活性酸素

 活性酸素とは安定な基底状態の三重項酸素分子よりも活性が高く反応性に富む酸素種で、通常ヒドロキシラジカル、スーパーオキシド、一重項酸素、過酸化水素の4種を指すことが多いのですが、他にも生体内で重要な反応を引き起こすものがあります。

 

ヒドロキシラジカル(・OH)

 活性酸素の中でも最も反応性に富む酸素種です。γ線などの高エネルギー放射線を照射すると水が分解してヒドロキシラジカルが生じます。生体内では過酸化水素が2価の鉄イオンにより還元されヒドロキシラジカルが生じるFenton反応が知られています。

 

スーパーオキシド(O2-)

 生体内で大量に発生し、重要な反応を引き起こすためよく取り上げられている活性酸素です。通常の酸素分子より電子が一つ多いアニオンラジカルです。スーパーオキシドディスムターゼ(SOD)はスーパーオキシドの消去剤として重視されています。

 

一重項酸素(1O2)

 基底状態の酸素分子は、一番外側の電子スピンが同じ方向を向いた三重項状態ですが、逆方向に向いているのが一重項酸素です。同一軌道で逆向きになっているΔ型と、異なる軌道で逆向きになっているΣ型とがあります。当研究室で主に研究しているのはΔ型についてです。三重項酸素が光によって励起された色素分子からエネルギーを受けることによって生成します。腫瘍の光化学治療では、腫瘍組織に集まりやすい色素を注入し、レーザー光で励起し、一重項酸素を発生させます。この一重項酸素が腫瘍組織にダメージを与えることによって治療することができます。光化学反応による水質浄化等にも期待が寄せられています。

 

過酸化水素(H2O2)

 殺菌消毒のオキシフルに含まれています。生体内で常に生成しており、かなり安定です。過酸化水素自身も酵素の失活やDNAの損傷に関与していますが、ヒドロキシラジカルやヒドロペルオキシラジカルに変化した後の反応が重大です。喫煙は不完全燃焼で生じた過酸化水素を体内に取り込む極めて危険な行為です。過酸化水素は容易に細胞膜を通過し、核の近くでFenton反応によりヒドロキシラジカルに変化すればDNAの損傷は免れがたいと考えられます。

 

オゾン(O3)、ペルオキシラジカル(LO2・)、ヒドロペルオキシド(LOOH)、アルコキシラジカル(LO・)、ヒドロペルオキシラジカル(HO2・)、鉄−酸素錯体(Fe・・・O2)、二酸化窒素(NO2)

 これらの活性酸素については他の成書を参照して下さい。(「活性酸素」医歯薬出版株式会社、監修八木圀夫他 等)

 

 

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