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第1特集
加納典明×三木崇史 ヌード対談

写真家レスリー・キー猥褻事件に、加納典明が反論 「ペニスだってアート!」

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――特集企画『性器写真集の傑作たち』では、性器をアートととらえた写真を紹介したが、残念ながら日本では、なかなか受け入れられない様子。事実、2月に写真家レスリー・キーが猥褻物頒布の容疑で逮捕された。そこで本誌は、やはり同じ件で逮捕された、大御所カメラマンの加納典明氏とレスリーの写真集でモデルを務めた役者の三木崇史氏との緊急対談をセッティング。二人は同事件に対する反論で、おおいに盛り上がった──!

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(写真/早船ケン)

 一部報道によれば、猥褻写真集などの摘発に慣れた捜査員でさえも、顔を背けたくなるほど、ハードなカットが満載の写真集『SUPER MIKI』。筆者も取材前に見せてもらったが、確かに「これでもか!」とばかりに性器を露出した三木氏の写真が続くさまは、卑猥を通り越した何かを感じられるほど。

 そんな写真集で、三木氏はどんな思いで被写体を務めたのか──。

法的にNGなラインを検察が医学書で指示

──こういう作品になるということは、三木さんご自身は、どこまで把握していたんですか?

三木崇史(以下、三木) 最初にオファーをいただいた時点で、レスリー・キーがヌードを撮ってるというのは把握してましたし、僕も「できる範囲で」という話はしました。確かに本作は、彼の作品の中でも「ハードな部類に入る」とレスリーも言ってましたし、写真を売るという話は何も聞いてません。でも僕自身は、レスリーに撮ってもらえるだけでうれしかったし、役者として活動をしていく上で、この写真集が自分の武器になれば──という思いしかないですね。僕は、彼と一緒に作品を作れたことを誇りに思ってます。

──でも、男性器もろ出し写真は、初めての人が見たら、相当な衝撃だと思います。加納さんは、これをどうご覧になられましたか?

加納典明(以下、加納) 写真について言えば、バンとペニスを出しちゃってて非常にレスリーらしいよね。(あるカットを指しながら)これなんかは三木くんの写真か、ペニスの写真かっていえば、『彼のペニスの写真』だよな。それはおそらくレスリーが撮りたいものだったと思うんだよ。でも、俺は、そのこと自体は全然いいと思う。今回は、たまたまレスリーが逮捕されたけど、今これを見て、別に俺は気持ち悪くもないし、もっとすごい作品も見てきたからね。局部にピアスしてるようなやつだったりさ。俺もニューヨークで、ケツに手を入れてる写真なんか撮っているんだけど。

──さすがですね。でも日本の法律的にはNGだったようです。

加納 写真の表現としては、これはアリだということだよ。アリだけど、まあ、同じ件で逮捕されたことのある俺ならわかるけど、お上はこれを理解できずに引っ張るだろうなとは思うよね。

──1995年に、加納さんのヌード写真集が猥褻に当たるとして逮捕された件ですね。

加納 でも俺自身は、こういう表現は、もっと出てくるべきだと思うのよ。それこそ、ネット上なんかには、もろ出しの画像がいろいろあるワケで、一般社会でもすでに、そういうものを見慣れてる人はいるんだからさ。こうやって、俺やレスリーなんかをお上が引っ張るってことは、見せしめでさ。この一件で、アーティストを引きこもらせるのが狙いなんだよ。でも、そこでアーティストが引いちゃったらダメだし、俺は若い写真家たちに「どんどんやれ」と言いたいね。今回の件で臆することはないし、ペニスが勃っているとかいないとか、そういうことはどうでもいいんだよ。これを見て、人がアートとしてのインパクトを受けるかが、大事でさ。

──インパクトだけは、間違いなく大でした。

加納 そこなんだよ! そこの質なの! それをただ「性器が出ているから猥褻」という杓子定規でしかものを見てないワケだよ、相変わらずこの国の人間は。

 しかも猥褻罪の前例でいうと、本来なら著作者というのは引っ張られないはずなんだよ。その作品を編集し、出版した人間が引っ張られるんだよね。今回、三木くんは引っ張られてないんだろ?

三木 そうですね。ただ先日、印刷会社の方が……(件の写真集を印刷・製本したとして、猥褻図画頒布幇助の疑いで印刷会社社長が逮捕された)。

加納 結局これも、ほかの印刷所に対する見せしめなんだよ。レスリーのところにはね、次は間違いなく税務署が来るよ。あと、彼はシンガポール国籍だから、国の出入りとか、いろいろ微妙に響いてくると思う。ホント日本社会は出る杭を打つのよ。アメリカンドリームはあっても、ジャパニーズドリームは絶対ない。みんな覚悟しておいたほうがいいよ。出る杭を打つ国・ジャパン。俺は身をもって打たれた経験者だから(笑)。

三木 加納先生の時は結局、何が問題だったんですか?

加納 俺は逮捕後、取り調べの中で、ずっと検察官と「国としては、どこが猥褻なのか言ってくれ」という押し問答をやっていたんだけど、最後に検察官は医学書を持ってきた。今でも明確に覚えているんだけど、開かれたページには女性器の恥丘、そして土手(小陰唇)の中央から肛門までをグリーンのマーカーペンで丸く囲ってあったんだよ。で、検察官は「加納さん、こっから内側には入らないでくれる?」って言ったの。お前の気持ちもわかるけど、国としても立場がある。その中側が写っていたら取り締まらなきゃいけないから、ここらへんで手を打っといてくれないかっていうメッセージだったワケだよ。逮捕されていた10日間での収穫は、これだけだね。

三木 その写真表現が猥褻だ、ということではなかったんですか?

加納 同じく逮捕されて警視庁から帰ってきた出版社の社長も言ってたけど、警察に「どこが悪いの?」って聞いても、明確なポイントも、このページがダメとも言わなかったらしい。それをしたら、検閲したことになるからだって。

──確か刑法175条には、物語性や芸術性・思想性などで性的嗜好を緩和させるものがないとNG……といった表記があるんですよね? その中でどの表現がだめなのかをハッキリしてくれないと、なんで猥褻物になったのかがわからないですよね。

加納 うん。俺は外陰唇とかは撮らなかったけど、土手の中には入っていたのよね。ただこっちはアートとして撮っていたつもりでも、結局判断されるのはそこだけよ。

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