讃岐うどん遍路

うどんコラム

これであなたもうどん通!
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最古のうどん店

 現存する最古のうどん店は、高松市の「ヨコクラうどん」と琴平町の「さらさや」で、ともに江戸時代創業である。続いて明治初期創業の善通寺市「日の出」、明治中期頃創業の善通寺市「はなや」、同じく善通寺市「もとや」、そして観音寺市の「かなくま餅」。いずれも取材時にお店から申告のあった創業年だが、自分で埋めて掘り出したりするような(笑)店主じゃないので信用できると思います。

  何か善通寺が多いが、弘法大師のチェーン店か?という疑問を無理やり出したが、それは違うでしょう。「うどんは弘法大師が中国から伝えた」と言われているが、誰も見ていないし文献にも残っていない。「讃岐では何かわからないことがあると、弘法大師のせいにしておくと安心する」という説もある。

 それより、つい先日ある親しい僧侶から聞いたのだが、最近「弘法大師は讃岐の人間ではなかった」という説が浮上していて、その世界では水面下でかなり騒然としているらしいぞ。

讃岐うどん店の休日

 自慢するわけだが以前スイスに行った時、日曜日はスイス中でスーパーから日用品の店からほとんどの店が閉まってしまうことに驚いた。稼ぎ時のはずなのになぜ閉める?平日働いている人はいつ買い物に行くんだ?という質問に、スイス人のオリビエは実に単純な答をくれた。

 「日曜は休みと聖書に書いてある」

 そんなことで休むんか!

 そんなことで休むそうである。さて、香川のうどん店は弘法大師が「日曜は休み」と言ったという話は聞かないのに、その30%以上が日曜日に休む。わずか2年前の平成10年調べでは、50%の店が日曜日に休んでいた。少しずつ観光客仕様の店が増えてきたのかもしれないが、圧倒的に日曜休みの店が多いことには変わりないのである。その理由について我々調査班が徹底的に聞き取り調査分析した結果、どう考えてもこれしかない、という結論に達した。それは、

 「うどん屋のおっちゃんも日曜は休みたいやん」

である。いや、冗談でなくて。たぶん香川のうどん店は客商売の飲食業というより、そのメンタリティが「自分ちの生活の延長」なのである。それがまた、ほのぼのとしたうどん店と客の関係を醸し出す要因でもある。良いか悪いかは別として、讃岐うどんの店の原風景は、どうも「ビジネス」ではないようなのである。

讃岐うどん店のタイプ

 讃岐うどんの店を語るには、「一般店」「大衆セルフ」「製麺所型」の3つの店のタイプを体験しないといけない。ま、このタイプの名称は我々が勝手につけたのだが、何だかみんなが追随してて定着しそうな感じなので。じゃ、それぞれのタイプを簡単に紹介。

<一般店>
 席に着くとメニューがあって、注文して待ってると、できあがったうどんを持ってきてくれるという、全国どこにでもあるレストランタイプのうどん店。讃岐うどんの店の約6割がこのタイプの店だ。でも「6割」と聞いて、香川県外の人は「あと4割もの店は何なんだ?!」という謎が出てくる。

<大衆セルフ>
 その残りの4割は、客が「注文」以外の何かをしないといけないという「セルフサービス」の店だ。そのうち、高松市を中心とした市街地に多いのが、「コンベア式の大衆セルフ」。代表的なパターンは、食堂風の店内に注文カウンターがあって、そこで客はうどんの玉数を告げると、うどん玉の入った丼を渡してくれる。それを湯だまりに持っていって自分でうどんを湯に通して温め、お好みの天ぷらやおにぎり類を取り、薬味(ネギ、ショウガ、天かす、ごま等)をかけ、自分でダシをかけて席について食べ、食べ終わると食器を自分で片づけてお金を払うというシステムだ。この形をベースに、店によってまちまちのシステムが取られている。

・玉数を告げると、ダシのかかったうどんを出してくれる店。あとはセルフサービス。
・お金を先に払う店、あとから払う店。
・手にした丼で玉数が決まる店(丼がずらっと並んでいて、2玉が欲しければ2玉用の丼を取ってうどんをもらいに行く)
など、とにかく全く同じやり方の店はないと言ってもいいほど。ダシのかけ方も、寸胴から柄杓でかける店、蛇口のついたタンクにダシが入っている店、テーブルの上の土瓶にダシが入っている店など、常連にならないとなかなかわかりにくい。

<製麺所型>
 セルフサービスの中でも田舎に多い形態。もともと卸し専門の製麺所だった店が、ついでに客に食べさせてくれるようになったといううどん店だ。立地も店構えも強烈に怪しい…というか、全く"間に合わせ"であったりする。ダシも置いてない店(醤油をかけて食べる)や、ネギを自分で切らないといけない店、家に上がって食べさせてくれる店など、すごい所が何軒もある。

 以上が代表的な讃岐うどんの店のパターン。これを全部制覇してからでないと、讃岐のうどん屋は語れない、と思う。

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