<レッドソックス6-9オリオールズ>◇6日(日本時間7日)◇フェンウェイパーク

 レッドソックス-オリオールズ戦で、両軍の野手が投げ合うという、87年ぶり珍事が起こった。延長16回、オ軍は指名打者(DH)クリス・デービス内野手(26)が9番手で登板し、2回2安打無失点で勝ち投手に。レ軍は17回から登板した外野手のダーネル・マクドナルド(33)が3ランを浴び、負け投手になった。野手がいずれも責任投手となるなど、珍記録のオンパレードだった。

 引き分けがないメジャーで、延長17回の熱戦にドラマがあった。昨年、レンジャーズ上原の交換トレード相手だった26歳内野手が、緊急登板。強打のレッドソックス打線を2回2安打無失点に抑え、勝利投手になったデービスは「幸せな気分だよ。打つ以外の仕事をできるとは思ってもみなかった」。8打数無安打と散々だった本業の打撃を忘れさせる快投で、まさかの“メジャー初登板初勝利”に笑うしかなかった。

 野手同士の登板は1925年、殿堂選手のタイガースのタイ・カッブ、ブラウンズのジョージ・シスラーが投げ合って以来。87年ぶりの珍事は、両軍とも登板可能な8人の投手を使い切り、野手を起用せざるをえない状況で生まれた。ともにDHで出場中だった2人が、マウンドに上がった。

 デービスは6年前の短大時代の投手経験を生かし、最速145キロの直球とチェンジアップでピンチを脱した。16回裏から登板。2死一塁で二塁打を許したが、一塁走者の本塁憤死でサヨナラ負けを逃れた。3点を勝ち越した17回裏にも無死一、二塁と追い込まれながら、昨季リーグ打率2位の4番ゴンザレスを空振り三振、5番マクドナルドを遊ゴロ併殺に打ち取った。屈辱の3球三振を喫したゴンザレスは、悔しそうに無言で球場を引き揚げた。

 最後の打者となり「思っていた以上にいい球を投げてきた」と認めたマクドナルドが、投げ合った相手だった。実は昨年アスレチックス戦でも登板しており、松井(レイズ)を二ゴロに打ち取るなど1回2失点だった。経験を買われて17回表から出番。2四球の後、4番ジョーンズに決勝3ランを許し「ハードワークだった」と落胆した。

 左翼特大フェンスの名物グリーンモンスターを越える1発を、野手から放ったジョーンズは「不思議な感じだったが、我々にとって大きな勝利だ」と胸を張った。敵地フェンウェイパークで94年以来の同一カード3連勝を決め、5月以降では7年ぶりとなる首位に浮上。野手が投げるという条件は同じでも、近年の低迷を吹き飛ばす好調チームに、勝利の女神も味方した。

 6時間7分の総力戦に敗れたレ軍バレンタイン監督は「別のオプションもあった」と強がった。前日3回1/3を投げた中継ぎ投手がベンチに残っていたが、無理はさせられなかった。先発バックホルツが4回途中KOされ、負担がかかったブルペンのダメージは大きい。「みんな限界まで投げてくれた。明日は誰が投げられるか、わからないよ」と疲労感を隠せなかった。