平成に入り燃料の節約方法が見つかったが、日本の真上を飛ぶ利点を検証できないことが実用化の壁に。転機は平成10年に意外な形で訪れた。打ち上げに失敗した通信衛星が予定外の軌道を飛行し始め、ごみ同然と思われた中、同機構の研究者が検証実験に使うことを思い付いた。
衛星が日本の真上を通過するとき、アンテナをつけた車で東京・丸の内の高層ビル街を走行し、電波を安定して受信できることを実証。これを機に政府が実用化へ動き出した。
年内に計3基を打ち上げ本格運用の体制が整う。検証実験に携わった同機構の田中正人主管研究員(58)は「感慨深い。準天頂軌道は通信や極域の観測にも活用の余地がある」と話す。