東京都が「文化ビジョン」 芸術祭創設、五輪の遺産に
東京都は30日、2020年の五輪に向けて文化を街づくりや成長戦略に生かす「文化ビジョン」の素案をまとめた。五輪憲章が定める大会期間中や事前の公式文化プログラムの先行プロジェクトと位置付け、世界規模の総合芸術祭の創設や障害者アートの拠点整備などを打ち出した。東京五輪のレガシー(遺産)形成にもつなげる。
舛添要一知事は同日の定例記者会見で「五輪を文化の面でも史上最高の大会にしたい。芸術文化を東京のブランド価値として国内外に発信する」と強調。美術館などが集積する上野や六本木などを文化拠点として育成する考えを表明した。世界中の若手芸術家を受け入れ、支援する取り組みも進める。障害者アートの発信拠点は都現代美術館に設置する。
ビジョンは文化を単発的なイベントの開催やハコモノの整備にとどめず、東京の魅力を街全体で高めるのが狙い。第1弾として15年度に2種類のプロジェクトを始める。
現代日本を代表する劇作家・演出家で、東京芸術劇場芸術監督の野田秀樹氏が中心となる「東京キャラバン」(仮称)はアーティストが街中でライブパフォーマンスを披露し、にぎわいを創出。美術家の日比野克彦氏はパラリンピックを視野に「障害者アートプログラム」として、障害を持つアーティストと福祉関係者の共同創作などを展開する。
世界規模の総合芸術祭「東京芸術祭」(仮称)は20年までに設ける。主に現代演劇を集めた「フェスティバルトーキョー」など既存イベントを伝統芸能や音楽、美術といった多彩なジャンルの催しと一体化し、世界的な祭典に育成する。
ビジョンは2月に開会する都議会での審議などを経て、3月に正式決定する。都は15年度予算案に盛り込んだ芸術文化振興基金(100億円)を財源として活用する方針だ。
東京五輪の公式文化プログラムは大会組織委員会や都が16年のリオデジャネイロ大会の終了後に始める。12年のロンドン大会では4年間で1億2662万ポンド(約224億円)を投じ、延べ18万回近くのプログラムを実施。世界204カ国・地域のアーティスト計4万人が参加し、4340万人が体験した。