産業構造、5年で集中改革 国際トップ企業育成
競争力会議
政府は15日開いた産業競争力会議(議長・安倍晋三首相)で、今後5年間を集中期間と位置付け、産業構造の改革に取り組むことを決めた。再編など構造改革に取り組む企業を税制などで支援するほか、雇用制度を見直して人材の移動を促し、日本経済をけん引する国際トップ企業を増やす。世界に通じる人材を育てる教育改革を進め、産業を支える人材力を底上げする。
「今後5年を緊急構造改革期間と位置付け、政策パッケージを策定したい」。安倍首相は同日開いた競争力会議で指示した。会議では産業の新陳代謝を促し、成長分野に人材を移す方策を議論。経済産業相、厚生労働相、文部科学相らが改革案を提示した。
会議では世界規模で企業再編による強者の形成が進むなか、日本では業種内の過当競争が続いていることを問題視。企業の開廃業率が5%未満と米英(10%超)に比べて低い現状を改め、産業の新陳代謝を促す必要があるとの認識で一致した。
このため企業構造、雇用、人材育成の3分野で改革を進める。売り上げや雇用で世界規模の企業(グローバルメジャー)と、特定分野で高い世界シェアを誇る企業(グローバルニッチ)の数を増やすことが目標。開廃業率も中長期的に10%台への引き上げを目指す。
企業構造分野では、戦略分野への集中投資、企業の組織再編、事業配分の組み替えなどに取り組む企業を税制や規制の両面から支援する。創業を支援するため、個人投資家による創業支援を促す「エンジェル税制」を拡充する。
雇用分野では、勤務地や職務を限定した新しい正社員制度を普及させる。今の正社員と非正規雇用の中間に位置する雇用形態で、職務が続く限りは期間を定めずに雇用されるが、企業が職務を廃止した場合はその時点で雇用契約が終わる。
パートや契約社員よりも労働者の雇用は安定し、企業はリストラなどで事業構造が大きく変わった場合に人件費を削減しやすい利点がある。
従業員を解雇せずに休業させた企業に助成金を出す雇用調整助成金は「競争力のない企業に労働者がたまってしまう」として段階的に縮小する。これを財源に転職支援サービスを拡充し、労働移動を促す仕組みにする。ハローワークが持つ求人情報を民間の人材紹介会社に開放し、転職を官民で後押しする。
人材育成では、国立大学の職員に年俸制を導入するほか、私立大学に補助する私学助成の配分にメリハリを強めて大学の機能を強める。英語教育をてこ入れするため、外国人教員の採用を増やす。安倍首相は「すべての学生に留学機会を与える環境整備を図っていきたい」と強調した。