国際情勢分析

韓国外交の金字塔「米韓FTA」をトランプ政権がバッサリ 打ち切り?再交渉?部分改訂?意図を勘ぐる

 ペンス氏はソウルでの講演で、「厳しい事実だが、米韓の通商関係に不足しているものがあることを素直に認めなければならない」と強調した。

 貿易不均衡を是正するとの観点から、トランプ政権が貿易協定や通商関係の見直しに踏み込もうとしているのは、韓国や中国、日本などのアジア各国のほか、メキシコやカナダなどの北米でも同じだ。

 実際、4月26日にトランプ氏とメキシコのペニャニエト大統領、カナダのトルドー首相が北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉に向けた作業に入ることで合意した。

 米政府への反論として、韓国の政府やメディアは、FTAによって多くの雇用が米国内に生まれ、経済的恩恵をもたらしているという側面を強調している。だが、正副大統領がともにFTAの「改廃要望」を公言した意味は重く、韓国側には「ゼロ回答」は難しいだろう。

 現在、米政権では、通商交渉を担う通商代表部(USTR)をはじめ、通商・貿易チームの指名や承認が終わっていない。本格的な対外通商協議は、時期的にはまだ先にになるとみられる。実際に米韓FTAをめぐる協議が行われるとしても、両国間で新たな妥結に至るのは、容易ではないとみられる。

(外信部 塩原永久)

■マイク・ペンス氏■ 1959年米中西部インディアナ州コロンバス生まれ。インディアナ大法科大学院修了。弁護士などを経て、2001年から共和党下院議員6期。13年からインディアナ州知事。キリスト教の信仰に熱心なことで知られる。

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