日米基軸「不変の原則」 首相が施政方針演説
働き方改革「最大の挑戦」
安倍晋三首相は20日午後の衆院本会議で施政方針演説をした。日米同盟を外交・安全保障政策の基軸とする方針は「不変の原則」と明言し、トランプ次期米大統領との早期会談に意欲を表明。働き方改革をめぐっては「最大のチャレンジ」と位置づけ、残業時間規制に向けた法改正に取り組む方針を示した。過去の演説でかかげてきた、2020年度に基礎的財政収支の黒字化をめざす財政健全化目標には触れなかった。
施政方針演説は1月召集の通常国会で首相がする演説で、政府がその年の国政全般に臨む基本方針を示す。12年12月に首相が再登板して以降、施政方針演説は5回目。例年は後半で言及する外交・安保を序盤で詳述する構成にしたのが特徴だ。
外交では、まず日米同盟を取り上げ「トランプ新大統領と同盟の絆をさらに強化する」と強調した。日米両国が「世界の平和と繁栄のため、ともに力を尽くす責任がある」と訴えた。
昨年の施政方針演説で「国家百年の計」などとうたった環太平洋経済連携協定(TPP)は「21世紀型の経済体制のスタンダード(標準)で今後の経済連携の礎となる」と指摘。昨年より言及は控えめだが、合意からの離脱を宣言するトランプ氏の翻意に期待を寄せる。「自由で公正な経済圏を世界に広げる」と保護主義のまん延をけん制した。
日ロ関係は「北東アジアの安全保障上も極めて重要だ」と力説。北方領土問題を含む平和条約の締結に向けて「一歩でも、二歩でも着実に前進していく」と表明した。
働き方改革では、電通社員の過労自殺問題に言及し「長時間労働の是正に取り組む」とした。罰則付きで残業時間に限度を定める法改正へ作業を加速する方針を示した。同一労働同一賃金の実現に向けて「不合理な待遇差を個別具体的に是正する」ための法改正にも言及した。
経済政策について「確実に経済の好循環が生まれている」とアベノミクスの成果を強調した。20年度の財政健全化目標に触れないものの、「経済再生と財政再建、社会保障改革の3つを同時に実現しながら一億総活躍の未来を切りひらく」との表現で健全化への配慮を示した。政府高官は「目標を堅持する方針は変えていない」としている。
天皇陛下の退位をめぐっては、政府の有識者会議が23日に論点整理を公表する予定で「静かな環境の中で国民的な理解のもとに成案を得る考えだ」と述べ、今国会での法整備に意欲を示した。
5月に施行から70年となる憲法の改正に触れて「次なる70年に向かって日本をどのような国にするか。その案を国民に提示するため憲法審査会で具体的な議論を深めよう」と提起。憲法改正の発議案作成へ与野党の議論促進を呼びかけた。
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