しかし、貴ノ岩関が傷口をタオルなどで押さえながら宿舎へ帰った後、元横綱は白鵬関や鶴竜関ら数人とともにラーメンを食べに行ったという。

貴ノ岩 聴取に姿見せず 貴乃花親方「協力できない」回答(12月13日)

 大相撲の元横綱日馬富士による暴行問題で、日本相撲協会は13日、危機管理委員会が同日予定していた被害者の幕内貴ノ岩への聞き取り調査ができなかったことを明らかにした。

 師匠の貴乃花親方は先月30日の相撲協会理事会で、警察の捜査が終われば貴ノ岩への調査に協力するとの意向を示していた。元横綱が書類送検されたことを受け、協会は貴乃花親方に協力を文書で要請。期日を13日に指定して貴ノ岩を呼んでいたが、結局、姿を見せなかった。

 貴乃花親方からは12日に「検察の捜査が終わるまでは協力できない」との文書がファクスで協会に届いていた。鏡山危機管理部長は13日午後、東京都江東区の貴乃花部屋を訪れたが、貴乃花親方には会えず、再度協力依頼の文書を投函(とうかん)した。所在が確認できていない貴ノ岩の安否を含めた病状についても報告を求めた内容という。鏡山危機管理部長は「待っていたけど来ないというのは、(拒否の)意思表示でしょう」と話した。

白鵬と鶴竜に減給、日馬富士は「引退勧告相当」 相撲協会(12月20日)

 元横綱日馬富士関による暴力問題で、日本相撲協会は20日、東京・両国国技館で臨時理事会を開き、既に現役を引退した元横綱を「引退勧告相当」とし、白鵬関、鶴竜関の2横綱を減給とするなど一連の処分を決めた。

 八角理事長は残りの任期3か月間の報酬を全額返上し、元横綱の師匠である伊勢ヶ浜親方から出されていた理事の辞任届は受理され、役員待遇委員に降格した。

 危機管理委は暴行の被害者の幕内貴ノ岩関を19日夜に聴取するなど、問題が発覚した11月14日~12月19日の間、元横綱ら関係者13人から聞き取りをした上で、最終報告をまとめた。

 報告書は問題の背景として、「指導・教育のための暴力はやむを得ないとの思いがあった」と指摘。貴ノ岩関の気持ちを思い、指導・教育の名の下に暴力を受ける者は、常に弱い立場にあることを認識することが再発防止に必要であるとした。

 相撲協会はこれを受け、稽古場を含めて二度と、同様の暴力事件を起こさないように意識改革を図る。今回の事件を風化させないために、「暴力問題を再確認する日」を制定するなどした上、外部有識者を含めた再発防止検討委員会も新設する。

 貴ノ岩関は初場所を全休した場合でも診断書の提出を条件に、3月の春場所の番付を十両最下位にとどめる救済措置も承認された。

 また、報告書は鳥取県警から捜査への協力要請があった際、「警察の取り調べ前には関係者に触れないでもらいたい」などとの指示があったとし、協会執行部が危機管理委を招集するのが遅れたと結論づけた。

 この日午前に開かれた横審では元横綱の暴行を止められなかった白鵬関、鶴竜関の責任も「軽く見るべきではない」として協会に厳重注意を促しており、理事会は白鵬関の来年1月の給与の全額と、同2月の給与の半分、鶴竜関の同1月の給与の全額を支給しない処分を決めた。

臨時理事会に臨む貴乃花親方(左端)、八角理事長(手前中央)、伊勢ヶ浜親方(右端)ら(20日午後1時3分、東京・両国国技館で)=冨田大介撮影
臨時理事会に臨む貴乃花親方(左端)、八角理事長(手前中央)、伊勢ヶ浜親方(右端)ら(20日午後1時3分、東京・両国国技館で)=冨田大介撮影

相撲協会が発表した再発防止策

▽外部有識者、現役の親方らによる再発防止検討委員会の設置

▽暴力追放を宣言

▽暴力問題を風化させないため「暴力問題を再確認する日」などの設置

▽稽古のあり方の検討

▽暴力禁止などの新規定の制定を検討

貴乃花親方を聴取(12月25日)

 大相撲の元横綱日馬富士関による暴行問題で、日本相撲協会は25日、危機管理委員会(委員長・高野利雄外部理事)が同日、都内のホテルで巡業部長の貴乃花親方から聞き取り調査を行ったと発表した。

 相撲協会によると、25日朝に貴乃花親方から調査に協力するとの連絡が入り、高野委員長と鏡山危機管理部長が約2時間、貴乃花親方と同席した代理人の弁護士から事情を聞いた。内容は公表されなかったが、関係者によると、貴乃花親方は20日の協会理事会で、自身の対応の正当性を主張する文書を提出しており、今回の聞き取りに対しても同様の主張をしたという。

 相撲協会の懲戒規定は軽い順に〈1〉けん責〈2〉報酬減額〈3〉出場停止〈4〉業務停止〈5〉降格〈6〉引退勧告〈7〉懲戒解雇――の7種類ある。

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