「イスラム国」戦闘員、中国から300人合流か
【北京=阿部哲也】多くの少数民族を抱える中国も、国際規模で広がるテロや暴力事件への対応に頭を悩ませている。共産党機関紙、人民日報系の環球時報は、イスラム過激思想を持つ約300人の中国人が過激派「イスラム国」に合流し、イラクやシリアでの戦闘に従事していると報じた。新疆ウイグル自治区で活動するウイグル独立派組織との関係が指摘されており、習近平指導部は神経をとがらせている。
イラクやシリアの当局者らの情報として伝えた。中国人過激派は「東トルキスタン・イスラム運動(ETIM)」に所属するウイグル族とみられ、他国を経由してシリアなどへ違法入国しているという。中国外務省の秦剛報道局長は16日の記者会見で「国境を越えた国際テロの動きが活発になっており、関係各国は力を合わせて打撃を与えるべきだ」と強調した。
中国・新疆では習指導部が大量の武装警察や軍隊を動員し、暴力・襲撃事件への取り締まりを強める。しかし逆にこうした締め付けが現地のウイグル族に「圧政」と映り、暴力による反発を生むという悪循環が続く。香港の中国人権民主化運動情報センターによると、毎月5千人近くのウイグル族が海外へ逃亡し、一部は「イスラム国」へも参加しているという。
習指導部はこうした過激派が戦闘訓練を受け、中国へ戻ってくることを警戒する。11月下旬にも自治区カシュガル地区で車に乗り込んだ複数の「暴徒」が爆発物などを投げつけ、18人が死傷する襲撃事件が起きた。習指導部は米国とも連携して対応を急ぐが、混乱が収束する気配は見えない。
同様の動きは東南アジアなどへも広がっている。9月、インドネシア中部のスラウェシ島で4人のウイグル族が対テロ特殊部隊に逮捕された。タイで入手した偽造トルコ旅券を持ち、同島を拠点にするイスラム系テロ組織を経由してイスラム国への合流を画策していたとされる。