ジャーナリストの田原総一朗さんがテレビ朝日の番組で拉致被害者の実名を挙げ「生きていない」と発言した問題で、放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送人権委員会(堀野紀委員長)は10日、「配慮を欠き不適切」と指摘し、発言をめぐる局の対応に迅速性に欠けるなど放送倫理上の問題があったとする見解を発表。同局に見解の内容を放送するよう求めた。
番組は昨年4月25日未明の「朝まで生テレビ!」。委員会は、横田めぐみさんと有本恵子さんに関し「外務省も生きていないことは分かっている」と述べた田原さんの発言を「根拠を示さず断定的」と批判した。
拉致被害者家族会の抗議を受け、田原さんと同局が5月30日の同番組で行った謝罪についても「準備が不十分で、真摯かどうか疑問を感じさせた」と問題視、「局の対応も(家族会の)心情に配慮が足りなかった」と指摘した。一方で「発言は言論の自由の範囲内で、人権侵害とは認められない」と判断した。
同委員会に「重大な人権侵害に当たる」として審理を申し立てていた家族会は10日、東京都内で記者会見し「表現の自由の下であれば何を言ってもいいのか」と委員会の見解を批判した。