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資料5

これまでの主な意見の概要

1. 高等専門学校教育の現状と評価
(1) 現状
(5年一貫の実践的教育)
 5年一貫の技術者教育を担う本科を削減し、専攻科を増やすのであれば5年一貫課程による完結した技術者育成の意欲が薄れてしまうのではないか。この点について、これまでの高専教育の評価からどう見るか再検証が必要。
 人格教育も含め高専教育は5年一貫教育というところが一番重要。エンジニアである前に人間力−人格形成が重要。高専では課外活動参加率も高く、場合により高校よりも高い(85パーセント以上という高専も)。
 高専の特徴は準学士課程。15歳の柔軟な頃から技術者としてのトレーニングができる点が、ほかでは絶対にまねができない強みである。
 大学は3,4年生で工学の基礎を行うが、高専の準学士課程ではそれはほとんど済んでいる。
 使いこなしの徹底指導ができるのが高専と大学の大きな違い。大学ではこれはマスターコースで実施する。若い頭に実践的な技術力を身につけさせることができるという点が高専の長所。
 高専の特徴は、高大一貫教育であるため、大学受験のへこみがないこと。

(少人数教育、寮生活等を通じた全人教育)
 高専出身者は様々な事象に対処する知恵を相対的に高く持っている。これは、中学時代からの目的意識と少人数一貫教育や寮生活による。このような点が人格形成に寄与していると思う。

(2) 評価
(高い求人倍率)
(幅広い分野で活躍する人材(今後のイノベーションを担う人材)を輩出)
 受験を経ていい大学を卒業してきた者は、言われたことはうまくやる。高専出身者はルーティーン業務は、場合により必要なのかといろいろ工夫する能力を持っている。
 ロボコンを見ると、大学生のものより高専生のものの方がずっと面白い。
 高専出身者の高い評価が、高専教育のどこから来るものなのかを踏まえた検討が必要。
 高専は実験を多くやっており、すぐに使えるところを一生懸命やってきた。逆に、大学に入っても基礎的なところにはあまり興味を持たない。
 高専から大学に編入学した者が大学の教授になっている者はざらに10人はいる。基礎的なものへの興味の有無は個人によって異なるのではないか。
 東北大学在任中は13講座中3講座は高専出身者の教授だった。優秀な学生こそ、エンジニアタイプと基礎タイプとばらつきがあるので一概に言えない。
 工学部出身者と高専卒業生で、地元企業のオーナーになっている割合が異なるというある県でのデータがある。
 以前文部科学省の協力者会議で、理工系人材の創造性を涵養する教育プログラムの事例を集めたことがあった。
 技術者養成を行っているのは高専だけである。人数は少ないが日本が高度成長期に最も必要とした人材を育成してきた。大学は技術者養成か研究者養成かはっきりしない。高専は技術者を育成するという、明確な育成人材像をおいてきたという点が非常に特徴的。
 日本は大学院重点化を行ったところは、学部は通過点で、修士でそれらを行えばよいということになっている。その点高専は工科系に関しては一番しっかりしたエンジニア教育を行っており、その位置づけを明確にしていけば、存在意義も非常に明確になっていく。

(地域の人材育成において重要な役割)
 認証評価の結果が出ているが、ものづくり教育や地域への科学技術の貢献で高専が目立った特色を持っている。
 東京高専がある八王子地区には特色ある企業が多いが、後継者をどう育てるのかが重要。

(企業、卒業生の意識)
 マスターを取得した高専出身者は優秀な者が多い。
 企業からの立場で見ると、高専出身者は非常に礼儀正しく協調性がある。一般に社会人として即戦力というのは有り得ないことで、数年して伸びる人は協調性とやる気のある人。高専出身者はこの点が優れている。
 卒業生へのアンケートでは、高専時代に学んだ知識自体は必ずしも役に立たないという意見が比較的多いが、知識は忘れたが方法論が知恵として身についているということだと思う。
 日立では新卒の8〜9割が修士終了、30歳位で主任となるため、基礎を学ぶ時間がない。高専修了者の場合、20歳で入社で10年学べる。
 製造と言うと、「設計」「製造技術」「品質管理」があり、どうしても設計に目が行きがちだが、「製造技術」「品質管理」も不可欠であり、ものを実際に作りながら学んで来た高専卒業生に期待している。
 我が社では高専出身者は大卒と同じ給与体系。
 入社してから伸びる人間は知識よりもモチベーションの高さが必要であり、この点で高専についてはいうことはない。
 本科卒業5年後アンケートの中で、再度中学生になったら高専を受験するという学生は46パーセント、普通校が48パーセントとのことであるが、これは高専卒は優秀であるということを社会全体がそのように評価していないため、卒業生が高専を良かったと思わないのではないか。
 サイエンスはおもしろいというバックボーンがないまま、工業高専は就職率が高いからということで入学してきた学生がいるのではないか。そのような学生は根っこに、バックボーンとしてビルトインされておらず、高専の勉強に必ずしもついていけないので、高専に不満をもつのではないか。
 短大の九州地区でも卒業生アンケートを行っており、そこでももう一度同じ学校に行きたいという意見が思いのほか多い。よって高専の46パーセントという数値が一概に高い数値とは言えないのではないか。結局、高専を知っている人からは評価が高いということになり、それならばもっとPRして認知度を高めればよいかというとそうでもないようである。大学との差別化だけでなく、専修学校との差別化も考慮に入れる必要があるのではないのか。
 卒業5年後アンケートで高専に再度入学したいという者が46パーセントだったことについて、例えば兄弟に高専生がいるというような入学生もいて、このような一種のリピーターも多い。
 再度高専に入学したいという卒業生が46パーセントであるということについては、少し低い数値であるという印象。高専卒業生のそうした数値は、社会的な認知度が今ひとつということと、処遇的な問題ということが、不満の原因としてあるのではないか。

2. 高等専門学校が直面する課題
(1) 社会経済の変化に対応した新たなニーズへの対応
(科学技術の高度化、2007年問題への対応、科学技術創造立国の実現)
 IMDの国際競争力調査では、日本は科学技術はトップクラスだが、その技術を使って社会を変えていくことが遅く、この両者にギャップがある。
 処遇面について、日本では国際競争をしている企業は2割くらいで、それらの企業は能力主義を採用しているが、残りの8割の企業はいまだに年功序列型である。だから2007年問題のようなことが起こっている。今後、このような年功序列は必ず崩れていくと考えている。
 卒業生が不満に思っていることの理由としては、処遇が影響しているのではないか。高専卒業生は仕事をする能力が高く、大学卒と同じくらいの仕事をしているのに、短大卒と同じ処遇であるというようなことがあるのではないか。

(2) 入学者の質の確保
(15歳人口の減少(入学志願倍率の低下)、理科への関心の薄れ)
 中学からいい学生を取ることの方が課題。入り口の競争力が迫られている。
 中学生の数は減少する一方、本科の定員は変わらないので学力は相対的に下がってきている印象。他方、工業高校としては、高専に優秀な生徒を取られているが、昔はもっと優秀な生徒がとられていた。
 同世代の中での高専志願率は比較的一定。他方15歳人口の絶対数が減少する中、間口がこのままでいいのかという課題はある。
 中学生の国際学力調査の結果では、学力の低下よりも深刻なのは「学校の勉強がわかるか、面白いか」という問いに対し日本では「面白い」と答えた者が3割しかいなかったこと。本来サイエンスは面白いもの。他方、中学の教員が調査や部活指導で忙しくて教材研究が出来ず、面白い授業の研究ができない。初等中等教育の理科教育が重要であり、それを改善すれば結果的に高専への進学も増える。

(3) 進路の多様化
(進学率の高まり、進路の多様化)
 本科・専攻科の進路では、都立高専の場合城南地域を中心とする中小企業への人材育成の要請があるが、実際は大企業への就職が多くなっている。専攻科のような複線的な進路も必要だが本科教育も特に重要。
 昔は技術科学大学には高専のトップ層しか入ってこなかった。今は各大学も編入学定員を増やしていることもあり、入ってくる学生は中位までになってきている。大学としてはある意味危機感を感じている。
 少なくとも編入学の受入人数が少ない大学では高専出身者はどこも評価は高い。他方、進学者数が多くなったことにより以前と比べると様々な課題があることも事実。
 最近、工学分野以外に進路変更を希望する学生が少ないながら存在する。中学卒業時にはあまり進路選択について考えずに高専に入学することもあり、高専の中では進学分野の選択肢が限られてしまい、この点でメディア系学科は変更し易い分野と入ってくる学生もいる。優秀なトップ層でない学生にも議論の焦点を当てる必要がある。
 学力の広がりは高専でもないわけではない。また15歳の段階で進路選択して入ってきているので、途中で方向が変わって来るのは当然であり、それを前提に柔軟な進路変更を可能とすることも必要。
 専修学校と高専は全く違う。高専にとって専修学校は競争の対象ではない。専修学校では高専の内容を行うのは無理。専修学校との差別化より、名称が「専門学校」となっているため、この点での差別化が必要。

(4) 行財政改革の進展

3. 今後の高等専門学校教育の在り方
(1) 高等専門学校が果たすべき役割
育成する人材像
 高専が育てるのは技術者であり研究者ではない。しかし技術は学校だけでは育て切れず、高専はこの点でインターンシップを行い、地域で学生を育てようとしていることも大学とは異なる特色である。「品質管理」「製造技術」を教え込めるのは高専ならではである。
 「学問」は教え易いが「技術」は現場でしか教えられない。本科では学問の基礎を学びエンジニアの卵となり、専攻科では、本科教育を元に複合的な幅の広い知識を使いこなせることを目指している。
 工業高校では、15歳から匠を教えようとしている。高専と異なるのは会社における役割と進路。工業高校卒は技能で評価され、高専卒は技術を期待される。
 高専制度が世界的にもユニークなのは、中等教育と高等教育がまたがる点。人格教育も大事にしてほしい。
 企業からみて、一般論としては、業種により求められる専門知識は異なる。何を専門とするかが問題ではなく、それを背景とする創造力が必要。かつての大量生産に関する技術や、それにより果たされる役割は中国に移っている。それよりも創造力が求められる。
 「研究開発」「設計・製造」「品質管理」の分野のうち、製造から設計部分はアジアに移転している。このため技術分野は高度なものが必要であるが、大学では難しい。
 本科5年間、本科プラス専攻科7年間でそれぞれ高専が育成する人材像の検討が必要。日本の教育体系全体の中で大学は各界のリーダーの育成を目指すとしたら、高専が養成する人材はどのような実践的技術者なのかを明確化すべき。
 卒業生は大企業への就職も多いが、これからの卒業生は地域における特色あるベンチャー企業の担い手の役割も果たしてほしい。単なる歯車ではなく、技術、経営センス、人間性を兼ね備えた技術者の養成もこれからは必要。
 今は知的基盤社会の中で新しいイノベーションを継続的に起こしていかなければ日本の将来はない、ということが議論されており、今後は新しい種類の技術者を育成していかなければならない。そのような状況の中で、高専をどのように位置づけていくのか、即ち高専としての独自性をどこに求めるのかということが重要な課題である。
 大学と高専をどのように切り分けるのか。あるいは大学を凌駕するような教育を高専で行うのかを明確にする必要がある。
 高専の学生には、ソフトや機械をうまく作るということだけではなく、コミュニケーション能力や指導力を身につけさせることが必要である。

(2) 質の高い入学者確保
質と量のバランス(地域性も踏まえ)
 高専から大学に編入学してくる学生の質の問題は、学生の母体が減っている中でどのように質を確保するかと関連している。このため、大学では編入学定員を減らすことも考えないとならないかと考えている。
 中学卒業生の高専への進学率は1.6パーセントというのが現状であり、こんなことでは科学技術創造立国とはいえない。工業高専は教員が足りない。そもそも工業高専は求人倍率が15倍も20倍もあるのだから、もっと工業高専を増やすべきである。

中学生や保護者へのPR
 高専があまり知られていないという課題はあり、高専を選んで来る学生は親や親類に高専出身者がいる者などが多い。中学生や小学生に高専のすばらしさを教える機会が必要。
 高等学校の特色づくりが進む中、ややもすれば高専の特色が伝わっていない。いかに中学生に広報しているか。その過程で選抜方法の工夫も考える必要。
 高専の理解について、最終的には保護者にいかに訴えていくかが課題。またマスコミでも工学部離れなど負の部分ばかりが焦点が当たる。一般国民にどう訴えるかが課題。

(3) 高等専門学校教育の充実
1 組織体制
社会経済の変化に対応した学科等の再編

専攻科の位置づけ、充実
 専攻科の捉え方について、「高度なものづくりをやらせる」という意識が高いとうまくいく。
 高専から専攻科に進むか3年次編入に進むかは各校により異なる。カリキュラムの連続性という面では、本課と専攻科は整合性が取れているが、3年次編入では重複があり、技術科学大学ではその中間。
 専攻科については創設以来ずっと伸びてきているが、いつかは一定になるということか、また設置する際に一定のコントロールをしているのか。
 国立高専については、高専機構の中期計画において本科入学定員のの1割程度と設定。
 準学士課程での教育を最もうまく生かす課程が専攻科であり、例えば準学士課程から大学へ行くと、授業科目が高専の科目と重複してしまうことなどがあるが、専攻科であれば全くロスなしにエンジニアを育てる体系をつくれる。
 現在は技術の複合化が進んでおり、その複合化まで準学士課程でこなすのは難しいので、専攻科を拡充して学士水準の技術者を育て、ここで育てた人材が開発型中小企業の中核を担う人材となり、これからの日本の産業を支える基盤となる。技術士をもった博士の育成は他にお任せし、専攻科できっちり基盤をつかんだ学生たちには、その基盤をベースにして、修士や博士を目指せる人はめざせばよい。
 本科で床柱をしっかりつくり、根を張ってもらい、専攻科で少し枝葉をつける。そのような技術者を輩出したい。このような技術者教育というのは、大学ではできないことである。
 専攻科の2年間では、大学学部との差を広げる教育が重要である。
 分野の複合化に対応するためには専攻科における教育が向いており、高専本科卒業生の半分が進学するという中で、専攻科の入学定員を本科の入学定員の25パーセントとすることを目標にしたい。

2 教育内容・方法等の充実
産学連携による教育の充実(共同教育の充実、インターンシップ等校外で行う教育の充実)
 インターンシップについて、個々の企業にとって高専生を受け入れることにどのような良い点があるのかということも考えていかないと、いざ企業に「受け入れてください」と言っても難しい。長期間のインターンシップを実施する仕掛けが必要である。
 企業の方と話すと、インターンシップでは3〜4ヶ月まとまって来てほしいという要望がある。これくらいの期間があれば戦力として期待できるので、企業にも学生にもメリットがあるということを言われる。
 カナダでは親に頼らずとも長期インターンシップの手当のみで学部を卒業できる。企業、自治体は次世代のエンジニアを一緒に育てるメリットがあり、また当然の義務であるというコンセンサスが形成されている。このようなことは一朝一夕でできることではないが、我々も進めていかなければならない。
 インターンシップについては、豊橋技術科学大学も長岡技術科学大学も、開学時から国内なら4ヶ月半、海外なら6ヶ月くらい実施している。これは高専卒業後技科大へ編入学して修士までの4年間の一貫教育でなければできない。社会的にも高い評価を得ている。
 インターンシップの実施方法については、高専の立地条件によってだいぶ異なる。中小企業は学校に入り込んで一緒に考えることができるが、大企業ではそれはできない。

その他教育内容・方法等の改善・充実
 15歳の脳には適切な教え込みと発達の過程が必要で、それを「勝手にやれ」といってもうまくいかない。ある程度のキャリアパスで指導が必要。高専は教えたり、わからなくてもどったりといった、内容のスイッチバックをしながらの指導をしている。大学は出来ていることが前提の指導をせざるを得ず、この点で、専攻科は(大学との対比において)学びなおしが利く仕組みである。
 教育心理学の分野で「熟達曲線」という用語があるが、高専教育システムはそれにフィットしている。
 高専から大学へ編入学する者は概して優秀。高専教育では、卒業研究が効いている。座学でなく身についた知識が、大学に編入学した後も研究ですぐに応用できる。
 高専から大学を志向するのか、高専教育で完結型を目指すのかであるべき教育内容は異なってくる。
 進路の転進の機会の確保も必要。例えば高専から芸大に進学した者もいる(デザイン系)。
 学生を満足させるためには、ホームルームやキャリア教育など、教育の仕方に工夫が必要。また、教員の質についても重要であるが、教育手法の改善によってある程度解消できるのではないか。

3 多様な学生への支援
 国立高専は授業料は大学の約半分。このため経済的に恵まれない学生が1〜2割いることも事実だが、この点でも一定の役割はある。

(4) 高等専門学校教育の発展
財政的支援(民間資金等も含む。)の在り方
 高専卒業生への求人倍率が16倍とは大変な数字。出口の観点からは、もっと高専を増やすことも考えられないか。技術革新に必要なの先行投資はものでなく人間。教育投資が必要。

高等専門学校制度の活用を検討する地方公共団体等への支援の在り方

地域との連携の強化

高等専門学校の認知度向上方策


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