日航、JALホテルズ売却へ 組織スリム化で負の遺産に決別
会社更生手続き中の日本航空は、ホテル運営子会社のJALホテルズ(東京・品川)をホテルオークラに売却する方向で最終調整に入った。売却価格は数十億円程度とみられる。日航の経営再建への寄与は大きくはないが、ホテル事業は日航の過去の放漫経営の象徴であり、負の遺産との決別という意味もある。
ホテルオークラ首脳は28日、JALホテルズ買収の優先交渉権を得たことを明らかにした。同社は国内外のシティホテルのほか、ビジネスホテルも手がけており、「組織とノウハウには魅力がある」(ホテルオークラ首脳)。ただ「日航の再建が失敗すればブランド価値が下がる懸念もある」として、慎重に交渉を進める姿勢も見せた。
JALホテルズは1970年に設立した日本航空開発が前身で、80年代に海外ホテルに積極投資。84年にはニューヨークの高級ホテル「エセックスハウス」を1億7500万ドル(当時のレートで約200億円)で買収したが、バブル崩壊で巨額の赤字を出して撤退した。他にも大型ホテルを次々傘下に収めたが、放漫経営との批判は当時から強く、ホテル事業は2000年までの累計で約700億円の損失を出したとの指摘もある。
●価格より事業縮小
日航本体の業績不振が深刻になってきた2000年代半ばからは、保有ホテルの売却で資金を得ることに奔走する。07年末に全ホテルを売り切った後は、運営受託専業としてJALホテルズの株式上場を目指した。だが、資産を持たない同社の市場評価は低く、上場は実現しなかった。
昨夏以降に策定したすべての再建策でJALホテルズの売却方針が盛り込まれた。今回、ホテルオークラと交渉が進み始めたのは、管財人の企業再生支援機構が売却価格にこだわるより、日航の事業規模を早期に縮小することを優先している事情があるもようだ。日航は今後、人材派遣や機内食子会社など非中核事業の売却を加速する。