<日本ハム3-0西武>◇13日◇函館

 ド迫力に、豪快に節目を飾った。日本ハム大谷翔平投手(19)がプロ入り最速158キロをマークし、プロ初完投&初完封勝利を飾った。初登板だった函館で西武打線を圧倒。6安打9奪三振の力業でねじ伏せた。屋外で最大瞬間風速16・4メートルの強烈な追い風の後押しを受け、自己記録を1キロ更新。今季4勝目を挙げ、1年目の昨季3勝を上回った。二刀流で迎える2年目の進化を証明する躍動は、勢いを増すばかりだ。

 喜怒哀楽があふれた。大谷が感情をむき出しにしながら、独り舞台を仕上げた。初めて立つことを許された最終9回、2死一塁。代打米野の打球が襲った。グラブをはじかれたが、三塁手・飯山が好カバー。27個のアウトを、やっと積み上げ切った。プロ入り初完封。ハイタッチするため先輩チームメートをマウンドで待った。

 無心のハイテンションだった。何度もガッツポーズした。珍しくほえ、時に頭上に両腕を掲げ、拍手までした。プロ入り最多126球。人知れず、驚異の1球が生まれていた。1点リードの5回2死一、二塁。木村へのカウント1-2からの4球目だった。「どんなボールか覚えていない」。真ん中、やや外寄り直球で一ゴロに切った。球速表示がない球場。「パ・リーグTV」の計測でプロ入り最速を1キロ更新する158キロをマークしたことは、4勝目をつかんだ後に知った。

 1回、左かかとを地面に引っ掛けボークとなった慣れない屋外球場で、「後ろから前に」と感じた追い風が味方になった。最大瞬間風速で16・4メートル。「投手有利の日。僕の直球は走る」と冷静に読み、155キロ以上は14球を数えた。岩手で生まれ育ち、函館は北海道の南に位置する地方都市。どことなく育った東北地方に似ているとされる。花巻東3年夏、雰囲気が近い岩手県営で自身最速160キロ。プロでは試合中に時折、目をやるスピード表示がなく、目の前の勝負に集中した。

 直球とスライダー主体で9回まで押し切った内容に、栗山監督は、またステップアップしたと力説した。「高校時代も1試合の作り方が…、(課題)だったからね」。アマでは未完成だった投手としての成長度をこの日、証明した。ナイター登板翌日の早朝に、憧れの大リーグ中継に見入ることもある永遠の野球少年。夏場にかけて米球団の幹部級が大挙して来日。進化の過程を視察するとの情報もある。豊かな未来が待つ予感は、さらに増した。

 大谷

 長いイニングを投げたいと思っていたけれど、やっと投げられたことがうれしい。次につながる。

 はしゃがず、躍らず、自分を保つ。道半ばの前人未到の挑戦がある。サプライズを振りまきながら、誰も見たことがない世界を切り開いていく。【高山通史】

 ▼大谷がプロ初完封で4勝目を挙げた。今季は野手で18試合に出場し、投手で6試合に登板。野手、投手の両方で先発している「二刀流選手」の完封勝利は71年外山(ヤクルト)以来、43年ぶりだ。71年外山は6月18日阪神戦と7月29日中日戦で完封勝利を挙げ、投手で33試合に登板、野手で41試合に出場した。大谷は現在19歳10カ月。10代投手の完封勝利は今年の5月7日浜田(中日=19歳9カ月)以来で、日本ハムでは07年7月12日吉川(19歳3カ月)以来、7年ぶり。