県と歪み増す政令市 大都市行政 現状を探る(上)
大都市の行政のあり方が争点になっている大阪府知事と大阪市長のダブル選挙が27日、投開票日を迎える。都道府県と政令市で二重行政などの歪(ひず)みを抱えるのは大阪だけではない。東京都と23区の間も問題が山積しており、必ずしも十分な行政制度ではない。
「市の権限を高めるかどうかは日本のあり方を決める問題だ」。横浜、さいたまなど7政令市が「大都市制度共同研究会」を設立。座長である横浜市の林文子市長は10月末の初会合でこうあいさつした。目指すは府県から独立して行政運営する「特別自治市」。2012年11月に最終報告書をまとめ、国に提言する。
政令市制度は1956年に始まった。国は47年に大都市が府や県から独立する制度を設けたが、権限を奪われる府県が猛反発。そこで権限の一部だけを府県から移す政令市制度を設けた。政令市には「権限が小さく、十分な行政サービスができない」との思いが強い。
希望しても保育所に入れない「待機児童」が971人(4月時点)と全国で2番目に多い横浜市。対策として幼稚園の預かり保育の拡充を考えた。しかし、保育所の認可権限は市にあるが、幼稚園は県にある。市の担当者は「幼稚園の空き状況、預かり保育への意欲などの情報をこまめに収集したくても権限がないと難しい」と漏らす。
街づくりでも問題が出ている。JR千葉みなと駅から数分の臨海部。千葉市は観光船が発着する桟橋の整備で活性化をもくろむ。ただ、桟橋の整備主体は千葉県。2013年度末までに一部使用開始する予定だが、不透明さが増している。市議会からは港湾の管理権限の移譲を求める意見も上がるが、県は「千葉港は複数自治体にまたがり、県の管理が合理的」というのが基本的な考えだ。
政令市の権限を大きくすれば、県が空洞化する懸念もある。横浜、川崎、相模原の3政令市の人口は神奈川県内の65%程度。すでに県議からは「我々は人口3割の地域だけをみる3割県議」といった声も出る。同県議のうち3市選出は6割強。首相の諮問機関、地方制度調査会は大都市制度を議論のテーマにする予定だが、都道府県のあり方も問い直す必要がある。
都と23区にも問題 財源配分・議員数 不満の声
東京23区の区長で構成する特別区長会には、大阪府の橋下徹知事(当時)が府と市を再編する「大阪都構想」を提唱して以来、府内の自治体関係者の視察が相次いでいる。
東京都ができたのは1943年。戦時下で首都の行政機能を強化するため、当時の府と市を統合した。23区は市町村よりも権限が小さく、通常、市町村が手掛ける水道業務や消防などを都が手掛け、区は担っていない。
視察者の関心の一つが区の財政格差の調整だ。23区以外の地域では市町村税の法人住民税や固定資産税などを都が徴収。うち45%を都の財源とし、残り55%(約9000億円)を各区の財政状況に応じて交付金として配分する。交付金が収入の4割以上の区もある。ただ、配分方法は都と区の協議を経るが、最終的には都が条例で定めるため、区側は「都の考えを押しつけられているという不満が強い」(区長会)。
もう一つ関心が高いテーマが議員や職員の数だ。23区の職員は合計で約6万2000人、区議は約900人で、人件費は年間6000億円を超える。効率の悪さから区の再編を求める意見も出ている。