悲しみに暮れても、涙は見せなかった。
一昨年6月に急性心筋梗塞の手術を受け、現在も呼吸器疾患で闘病する渡だが、死ぬまで役者魂を貫いた弟に恥じぬよう、力強く自分の足で立ち、前を向いた。
この日午後5時20分ごろ、葬儀を終えて帰宅した渡は、都内の自宅前で報道陣に対応。最後にかけた言葉を聞かれると、しばしの沈黙後、「…特にないです」と声を振り絞った。続けて、渡瀬さんが死去前日の13日も病室で主演作「-9係」の撮影を気にしていたことをスタッフから聞いたと明かし、「せりふはもう覚えていて。『シーンはどこをやるんだ』と聞いていたようです」と唇をかみしめた。
「仕事に対する意欲とか情熱とか責任みたいなのは十分あったんですけど…」と言葉を詰まらせ、「やらせてあげたかったというか…やり通せなかったことは、無念だと思います」と同じ俳優として弟の思いに寄り添った。自身の体調については「週3回リハビリをやっている。外見は元気なんですけど」と苦笑。だが、そのしっかりとした口調からは、弟の分まで生きるという強い決意がにじみ出ていた。