大阪府警の機動隊員による「土人」発言が批判にさらされている。本土側の沖縄蔑視、差別はこれまでもたびたび繰り返されてきた。1903年には大阪で開かれた博覧会で、沖縄女性2人を「展示」した「人類館事件」があり、沖縄戦では日本兵による住民虐殺や「集団自決」(強制集団死)があった。戦後71年たった現在でも、在日米軍専用施設面積の約74%が集中する。識者は「差別する側の意識が変わらないと問題は解決しない」と指摘している。

 1903年、大阪で開かれた第5回内国勧業博覧会の会場で「7種の土人」として、朝鮮人や台湾先住民、沖縄県民らが見せ物として「展示」される「人類館事件」が起きた。当時の沖縄では「沖縄人差別」として激しい非難と抗議が起きた。

 事件から100年後の2003年に大阪で、事件をテーマにした戯曲「人類館」の公演を手掛けた、関西沖縄文庫主宰の金城馨さん=大阪府=(63)は「土人発言」について「特別な驚きはない。普段沖縄に対して思っていることが、表面化しただけ」と切り捨てた。「大阪府警では日常的に沖縄に対する差別があるのではないか。府警の責任を追及すべきだ」と語気を強めた。

 金城さんは1879年の琉球処分以降「歴史的に差別が続いている状態」とした上で「これから沖縄は本土と対等に向き合い、差別する側の意識を変えることが問題解決につながる」と話した。

 差別の問題に取り組む師岡康子弁護士は「土人」「シナ人」の二つの発言について公的機関が「人種差別を助長しまたは扇動すること」を禁じた人種差別撤廃条約に違反すると指摘。「弁明の余地はない。大阪府警は謝罪し、教育体制を洗い直す必要がある」と求める。

 「シナ人」の表現は「レイシスト(差別主義者)が基地に反対するのは中国に操られた売国奴、と言うのと全く同じ発想。基地に反対する沖縄の人々と中国の人々に対する二重の差別だ」と非難した。

 「土人」は新聞社が使う「記者ハンドブック」(共同通信社発行)でも差別語、不快用語とされており、記事にする場合は通常「先住民(族)」や「現地人」と表記することになっている。