シカと電車との衝突事故が多発する津市の近鉄大阪線で、超音波を流して線路への進入を防ぐ「鹿踏切」を設置した結果、事故がゼロに抑制されたことが16日、分かった。予想以上の効果に、近鉄は来年3月に奈良県内の路線でも設置を行う方針。また、他の鉄道会社からの問い合わせが殺到し、試験設置を始める会社も出るなど、導入の動きも広がっているという。
「鹿踏切」が設けられたのは、津市の山間部にある近鉄東青山駅周辺。線路がシカの生息域を横切っており、昨年は過去最多の17件の衝突事故が発生した。
近鉄は今年5月、周囲1キロにわたり線路脇にネットを張った上で、5カ所に隙間をつくり、シカの活動が活発な午前5〜6時と午後6〜12時の間に、シカの嫌がる超音波を流して横断しないようにする「鹿踏切」を導入。その結果、設置7カ月で衝突事故はゼロに抑えられたという。
絶大な効果に、近鉄は来年3月、奈良県の榛原-室生口大野駅間にも同様の踏切を導入する方針で、すでに今年10月に監視カメラを設置し、シカの行動分析を始めている。
また、年間十件以上の事故が起きている17カ所にも順次検討していくという。
一方、近鉄には、設置の5月以降、他の鉄道会社や自治体、大学関係者などから問い合わせが相次ぎ、実際に伊豆急行(静岡県)が11月から試験的に設置するなど広がりもみられる。
近鉄の担当者は「効果が実証された形。今後拡大設置し、運行への影響が出ないようにしていきたい」と話している。
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多発するシカやイノシシなどの動物と電車との衝突事故は、電鉄会社にとって深刻な問題となっている。
近鉄では昨年、シカなどの動物と電車が衝突する事故が過去最多の313件発生。部分運休や代替車両の手配などを余儀なくされるケースもあるといい、損害は年間数千万円に上るとみられている。