日経サイエンス  2013年2月号

特集:サイコパスの秘密

サイコパスの脳を覗く

K. A. キール(ニューメキシコ大学) J. W. バックホルツ(バンダービルト大学)

 サイコパス(精神病質者)の脳の働きを調べてみると,彼らは他人の心の動きを感じたり,感情を示す手がかりを読み取ったり,自身の間違いから学ぶ能力に障害を持つことがわかってきた。サイコパスの脳は普通の人とは違ったやり方で情報を処理している。

 脳の傍辺縁系と呼ばれる場所には,感情や感覚,情動上の意味を経験に対応させる領域があるが,サイコパスは,こうした脳の領域が十分に発達していない傾向がある。情動面の発達を損なう学習障害を患っているようなものだ。

 サイコパスは「治らない」ものであるとされてきた。一般に,サイコパスはグループ療法のような標準的な治療のあとには,良くなるどころか,反対に悪くなる。ところが最近,サイコパス的な傾向を持つ手に負えない少年犯罪者を改善する,新たな精神療法が登場して期待を集めている。

 

 

再録:別冊日経サイエンス191 「心の迷宮 脳の神秘を探る」

著者

Kent A. Kiehl / Joshua W. Buckholtz

キールはニューメキシコ大学の神経科学者で,精神疾患の治療法を進歩させることに専心する非営利組織マインド・リサーチ・ネットワークの主任研究員。バックホルツは,バンダービルト大学神経科学科の博士課程の学生で,そこで遺伝的な危険因子が人々にどのようにして反社会的行動や依存症の問題を生じやすくさせるのかを研究している。

原題名

Inside the Mind of a Psychopath(SCIENTIFIC AMERICAN MIND September/October 2010)

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