JFA|日本サッカー協会  Japan Football Association
JFAへの登録リンクENGLISHRSS
天皇杯全日本サッカー選手権大会
チーム紹介(都道府県・大学代表) 
北海道/ 札幌大学 青森県/ ヴァンラーレ八戸FC 岩手県/ グルージャ盛岡 宮城県/ ソニー仙台FC
秋田県/ ブラウブリッツ秋田 山形県/ 山形大学 福島県/ 福島ユナイテッドFC 茨城県/ 流通経済大学
栃木県/ 栃木ウーヴァFC 群馬県/ アルテ高崎 埼玉県/ 東京国際大学 千葉県/ 順天堂大学
東京都/ 東京ヴェルディユース 神奈川県/ Y.S.C.C 山梨県/ 玉穂フットボールクラブ 長野県/ 松本山雅フットボールクラブ
新潟県/ JAPANサッカーカレッジ 富山県/ 富山新庄クラブ 石川県/ ツエーゲン金沢 福井県/ サウルコス福井
静岡県/ HondaFC 愛知県/ 中京大学 三重県/ 四日市大学 岐阜県/ FC岐阜SECOND
滋賀県/ MIOびわこ草津 京都府/ 佐川印刷SC 大阪府/ 大阪体育大学 兵庫県/ 関西学院大学
奈良県/ 奈良クラブ 和歌山県/ アルテリーヴォ和歌山 鳥取県/ 米子北高校 島根県/ デッツォーラ島根E.C
岡山県/ 環太平洋大学 広島県/ 佐川急便中国SC 山口県/ レノファ山口 香川県/ カマタマーレ讃岐
徳島県/ 徳島ヴォルティス・セカンド 愛媛県/ 愛媛FCしまなみ 高知県/ 高知大学 福岡県/ 福岡教育大学
佐賀県/ 佐賀大学 長崎県/ V・ファーレン長崎 熊本県/ 熊本学園大学付属高校 大分県/ HOYO Atletico ELAN
宮崎県/ ホンダロック 鹿児島県/ 鹿屋体育大学 沖縄県/ FC琉球 大学/ 駒澤大学

北海道/ 札幌大学

 天皇杯北海道予選を兼ねた平22年度第28回知事杯全道サッカー選手権大会決勝で、初優勝を狙うコンサドーレ札幌U-18を2-0で退け、5年ぶりの12度目の優勝を果たした。北海道勢では最多となる21度目の天皇杯切符を手にした。
 1967年の開学と同時に創部。総理大臣杯全日本大学トーナメント道大会で22度の優勝を誇る、道内大学サッカー界屈指の強豪校だ。70年代には国内大学では初となるブラジルのサッカー留学生を招き、全国大学選手権で4強(76年)、天皇杯全日本選手権で8強(78年)など輝かしい成績を残している。
 指揮を執るのは、Jリーグのコンサドーレ札幌でも活躍した古川毅監督(37)。京都パープルサンガのユースコーチを経て、昨年3月に招聘(しょうへい)された。
 全国で通用するサッカーを指向する古川監督が選手に求めるのは、「適切なポジショニングと適切な判断」。ボールを持っていない選手にも、常に効果的な位置取りの意識を徹底させ、セカンドボールへの反応や攻守の切り替えの早さで優位に立っている。
 知事杯決勝は連戦の疲れもあり、やや単調なロングボール中心の攻撃となったが、MF西村啓がサイド突破から再三チャンスをつくり、2ゴールともアシストした。
 今大会で西村は得点力のあるFW金田拓也と、スピードのあるFW後藤裕樹とともに攻撃の核となった。東京Vユース出身のGK二甁考太郎の好セーブもあり、大会を通じては無失点と、安定した守備が光った。
 昨年、大きくチーム編成を変えたことも戦力の底上げにつながっている。学生の「札幌大」とは別に、コンサドーレOB選手も交えた学生主体のチーム「札大GP」を発足、社会人の道リーグに参入した昨季は初優勝を飾った。
 今回、天皇杯出場を決めた「札幌大」チームの中には昨季、「札大GP」で活躍した選手も多い。複数チームに分かれたことで「1、2年生の試合経験が増え、相乗効果が出ている」(清原圭介主将)と言う。
 前回出場した2005年の天皇杯は2回戦で敗退。今回は勝ち上がれば2回戦はJ2のコンサドーレ札幌とぶつかる。天皇杯では初めて北海道対決となる。「練習試合でコンサドーレと対戦することはあるが、互いが全力を尽くす舞台で、真剣勝負を挑みたい」と古川監督。前回に続く1回戦突破へ向け、モチベーションは高い。
(北海道新聞)  

青森県/ ヴァンラーレ八戸FC

 平成22年度NHK杯第63回青森県サッカー選手権大会決勝で、昨年の優勝チーム・八戸大に1-0で辛勝。チーム結成5年目で大会初優勝を果たした。 8-0で快勝した準決勝から一転、決勝は、両チームともに決定的なシュートチャンスをつくり出せないまま終盤を迎える苦しい展開だった。しかし、試合終了5分前、味方パスを受けてドリブルでゴール前に持ち込んだFW一戸が、落ち着いてシュートを決め、念願の初優勝をつかんだ。
 チームは地域に根ざしたサッカークラブを目指し、八戸市を本拠地に2006年4月に発足。幼少期から一貫性のある指導体制を確立することで、地域のサッカー技術向上をしようと、U-6から社会人まで6段階のチームがある。チーム名はイタリア語の「デリ『ヴァン』テ(起源)」と「アウスト『ラーレ』(南の郷)」を組み合わせた造語で、「チームの起源は八戸と南郷」という意味が込められている。
 メンバーは県内出身選手が多く、東北社会人リーグ2部北ブロックに所属して5年目。現在は「2016年Jリーグ参入」を目標に掲げており、今年3月には、元湘南ベルマーレ監督の山田松市氏(49)が新監督に就任した。
 山田監督の要求は厳しいが、プロチームを率いてきた監督から学ぶことは多く、戦術も一新し、選手たちの士気はこれまで以上に高まった。リーグでの最高成績は2009年の3位だが、今季は第10節終了時点で2位につけている。新体制になり、成長は著しい。
 得意な攻撃スタイルは、主将のMF新井山を起点とした早いパス回しによる縦の攻撃。新井山はキープ力が高く、攻守のつなぎ役となる選手。普段は物静かだが、「新井山にボールが集まればゲームがうまく進む」と山田監督が話すほど信頼は厚く、プレーでチームを引っ張っている。
 高校3年時に全国高校サッカー選手権でベスト4入りし、大会優秀選手に選ばれたMF小島も、攻守で鍵になる選手。正確性の高い左のロングパスが武器で、右の新井山とともに左右両方から攻撃を仕掛けていく。守備では、元湘南ベルマーレ所属で、今季、FCガンジュ岩手から移籍した長身のDF照井など、競り合いに強い選手が中央ラインを守る。
 「粘り強い守備からチャンスをつくり、攻撃につなげられれば」と山田監督。新井山は「どんどんパスを回して相手を翻弄する自分たちのサッカーで戦いたい」と意気込んでいる。
(東奥日報)

岩手県/ グルージャ盛岡

 炎天下の死闘となった第60回岩手県サッカー選手権大会決勝戦で、FCガンジュ岩手(盛岡市)を2-0で破り、3年連続4回目の天皇杯全国大会出場を決めた。本拠地は盛岡市。グルージャはスペイン語で「鶴」の意味。盛岡藩藩主南部家の家紋が「むかい鶴」で、盛岡名物「じゃじゃ麺」、県内の方言に「じゃ」が多く使われていることにちなんで名づけられた。
 昨年、チームの運営組織をNPO法人から株式会社に移行。盛岡商高で全国制覇を果たした斎藤重信監督をチームアドバイザーに迎えた。誰もが認める本県のサッカー界トップチームで、県内各地でのサッカースクールなどを通じた普及活動や地域貢献にも積極的に参画している。
 チームは東北社会人リーグ1部に所属し、昨季までリーグ3連覇中。今季は僅差の2位(8月31日現在)で、首位福島ユナイテッドFCを激しく追っている。リーグV4とJFL昇格を目指し、過密な試合日程の中、奮闘している。
 チーム内競争活性化を狙い、今季はJ2・千葉のGK島津虎史、徳島のFW菅原康太をはじめ、全ポジションを補強した。
 攻撃の中心は東北社会人リーグ2季連続得点王・FW加藤浩史。今季前半は故障で出遅れたが、鋭くスペースを突く動きは健在。新加入の長身FW佐藤佳成、菅原康太らとの連動もスムーズだ。両サイドからもキャプテンのDF中田洋介らの突破や精度の高いクロスが相手ゴールを脅かす。
 一昨年の天皇杯全国大会で県勢悲願の初勝利を挙げたが、昨年は初戦敗退。全国大会に向けて吉田暢監督は「攻撃の決定力」と「守備の集中力」を課題に挙げ、チームのレベルアップへ「是非Jのチームと戦いたい」と闘志を燃やす。
(岩手日報)

宮城県/ ソニー仙台FC

 先月29日。仙台市泉区のユアテックスタジアム仙台で行った河北杯・NHK杯争奪第14回宮城県サッカー選手権決勝で、東北社会人リーグ1部のNECトーキンを4-0で下し、5年連続13度目の全国大会出場を決めた。
 決勝からの登場で、前半は相手の積極的な攻めに手こずったが、後半に運動量が落ちたのを見逃さず、サイド攻撃から次々と得点を重ね、最後まで攻めの姿勢を続けて完勝した。
 基本布陣は4-4-2。堅い守備からボールを奪い、サイドを中心につないで得点を狙う。
 守備では谷池と山田が組むセンターバックを中心に、JFL後期6試合終了時点で失点数が25とリーグで4番目に少ない。橋本と斎藤の両サイドバックも惜しみなくサイドを上下する。
 攻撃は今季チーム得点王の町田と、Jリーグ1部(J1)のベガルタ仙台から期限付き移籍中の大久保のツートップが軸。特に大久保はNECトーキン戦で2ゴールを挙げるなど好調ぶりを発揮している。
 チームは、1968年にソニー仙台サッカー同好会として設立。現在はコーチ兼任を含む29選手が、宮城県多賀城市のソニー仙台グラウンドで練習を行う。 
 所属する日本フットボール(JFL)には1999年の設立時から参加。昨年は17勝8分け9敗で、この年J2に昇格したニューウェーブ北九州(現・ギラヴァンツ北九州)を上回る、チーム史上最高の3位に入った。
 しかし、念願の初優勝を目標としていた今季は、開幕4試合で3勝1分けと好スタートトを切ったが、レギュラーに相次いでけが人が出る不運に見舞われる。
 スタメンが固定できない中、前期5節から9試合連続未勝利などもあり、現在の順位は18チーム中12位。不本意な成績だが、田端監督が「多くの選手が試合経験を積む機会になった」と話すように、山田やMF麻生など若手が成長してきたのが好材料だ。
前回大会は、2回戦でJ1大宮アルディージャに2―4で敗れた。今年は3日の初戦で福島ユナイテッドに勝利すれば、2回戦で同じ宮城県に本拠地を置くJ1ベガルタ仙台と対戦する。 
 全国大会に向け、田端監督は「J1チームと対戦するまで頑張ろうと言ってきた。自分たちの力がプロにどこまで通用するか楽しみ」と抱負を語った。
(河北新報)

秋田県/ ブラウブリッツ秋田

 第20回秋田県総合サッカー選手権大会決勝で、秋田FCカンビアーレに6―0と快勝し、初優勝で天皇杯全日本選手権大会出場を決めた。チームは1965年、企業チームのTDKサッカー部として創設。1982年より東北社会人リーグに加盟し、2006年、JFL(日本フットボールリーグ)に昇格した。経営環境の悪化による同部の廃部に伴い、2010年の今季より、北東北初のJリーグチームを目指すクラブチーム「ブラウブリッツ秋田」へと移行した。そのためクラブチームとしてJFL参戦も今季が1年目。同部時代は、8年連続16度、同選手権出場経を果たしていたが、ブラウブリッツ秋田としては初出場となる。
 チームは「攻撃的なサッカー」を攻守に渡り、身上に掲げる。ピッチに立つ選手の全体的な位置取りをできるだけ前にし、相手陣地でできるだけ長くボールを持ち、攻撃する展開を目指す。守りでも、積極的にプレスをかけ、相手が自由にボールを扱える時間を短くし、攻守の切り替えの早いサッカーを披露する。攻撃は両サイドを広く使ったスピードのある攻めと中央を大胆に突破する展開の使い分けが軸。サイド攻撃では、MF池田、今井らがサイドを駆け上がり、精度の高いパスを中央に供給。得点機には、ボールを受けとったJFLで現在得点王のエースFW松田が高い身体能力を見せ、ゴールを量産しチームを引っ張る。主将を務めるFW横山も試合の流れを読んだプレーでゴールを決める。MF眞行寺、千野の2人も高いキープ力で中盤を支え、敵陣に攻め込んでいく。GK小野は後方からチーム全体の流れを見渡し、適切な指示飛ばして守備をコントロール。守備陣はDF井上、岩瀬らが体を張った守備と運動量でボールを奪い、前線にボールを供給していく。
 ブラウブリッツ秋田として初めて臨む天皇杯全日本選手権大会は、Jリーグ入りを目指し、日々しのぎを削るチームにとって、「J」のチームに挑み、実力を試す絶好の機会でもある。横山博敏監督は、「勝つことで盛り上げたい。楽しめる内容と結果を出したい」と初戦を勝ち上がれば対戦が可能なJ1チームの撃破へ向け抱負を語った。
(秋田魁新報社)

山形県/ 山形大学

 第14回山形県サッカー総合選手権大会の決勝で、日大山形高校を1-0で下して、2年ぶり4度目となる天皇杯出場を果たした。
 2006年に県総合選手権を初めて制してから3年連続で頂点に立った。しかし、4連覇を狙った去年の決勝では、1-0からFCパラフレンチ米沢に後半に追い付かれ、PKで涙を飲んだ。その教訓を生かした今回の決勝。日大山形高に1-0とリードした後、巧みなゲーム運びでリードを守って再び天皇杯出場を手にした。
 現在の部員は約40人。山形県を中心に東日本各地の出身者が所属する。東北地区大学サッカーリーグ1部で、6月の東北地区大学体育大会はベスト4。山形市の小白川キャンパスだけでなく、米沢市の米沢キャンパスで学ぶ遠方の選手らもおり、時間を合わせて練習に励む。現在、監督は選手が兼ね、学生たちだけで練習メニューを考え、練習対戦相手を電話で探してレベルアップを図る。天皇杯予選も学生同士の話し合いで戦術を練り、選手交代を含めてゲームを運んできた。主力の4年生が就職活動などで決勝以外はベストメンバーがそろわなかったが、3年生以下が力を発揮し、準決勝まで力強く戦った。
 サイド攻撃とセットプレーを主体に好機を探る。準々決勝の羽黒高校戦ではハットトリックを記録したFW佐藤承と、監督を兼ねるFW鈴木達也のほか、前線にパスを供給するボランチ中村啓一郎が得点の鍵。守備は長身のDF高沢大樹と近江央基が体を張って守る。チームは2008年まで3年連続で天皇杯のピッチを経験。だが、いずれも初戦敗退を喫しており、今年こそ1回戦突破に向けて意気込む。「1、2枚上手の相手ばかり。スタイルを変えてでも勝ちにこだわりたい。山形の代表として応援してもらえるように戦う」と鈴木。主将橋本健秀は「格下の自分たちだから挑戦者として必死にプレーしたい」と抱負を述べる。
(山形新聞)

福島県/ 福島ユナイテッドFC

 平成22年度 福島民報杯 NHK杯 第15回福島県サッカー選手権大会決勝でバンディッツいわきを4-1で破り3連覇、3年連続の出場を果たした。
 2002年に10代から20代の若者が集まり、Jリーグを目指す「福島夢集団」を設立。2004年にJリーグを具体的に目指す活動のため、まったくのゼロから「福島夢集団JUNKERS(ユンカース)」を設立。同年、福島県社会人サッカーリーグ3部リーグに加盟。2005年に県社会人リーグ3部リーグ(西ブロック)で優勝。2006年には同2部リーグで2位となり県1部昇格を決めた。2007年、東北地区社会人リーグ2部南ブロック2位となる。2008年㈱フクシマスポーツマネジメントを設立。「福島ユナイテッドFC」が誕生。今年2月、前ファジア―ノ岡山FC監督の手塚聡氏が監督に就任。8月には、第46回全国社会人サッカー選手権東北予選会を突破、2年連続の全国大会への出場権を獲得するなど好ゲームを展開している。“福島にJリーグチームを”の夢をかなえるまで歩みは止まらない。
 チーム名は、「UNITED=ひとつになる」の意味に由来し、チーム・選手・スタッフ・サポーターが“ひとつ”になって活動していく、福島が“ひとつ”になって福島の発展・活性化のために活動していくことを目指している。
 今大会の決勝を振り返り、「自分たちのサッカーをすれば必ず結果はついてくると思っていた」。主将のDF金基洙は誇らしげに勝利の余韻をかみしめた。攻守で安定感を見せた福島ユナイテッドFCは、1ゴール3アシストとすべての得点に絡む活躍を見せたFW小林のアシストでFW村瀬がロングシュートを決め先制。その後もMF山本のサイド突破で再三好機をつくり、計25本のシュートを放ち、素早いパスワークやドリブル突破でも主導権を握り続けた。
 昨年の天皇杯では格上のJ1(当時J2)セレッソ大阪を破る「ジャイアント・キリング」で全国を沸かせた。手塚監督は「今年も1試合でも多く戦いたい」と意気込む。一歩一歩近づきつつあるJリーグ入りに向けて、全国の舞台で再び「福島ユナイテッドFC」の名をとどろかせるつもりだ。
(福島民報)

茨城県/ 流通経済大学

 毎年多数のJリーガーを輩出し、今や関東の雄として名高い流通経大。今年は決勝で同県のライバル筑波大と対戦し、2点のビハインドをひっくり返し3―2で大逆転勝利を収めた。本大会は5年連続7度目出場となる。
 だが中野雄二監督は今季、はがゆい思いを抱えながらチーム作りに取り組んでいるという。「個々に能力の高い選手はそろっているが、例年に比べてチーム力が落ちている」。言葉通り3連覇を狙う関東大学リーグは前期日程を終えて10位。W杯日本代表サポートメンバーのDF山村和也(3年)やU-20(20歳以下)日本代表のDF比嘉祐介(同)らを擁しながら、早くも優勝が絶望的な状況となっている。
 ここ数年のチームとは中盤の構成力で見劣りし、攻守のバランスが安定しない欠点はある。ただ、中野監督が指摘するのは根本的なメンタル面だ。「ウチは1軍以下もJFLや社会人リーグに出させて、公式戦を戦える経験を大切にしてきた。だが、試合が多くなると練習は調整が増える。そういう環境に選手が慣れてしまい、日頃の練習から自分を追い込むことができなくなってきた」。今季の関東リーグ戦は勝ち切れない試合が多く、山村も「自分たちには精神的なタフさというか、勝負強さが足りない」と認める。
 「今までの方針を変える時期にきているのかもしれない」。指揮官は4月から連日のように2部練習を敢行。8月中旬の夏合宿では3部練習で体をいじめ抜いた。天皇杯予選中もスタイルは変えず、準決勝当日は学校で通常トレーニングを行った後、試合会場入り。公式戦数はそのまま、格段に増えた練習量をこなす中で、中野監督は「選手がどれだけたくましくなるか」と期待を寄せている。
 そういう意味で、天皇杯予選決勝の逆転勝利が大きな自信となったことも確かだ。2点を先行されながら粘り強く反撃をうかがい、後半ロスタイムにFW武藤雄樹(4年)が劇的な勝ち越し点。この試合、中野監督は後半途中にペナルティエリア内での明らかなハンドを見逃した主審に対し、執拗以上の抗議で退席処分を受けていた。指揮官のそんな勝利への執念が、多少なりとも選手らに乗り移ったのかもしれない。
 天皇杯初戦は、群馬県代表・アルテ高崎との対戦。絶対的柱の山村は右足首負傷により欠場決定的で、中野監督もベンチ入りできない。ただ、過渡期を迎えているチームに必要なことは、かつての自信を取り戻せるかどうか。一戦必勝を期した先にある何かを、追い求める。
(茨城新聞)

栃木県/ 栃木ウーヴァFC

 栃木トヨタカップ第15回県選手権大会決勝で、関東リーグ1部のヴェルフェたかはら那須(V那須)を4-3で下し、2年ぶり3度目の優勝を飾った。「ウーヴァ」はポルトガル語で、ホーム栃木市の特産品であるぶどうの意味。
 1947年に「日立栃木サッカー部」として創部。2度目の出場となった2009年の全国地域リーグ決勝大会で準優勝し、栃木県では現J2の栃木SCに続くJFL(日本フットボールリーグ)昇格を決めた。今季は栃木SCを自由契約となった選手を多く獲得して戦力を補強。後期第6節を終えて18チーム中16位と低迷している。
 チームが目指すのは4・4・2システムをベースとした「堅守からの速攻」。得点力は高くないだけに、いかに失点を抑えられるかが鍵となる。
 守備ラインを統率するのは中川、岡田の両センターバック。ボランチから右サイドバックにコンバートされたDF前田は、正確なキックで決定機を演出する。
 攻撃の中心はボランチの浜岡。FW石舘は今季後期第6節を終えてチームトップの7得点。ベテランのFW若林は188センチの長身を生かしたポストプレーが得意。MF高安のスピードに乗ったドリブルは相手チームにとって驚異だ。
 V那須との決勝は壮絶な打ち合いとなったが、最後は1点差で競り勝った。攻撃は持ち味を発揮したものの、守備は3失点と課題が残った。横浜監督も「JFLチームとしてもっと力の差を見せつけないといけなかった」と反省した。
 まだ関東リーグ1部に所属していた2008年の天皇杯は、2回戦でJFLのジェフリザーブズを下し、3回戦で当時J2の山形に延長の末に惜敗。今年は1回戦で東京国際大(埼玉)と対戦。2回戦ではJ1・浦和が待ち構えるが、イレブンは「打倒J」に燃えている。
(下野新聞社)

群馬県/ アルテ高崎

 4年連続同じ顔合わせとなった第15回群馬県協会長杯では、関東1部のtonan前橋を6-2で下して、3年連続9度目の出場を手にした。2000年に群馬FCホリコシとして発足。04年にJFL昇格を果たし、同年の天皇杯4回戦でJ1柏レイソルを下して、16強入りした。06年から本拠地・高崎市の名前を入れたアルテ高崎に名称変更。07年は18位、08年は17位と降格の危機もあったが、2年目を迎えた後藤義一監督の指導で攻守ともレベルアップ。昨年は14位。今年も後期第6節を終えて14位につける。
 最終ラインから両サイドを使った自在なパスワークで攻撃のリズムをつくる。FW陣はスピードのある一柳、優れたゴール感覚を持つ松尾などタイプの違った選手がそろう。これに冷静な判断が光る主将のMF岩間と、正確なキックが武器のMF山藤が絡んで得点を呼び込む。今季、後藤監督は攻守の切り替えの早さを課題に掲げているだけに、これが改善されればさらなるレベルアップが図れそう。
 守備の要は一対一に強いDF小川。空中戦にも強く、セットプレーでは得点源になることも。左サイドのDF秋葉は豊富な運動量を生かして攻撃にも積極参加。今季はここまでチームトップの6点を挙げている。
 昨年の天皇杯では2回戦でJ1鹿島と対戦。守備に徹した戦い方でJ1王者を苦しめたが、後半34分に失点、0-1で惜敗した。今年も初戦を突破すれば、鹿島との再戦が実現する。後藤監督は「昨年の経験は選手にとって大きな力になった。今度は守るだけでなくガチンコ勝負もしてみたい。しかし、先は意識しないで、まずは初戦突破に全力を注ぎたい」と意気込んだ。
(上毛新聞)

埼玉県/ 東京国際大学

 平成22年度彩の国カップ第15回埼玉県サッカー選手県大会で初優勝し、初の天皇杯切符を獲得した。驚くべきことに、創部3年目で今大会初出場の新興チーム。ノーマークの下馬評を覆し、埼玉県アマチュアサッカーの勢力図を根底から一気に塗り替えた。
 1回戦は後半に4点を挙げ、パイオニア川越に5-2で快勝。準々決勝は工藤の2得点の活躍で、浦和ユースを3-1で退けた。ACアルマレッザとの準決勝ではまたも工藤が2点を奪い、3-1で決勝に駒を進めた。埼玉県大学リーグ1部のライバルである平成国際大と対戦した決勝でも攻撃陣が爆発。前半に岩井が2ゴールを決めると、後半には瀬野が直接FKを沈めて、3-1で栄冠を勝ち取った。
 大会では堅守速攻が冴え渡ったが、相手によって臨機応変に戦い方を変える抜け目のなさが目立つ。パスを回し、ボールを保持するチームに対しては、自陣で守備ブロックを形成して粘り強く対応し、ひとたび攻撃に移ると一目散にゴールを目指す。ボランチ田代の正確なパスを起点に、決定力のある2トップの工藤と岩井、攻撃的MFの高橋、笠原が前線で激しく動き回る。何より鋭いカウンターを支える運動量の多さが自慢だ。普段の練習から体力的、精神的にも限界まで追い込み、試合では最後まで足を止めることはない。最終ラインは足元の技術も備え、ロングボールを放り込むだけではなく、パスをつないでビルドアップすることもできる。
 坂戸市の同大総合グラウンドで練習に励むチームは、2008年に前田秀樹監督を招いて本格的に始動。現役時代は古河電工の中心選手として日本代表のキャプテンも務め、指導者としては水戸ホーリーホックも率いた前田監督は経験豊富な熱血漢。若いチームを抜群の指導力により短期間でまとめ上げた。2009年、埼玉県大学秋季リーグ2部で優勝し、1部に昇格。初挑戦となった春季リーグでは6勝1敗の勝ち点18と堂々たる成績を収め、得失点差で惜しくも2位となったものの、県大学サッカー界に強烈なインパクトを残した。同大は2011年度に女子サッカー部を新設する予定で、監督には元女子日本代表の大竹七未氏が就任するなど、近年スポーツに力を入れている。
 初の天皇杯全日本選手権では大きな目標がある。JFLの栃木ウーヴァとの1回戦を勝ち上がれば、埼玉サッカー界の頂点に君臨する浦和レッズとの対戦が待ち構えるからだ。「レッズとやれれば夢のようだが、1回戦の相手も強い。がむしゃらに走るだけ」と岩井。前田監督は「伝統をつくっていくためにまず一冠が取れてうれしい。これからが出発点」と引き締める。地元関係者も大いに注目する浦和とのドリームマッチ実現へ、青いユニホームがピッチを駆け回る。
(埼玉新聞)

千葉県/ 順天堂大学

 1956年に創部した順天堂大学蹴球部は、全日本大学選手権3連覇など多くの輝かしい実績を誇るが、2009年は2部リーグでスタートを切った。その年はズバリ「1年で1部リーグ復帰」と目標を掲げた。
 同年11月の21節、2位の拓殖大学を2-0で破り、関東大学リーグ2部優勝を決めた。その成績は17勝1分4敗で勝ち点52。得失点差で2位の拓殖大学に15点差をつけた堂々の優勝だ。まさに、チーム一丸となっての強い思いが届いた記念すべき日だった。
 1部リーグに復帰した2010年は、リーグ上位4位以内に入り「インカレ出場」を目標に掲げている。成績は、前半戦を終了して勝ち点17でリーグ6位に付けている。  今期後半戦初の公式戦となった天皇杯予選準決勝は、関東社会人リーグ所属のS.A.I市原サッカークラブとの対戦。開始30分、FW天野がFKを直接ゴールし、先制点を挙げた。この1点でチームの雰囲気が良くなり、前半2点、後半4点と6-0で圧勝した。
 さらに千葉県選手権決勝戦の相手は、一昨年の決勝戦で対戦し敗退したジェフユナイテッド市原・千葉リザーブス。開始10分、CKのこぼれ球をFW岡庭がペナルティエリアの外からボレーシュートを鮮やかに決めた。後半は、終始ジェフリザーブスの主導で試合が進むが堅い守りで得点を許さず、相手の持ち味を封じたまま逃げ切り辛勝した。
 天皇杯本戦に向け、順天堂大学蹴球部を率いる吉村雅文監督は「本大会は日ごろ対戦の出来ない社会人・プロのチーム。千葉県の代表として精一杯やります」。戦術的には、「相手コートの3分の1のゾーン(アタッキング・サード)で選手たちの想像力あふれるプレーで臨みたい」と抱負を語った。
(千葉日報)

東京都/ 東京ヴェルディユース

 第15回東京都サッカートーナメント決勝でJFL所属の横河武蔵野FCに勝利し、天皇杯本選出場を果たした。Jリーグの下部組織チームが東京都代表として天皇杯に出場するのは史上初。
 東京都サッカートーナメントでは、準決勝・決勝ともに社会人系の部のチームを破り、勢いに乗っている。決勝戦では前半終了間際に先制されながらも後半直後に追いつき、延長戦に持ち込んだ末の逆転勝利。精神的な強さも兼ね備えている。ボールを回してリズムをつくるスタイルが信条だが、守備に対しての集中力も試合全体を通じて保つことができていた。守備の中心選手はGKのキローラン菜入。的確なコーチングに加え、決勝戦では何度もファインセーブを見せ、チームの勝利を呼び込んだ。延長後半に決勝点を挙げたMFの山浦新も注目選手の一人。フェイントで相手DFをかわしてのゴールは、技術の高さを証明してみせた。
 楠瀬直木監督は、「公式戦で大人のチームと対戦できる唯一の機会で、とてもありがたい経験。うちは、守って勝つチームではないので、本大会でも目指しているサッカーをしていきたい。」と抱負を語った。
(東京新聞)  

神奈川県/ Y.S.C.C

 サッカーの天皇杯全日本選手権神奈川県代表決定戦は29日、保土ケ谷サッカー場で決勝を行い、関東リーグ2連覇の横浜スポーツ&カルチャークラブ(YSCC)が4-2でSC相模原(県社会人リーグ1部)を下し、2年ぶり3度目の優勝を飾った。
 厚い中盤を誇るチーム同士とあって、接戦が予想されたが、前半からYSCCが堅守からのカウンターで流れをつかんだ。
YSCCは前半24分、前線で張っていたFW辻が、MF平間からのロングパスを受けてゴール左隅へ先制のゴール。辻は同32分にもMF中村からのロングボールを押し込んだ。
 「相手の攻撃は怖かったが、守備にはもろさも感じていた。そこを突いてゲームを支配したかった」と狙いを話す三宅大輔監督。その言葉通り、2点リードで折り返した後半は、攻め急ぐ相手にミスが続出。中盤でも優位に立ち、後半15分には相手DFラインの裏を突いた松田が倒されてPKを獲得した。関東リーグ得点王の松田は「走り合いで相手を揺さぶれたのが、後半に効いた」と話した。
 4得点のうち、PKを除いた3点がカウンターから。2トップの辻、松田で2点ずつを獲得した。中盤を飛び越してのカウンター勝負を選んだことに、辻は「うちも相手も中盤は厚い。それなら一気に裏を突こうと思った」と満足そうに話した。
 元Jリーガーを多数擁し、ことし2月にJリーグの準加盟を果たしたSC相模原を破っての県代表に、主将のDF鈴木は「トーナメントの緊張の中で、戦いながらチームをつくってきた」と手応えを語る。3度目の天皇杯本大会に向け「全国の舞台で恥ずかしくない試合をするためにも、プレーの精度を高めていきたい」と意気込んでいた。
(神奈川新聞)

山梨県/ 玉穂フットボールクラブ

 2年ぶり2度目の全国大会出場。35度を超える猛暑の中で行われた2010年度第15回山梨県選手権大会決勝で、初優勝を目指す日川クラブと対戦。後半になれば相手の足が止まるという松下豊監督の思惑通りに試合は進み、そこで攻勢を強めたが、何度も迎えた決定機を最後まで生かせなかった。80分間で決着はつかず、もつれ込んだ20分間の延長戦でも決め手を欠いた。PK戦(4-2)の末に、勝利をつかんだ。
 小中学校、高校の教員が6人いる。元日本代表の中田英寿さんと韮崎高時代にチームメートだった元VF甲府の小泉圭二や、元横浜マリノスの松下選手兼監督といった個性的な選手が在籍するバラエティーに富んだチーム。練習は平日に主に2回。1回の約1時間半のほとんどの時間は、走り込みを中心にしているだけあって、スタミナに自信を持つ社会人チームには珍しいタイプ。県内のトップリーグと位置付けられている、社会人5チームによるスーパーリーグに所属。3年目を迎えたこのリーグでは2連覇中で、今季も首位を独走する。近年はクラブ選手権や川手杯など、県内の各大会で常に優勝争いに絡んでいる。
堅守速攻を掲げ、システムは4-5-1が基本。50㍍5秒9の俊足ワントップで、ドリブル突破を積極的に仕掛ける竹中翼主将にボールを集め、スピードを生かした攻撃を得意にする。ボールをさばける小泉や松下に加え、両サイドから中央へドリブルで切り込んだり、トップへの配球役となる中村剣人や河村祐希が中盤でチャンスメーク。相手DFの裏へと送り込むロングボールも多用して、速攻につなげる攻撃が目立つ。守備陣は、決勝のPK戦で3本目を完ぺきな読みで封じたGK原田守を中心に、全4試合で失点2と堅守をみせる。DFラインは小沢哲也、金丸浩明の長身センターバック2人が統率し、両サイドにはボールコントロールが巧みな小宮山拓也らを置く。
 初挑戦となった前回は、1回戦でJFLのソニー仙台(宮城)に0-9で完敗。実力差をまざまざとみせつけられた。「今回も勝つのは厳しいと思うが、やはり(2回戦で待ち受ける)VF甲府とやってみたい。県代表として、恥じないゲームをしたい」とは松下監督の弁。竹中主将も「2年前は実力差を感じさせられた。苦いあの敗戦からこれまでの成長をみせたい」と語り、戦いを前に気持ちを高ぶらせている。
(山梨日日新聞)

長野県/ 松本山雅フットボールクラブ

 前々回はJ2湘南に勝って長野県勢として初めて4回戦に進み、前回は2回戦でJ1浦和に2-0で快勝した。主将のFW柿本倫明は「公式戦でJリーグチームと戦えるのは天皇杯しかない。自分たちの力を試したいし、今年も勝ちたい」と、3年連続のJリーグチーム挑戦を目指して意気込んでいる。
 クラブは1965年、松本駅前の喫茶店「山雅」の常連客だった地元の高校OBらを中心に発足した。アマチュアチームの時代が長かったが、地域の若手経営者らが運営組織をつくり、将来のJリーグ入りを目標に05年シーズンから本格的な強化に着手。元Jリーガーや力のある大卒新人を増やし、昨季、北信越リーグ1部からJFLへの昇格を決めた。
 今年8月末にホームスタジアムの松本市アルウィンで行われた天皇杯長野県予選決勝は、ライバルの北信越リーグ1部・AC長野パルセイロとの対戦。1-0で勝った試合は6千人を超える観衆が見守り、その模様はテレビ中継された。Jリーグチーム誕生への地域の期待は年を追うごとに高まっている。
 松本山雅は参戦1年目のJFLで現在8位。序盤戦は結果を出せず下位に沈んでいたが、J1名古屋、J2横浜FCに在籍した24歳の須藤右介をボランチからセンターバックに転向させるなど守りを強化。粘り強く守って敵陣のサイドに展開するスタイルを確立すると同時に、故障で出遅れていた32歳FW柿本がリーグ5位の10得点と復調してきたこともあって順位を上げ、勢いが出てきた。
 8月上旬にはJ2東京Vから長身センターバックの飯田真輝、攻撃センスの高いMF弦巻健人らを獲得し、層の薄かったセンターラインを強化。開幕前にJリーグ準加盟クラブの承認も受けており、JFL残り11試合でJ2昇格の要件となる4位以上の成績を目指す。そのためにも、天皇杯を弾みにしたいところだ。
 1回戦はアルウィンを会場に、山梨県社会人リーグの玉穂FCとの対戦。多くのサポーターの声援を背に取りこぼしは許されない。勝てば2日後の2回戦で、J2で優勝争いをしている甲府と戦う。吉沢英生監督は「内容が伴って勝てれば一番いいが、自分たちが目指すリーグの上位チームと戦うことで、プレーの質や運動量の差がよく分かる。足りない部分をしっかり感じたい」と話している。
(信濃毎日新聞社)

新潟県/ JAPANサッカーカレッジ

 8月29日に行った新潟県サッカー選手権大会決勝で、グランセナ新潟をPK戦の末下し、2年連続の天皇杯出場を決めた。前身のアップルスポーツカレッジFC時代も含め、10度目の優勝。昨年の天皇杯は2回戦でJ1広島に0-5と完敗したものの、J1チームと公式戦で戦った経験を生かし、地元新潟国体では成年男子に単独チームで出場し栄冠をつかんだ。ことしも初戦に勝ち、東北電力ビッグスワンでアルビレックス新潟との対戦が目標だ。
 チームは地元国体へ向けて勝利を義務付けられてきた昨年までと違い、今季は「育てながら勝つ」がコンセプト。昨季の主力メンバーもほとんどが移籍し、主将の桜田真平、キープ力のある池川修平、俊足の高瀬証と若い選手がチームの中心だ。確実なビルドアップから、サイドに展開し、池川、高瀬がチャンスメーク。決定力とゴール前野アイデアのある桜田にボールを集めるのが得点パターンとなる。守備は今季途中までアルビレックス新潟にアマチュア登録されていたGK金井大樹が鍵を握る。けが人もいて最終ラインがなかなか安定しないこともあり、守護神に掛かる期待は大きい。
 決勝では3度のリードを追いつかれ、PK戦に持ち込まれた。「勝ちきるチャンスがあったのに追いつかれて、精神的な弱さが出た」と桜田。運動量や思い切りの良さという若さのメリットがある反面、経験の少なさからか要所で勝負弱さが出た。特に守備面では混戦から相手にシュートを許し、あと一歩足が出なかった場面が目立った。天皇杯初戦のツエーゲン金沢は昨季までともに北信越リーグを戦ったライバルだが、今季からはJFLで戦う格上の相手。球際の強さやゴールへの執念をどれだけ見せられるかが、ポイントとなりそうだ。
 北信越リーグでは2位につけるものの、長野パルセイロに得失点差で大きく溝を空けられ優勝の可能性がほぼないだけに、天皇杯に懸ける思いは強い。「金沢に勝ってアルビとやりたい。みんなに成長を見せたい」と金井が言えば、桜田も「プロチームと対戦すればチームとしても一皮むけるはず」と2回戦での“新潟対決”を熱望する。昨年の国体決勝では多くの県民が応援に駆けつけた。そのアマチュアサッカー熱を一過性のものにしないためにも、初戦突破を実現したい。今季からチームの指揮を執る辛島啓珠監督は「1つでも多く試合をやることが大事。金沢は格上だけど、アルビとやれるように頑張りたい」と抱負を語った。
(新潟日報)

富山県/ 富山新庄クラブ

 8月8日に行われた第15回富山県サッカー選手権大会決勝でPK戦の末に昨年の覇者ヴァリエンテ富山を下し、天皇杯初出場を決めた。
 昨季、北信越2部リーグの入れ替え戦で昇格できなかった悔しさが今季の原動力となっている。スタメンの顔ぶれが大きく入れ替わり、県リーグは全9戦で8勝1分け、54得点4失点と圧倒的な強さを見せつけ優勝した。ともに県のアマチュアサッカーをけん引してきたヴァリエンテに対しても同大会決勝を含めて今季は2戦2勝。北信越1部リーグに所属するライバルチームに対し、スコア以上に力の差を見せつける試合内容で手応えをつかんだ。
 チームは昭和43年、富山市新庄地域出身者が母体となって設立。北信越1部リーグ昇格を目標に活動しており、現在は27人が在籍。トレーニングは週2回、地元の新庄小学校グラウンドで行っている。職場から練習場までの距離が遠い選手もおり、人数がそろわないこともある中で、集中してトレーニングをこなしている。
 選手個々の高い技術を生かしたパスサッカーがチームの特長。特に今季から加わった5人の存在が大きい。カターレ富山に所属していたMF景山、FW石黒のほか、アルビレックス新潟でプレー経験があるMF西原、ボランチからサイドバックまでこなすMF辻石、DFの川野。いずれも各ポジションで存在感を放っており、チーム力は大きく向上した。
 システムは4-4-2。中盤では景山と左利きの前田を中心にパスワークを展開し、ボランチの辻石は豊富な運動量を生かして攻守両面で貢献する。チーム一のテクニシャン西原、スピード豊かな菊池がサイドアタックを仕掛ける。2トップはポストプレーが得意の金丸と、オールラウンドな能力を備える石黒の組み合わせが軸となる。GK青木、DF畑を中心とした守備陣は、川野の加入で安定感がさらに高まった。
 ヴァリエンテとの決勝では、序盤から試合を支配し、人数を掛けて積極的に攻め上がった。後半、カウンターから先制点を奪われたものの、すぐに西原のゴールで同点に追いつき、PK戦で青木が2本のキックを止めチームを勝利へ導いた。
 選手兼監督の堀は「フルメンバーがそろえば負けない。県外の強豪にも勝てる力がある」と自信をのぞかせる。
(北日本新聞)

石川県/ ツエーゲン金沢

 石川県サッカー選手権の決勝で開始早々に格下のテイヘンズFCに先制点を許したが、地力を発揮し、4連覇を果たした。天皇杯には前身の金沢サッカークラブ時代を含め、4年連続6度目の出場となる。
 チーム名の「ツエーゲン」とはドイツ語のツヴァイ(Zwei=2)とゲーン(Gehen=進む)を合わせた造語で、チームとサポーターが一緒になって進んでいくとの意味が込められ、金沢弁で「強いんだ!」を意味する「つえーげん!」とのダブルミーニングになっている。
 「石川からJリーグへ、石川から世界へ。」をスローガンにJリーグを目指すクラブとして発足してから4年目の昨季、全国地域サッカーリーグ決勝大会の決勝ラウンドで3位に終わり、大会直後の日本フットボールリーグ(JFL)昇格は逃したが、FC刈谷(愛知)との入れ替え戦を1勝1分けで制し、最後のJFL切符をつかんだ。
 今季開幕前には元日本代表のFW久保竜彦を獲得するなど積極的に戦力を補強し、開幕当初からSAGAWA・SHIGA・FCやホンダFCなど強敵相手に互角の戦いを演じた。しかし、ここ2戦は終了間際に失点して引き分けに持ち込まれるなど勝ち点を思うように伸ばせず、後期の第6節終了時点の順位は9位で、終盤戦で上位浮上を狙うチームにとっても今大会は大きな意味合いを持つ。。
 諸江健太、マイケル・ジェームズ、込山和樹らDF陣は1対1に強く、高さも兼ね備える。ベテラン山根巌がボランチに定着して守備は安定感を増した。長谷部彩翔、曽我部慶太、山道雅大ら攻撃的MFが久保や古部健太ら身体能力の高いFW陣を生かせるかが鍵となる。セットプレーでは、前線に上がる諸江の決定力も高く、貴重な得点源だ。
 天皇杯では、ツエーゲン金沢として初めて出場した第87回大会、第88回大会と連続でJFL勢を破って3回戦まで進出し、前回は2回戦で当時J2のベガルタ仙台に延長で敗れたものの、格上チームを苦しめた。就任2年目の上野展裕監督も「目標はJリーグ勢を倒すこと。そのためにしっかり準備をして1回戦に臨みたい」と意欲を燃やす。石川のトップチームとしての誇りを胸にツエーゲンが天皇杯の舞台に挑む。
(北國新聞)

福井県/ サウルコス福井

 NPO法人「福井にJリーグチームをつくる会」が運営する社会人チーム。名前通り、福井県から初のJリーグ入りを目標に発足し、2007年に地域リーグの北信越リーグ2部でデビュー。1季で同1部に昇格し、現在3季目を迎える。今季も優勝には届かなかったが、順位は毎年着実に上げている。
 発足以来、メンバーは年ごとに移り変わりながら、福井県トップチームの地位を維持。この間の県内大会をほぼ制し、天皇杯は今回で3年連続3度目の出場となる。
予選の県選手権決勝(8月29日)は昨年と同じ顔合わせとなり、北信越リーグ2部の福井KSCを2-0で下した。相手は今季好調で、来季は同じ土俵の1部に昇格してくることが既に決まっているが、後半の効果的な2得点で退けた。
 今季から指揮を執る伊田監督はジュニア指導歴が長く、後のJリーガーも輩出した。サウルコス福井でも多くの選手が上位のカテゴリーからスカウトされるよう、個々の育成に意欲を示す。一人一人が伸びるチームこそ長期的には強くなる、という考えだ。
 各選手に複数ポジションをこなすことを要求をしたのも、育成の一環。就任時に「人もボールもより動くサッカー」をコンセプトに掲げ、シーズン中はさまざまなバリエーションの選手起用を試みてきた。
 県選手権決勝の出場メンバーに、ここへ来て固まってきた形が見える。前線は決定力のある高橋と、DFからコンバートされた中村。サイドハーフは右が鈴木、左が前田かレフティーの高田で、いずれも豊富な運動量で攻守に貢献する。渡邉、末永のボランチ陣がパス回しをコントロールする。
 DFはセンターバックに長身の霜、加藤を据える。サイドバックは左がスピードのある末廣。右は今季途中にFWから移った内田で、果敢な攻撃参加が持ち味。GK馬場は指揮官が「今季、一番伸びた選手」と高く評価する守護神だ。
 昨年の天皇杯は無念の初戦敗退。まずは1回戦の富山新庄クラブ(富山県代表)戦に全力をぶつける。8月13日に全国社会人選手権北信越大会で対戦し勝った相手とはいえ、上位のカテゴリーを経験したメンバーを擁する強敵。厳しい戦いになるのは必至だが、勝てば2回戦の相手はJ1セレッソ大阪。今季の目標の一つ「天皇杯でJリーグチームと対戦」が実現するだけに、イレブンの士気はいや応なく高まっている。
(福井新聞)

静岡県/ HondaFC

 サッカー王国の誇る「アマチュアの雄」Honda FCが、今年も天皇杯の出場権を守った。8月28日に行われた県代表決定戦では東海大学リーグ1部で首位を走る浜松大を4-1と一蹴(いっしゅう)。16年連続35度目の出場を果たした。
 決定戦では前半は両軍無得点で折り返したが、後半は13本のシュートを浴びせる猛攻を見せた。4分に背番号10、MF柴田の鮮やかな左足FKで先制した。同点とされた30分にはFW鈴木がFW吉村のパスに抜け出し勝ち越しゴール。終盤にも鈴木のPKとアシストで2点を追加した。
 Honda FCは1971年に本田技研工業サッカー部として創部。99年から始まったJFLでは、Jリーグ準加盟クラブの台頭にも負けず、企業チームとしての姿勢を貫き続け4度の優勝を果たしている。天皇杯でも07年度の第87回大会では東京V、柏、名古屋とJクラブを3連破してベスト8に進出したことは記憶に新しい。
 昨年のJFLは負傷者が出てベストメンバーを組めない試合も多く、過去最低の7位に終わった。王座奪還を目指す今年は、石橋前監督の元でコーチを務めていた大久保貴広氏を新監督に迎えた。大久保氏は国立大の静岡大出身で97年から2年間、MFとしてJリーグの横浜Fでプレー。99年から3年間はHonda FCでも活躍した。「全員でボールを奪って、全員でゴールを目指す。3点取られても4点を取る」。36歳の新指揮官が掲げるのは攻撃サッカーだ。システムを昨年までの2トップから4-3-3に変更。ベテランの新田、鈴木を軸に、昨年9得点のJFL新人王、伊賀の強力3トップでゴールを襲う。
 今季リーグ戦は開幕ダッシュに失敗し前期3位以内の天皇杯シード権を取れなかった。だが、夏場以降はDF石井主将を中心とした守備が安定し、DF中川、MF細貝ら才能豊かな新人もフィットし始めバランスが良くなってきた。「意思統一ができて、チームの形になってきた」と石井主将は手応えを口にする。後期6節終了時点でリーグ3位と上り調子の状態で天皇杯を迎えることになり、「自分たちのサッカーがどれだけできるか楽しみ」と選手は岐阜県代表との1回戦、さらにその次のJリーグ勢との対戦を心待ちにしている。
 県代表決定戦では本調子ではなかった新田をベンチに置いて2トップで戦ったが、大久保監督は「(新田は)天皇杯には出られる。今までやってきた攻撃的なサッカーでトライしたい」と話す。Jリーグ勢撃破に闘志を燃やすHonda FCが、アグレッシブな戦いでスタンドを沸かせてくれそうだ。
(静岡新聞)

愛知県/ 中京大学

 愛知県選手権大会決勝で愛知学院大学をPK戦の末6-5で下し、6年ぶり4度目の本大会出場を決めた。県別の代表決定戦になってからは中京大の出場は三回目。
 2年ぶりの出場を目指した愛知学院大学との決勝戦は猛暑の中、激戦となった。中京大学が優位に試合を運んでいたが再三の決定機を生かせず、愛知学院大学の堅守にゴールを阻まれた。試合は延長戦に入るが0-0で決着がつかずPK戦へ。勝敗の決め手になったのは6人目。中京大学を天皇杯出場に導いたのはGK大久保だった。大久保は3年生まで東海大学リーグ戦出場はわずか1試合。今春には腰の骨を折るなど故障続きだったが、今大会直前にGK2人が故障し大役が回ってきた。大久保は愛知学院大6人目のシュートを左足ではね返し、渾身のガッツポースを決め手見せた。直後に小川真司選手が落ち着いてゴールを決めると中京大イレブンは大久保に駆け寄って歓喜の輪をつくった。
 中京大学は日本サッカー協会公認第1号の人工芝サッカー場を有し、アスリート食を取り入れるなど大学屈指のトレーニング環境を備え、年々実力を上げてきている。
 今年2月には西ヶ谷隆之監督が就任し、「結果を貪欲に求める」スタイルがチームに浸透してきている。天皇杯でも結果を求めるスタイルは変わらない。
 スピードとテクニックを兼ね揃えたFW斎藤和樹選手を中心にした攻撃と、粘り強いディフェンスができるDF森本良選手を中心にした堅い守りが機能すれば勝機が見えてくる。
 グランパスユース出身の森本選手は「天皇杯2回戦では名古屋グランパスと戦うことができる。僕らにとっては大きなモチベーションになっています。」と話す。
 地元・名古屋グランパスとの対戦を目標に、まずは1回戦、三重県代表の四日市大学にチーム一丸となって挑む。
(中日新聞)  

三重県/ 四日市大学

 平成22年度第15回三重県サッカー選手権大会で近大高専を延長戦で制し、2年ぶり4回目の天皇杯本戦出場を果たした。
 決勝戦の相手は高専体育大会で全国三連覇中の近大高専。前半はシュート数こそ近大高専が上回ったが、ほぼ互角の展開で折り返した。後半も互いに攻めあぐね、一進一退の攻防が続いた。結局、互いに無得点のまま、試合は延長戦にもつれ込んだ。延長前半終了間際に、コーナーキックからのこぼれ球を、DF中尾正平選手が右足で押し込み、決勝点を挙げた。前半で相手選手と接触し、頭にケガをした中尾選手は、頭に包帯を巻きながらのプレー。「試合に集中していて痛みは感じなかった。大事な場面でチームに貢献できてよかった」と笑顔で話した。
 延長で粘り勝った試合展開にも、渥美昭吾監督は満足しない。試合後、「前線の選手は寝ていた。決定力がなさ過ぎる。点を取ってこそ、初めてゲームを支配できる」と渥美監督は厳しい口調で振り返った。山中大三主将も「自分たちの得意なパスサッカーができなかった。みんなの中に、まだあせりが消えていない」と唇を噛んだ。渥美監督は「メンバーの入れ替えも辞さない」と話すなど、本戦での一勝に向け、緊張感は最高潮だ。
 チームは昨年、東海学生リーグで2部降格という試練を経験した。現在は、チーム一丸となって1部への復帰を目指している。その中での天皇杯本戦出場は「一つの大きな自信になるし、大きな大会での試合経験を積めるチャンス」と山中主将は目を輝かせる。渥美監督は「(一回戦で対戦する愛知県代表の)中京大はタレント選手も多く、完全に格上。一勝をねらうだけでなく、胸を借りるつもりで、たくさんのことを学びたい」と意気込んでいる。
(中日新聞)

岐阜県/ FC岐阜SECOND

 第90回天皇杯全日本サッカー選手権大会の岐阜県代表の座を勝ち取ったFC岐阜SECOND。伊藤哲也監督の下、東海2部チームに所属。松江克樹(青山学院大卒)と遠藤雄一(三菱水島FC)のFW2人を中心とした攻撃が特徴。システムは4-4-2。
 県予選の準決勝は、昨年の決勝戦の再現となった大学代表の岐阜経済大学との対戦。スタート直後からFC岐阜SECOND(以下FCと略)は相手ゴールを攻めたてるが、パスミスからのカウンターで先制点を許してしまう。しかしFCはひるむことなく攻撃を続け、前半14分に遠藤がゴールして同点に追いつく。さらに、25分にはペナルティーエリア内で松江が倒されて得たPKのチャンスを、松江自らが決めて逆転に成功。後半に入ってからも25分に遠藤、同35分に再びPKで決めるなど順調に追加点を奪い、4-1で圧倒した。この日はかなり気温が上昇し、選手にとってタフなコンディション。厳しい条件下で、FCの選手たちは、前半から飛ばす積極的な相手に対し、冷静にペース配分するなど格の違いを見せ付け、県代表の座に王手を掛けた試合だった。
 決勝は、社会人のNK可児との対戦。NK可児は今年5月の全国社会人サッカー選手権岐阜県大会決勝で、FCが敗れた相手。 試合序盤からペースを終始握っていたのはFCの方だった。その証拠に、シュート数が前半で15本のFCに対し、相手は0本。DFを中心にした鉄壁の守りが相手にまともな攻撃を許さなかった。その一方で圧倒的に攻める機会の多いはずの攻撃陣は、相手GKの好セーブなどもあり無得点で前半を終了。後半に入るとNK可児は、ゴールゲッター小野島をはじめ、交代枠3人を早めに使い勝負に出てくる。FCにとって厳しい局面となったが、ここでも光ったのはFCの堅守。相手にとって好機が数回続くが、時間が経つにつれ、痙攣を起こしてピッチに座り込むNK可児の選手が見られるようになる。FCは相手の運動量が落ちた後半ロスタイムに、ゴール前にドリブルで迫った田端からのラストパスを受けた松江が冷静にゴールを決め、1-0で勝利。3年連続で県代表の座をつかんだ。
 天皇杯本戦でFCは、静岡代表でJFL所属のHondaFCと対戦する。昨年は初戦敗退という悔しい結果に終わったが、伊藤監督は「パスの精度や決定力が本戦に向けた課題。チャレンジャーとして挑みたい」と抱負を語った。
(岐阜新聞)

滋賀県/ MIOびわこ草津

 滋賀県選手権決勝では、TOJITSU滋賀FCに3-1で逆転勝ちした。前半5分に先制されたものの、焦らずに両サイドから厚みのある攻撃を仕掛けて、3年ぶり2度目の天皇杯出場を決めた。
 2006年に発足し、06、07年は関西社会人リーグ1部でともに2位。07年に全国社会人サッカー選手権で初優勝すると、全国地域リーグ決勝大会で3位に入り、わずか2年でアマチュア最高峰のJFLへと駆け上がった。
 滋賀県草津市を拠点にし、チームのメーンカラーは自然をイメージした緑。MIOは「近江」を逆さにし、イタリア語で「私たちの」という意味も併せ持つ。チームエンブレムには、琵琶湖の生物を代表するナマズがデザインされている。サッカー教室やボランティア活動を精力的に行う地域密着型のクラブで、将来のJリーグ昇格を目指している。
 JFLでは08年14位、09年8位と着実に順位を上げてきた。信条とする、人もボールも動くダイナミックなサッカーが根付きつつある。攻守の切り替えを素早くし、選手が献身的にスペースへ動きだすことで、流れるようなパスワークを生み出す。攻撃的スタイルを貫いて、昨シーズンはJFL4位となる51得点を生んだ。
 指揮を執るのは元G大阪コーチの和田治雄監督。スロベニアでの指導経験を持ち、選手に練習の意図を考えさせながらチームを強化する姿は、オシム元日本代表監督をほうふつとさせる。トップ下で攻撃の起点となるのはMF安里。前線で自由に動き回って、効果的なパスを配球する。キープ力のあるFW阪本が献身的なポストプレーで前線に起点をつくり、両サイドからMF坂井、MF尾上らスピード豊かなアタッカーが仕掛けていく。守備は前線から激しくプレスし、高い位置でのボール奪取を目指す。滋賀県選手権決勝では、公式戦先発2試合目のMF前川が貴重な同点弾を挙げた。選手の多くが20代前半と若く、チーム内の競争も激しい。
 3年前の天皇杯は、2回戦で現J2の栃木SCに競り負けた。今年は1回戦を突破すればJ1神戸とぶつかる。3年目を迎えたJFLでは現在15位と苦戦が続いているだけに、強豪相手に経験を積んで今後の飛躍につなげたい。DF谷口主将は「Jのチームを相手に、自分たちの力がどれだけ通用するのか試したい。そのためにも必ず1回戦を勝つ」と力を込める。
(京都新聞)

京都府/ 佐川印刷SC

 京都選手権の決勝は、同大を5-0で一蹴し、4年連続7度目の天皇杯出場を果たした。準決勝でも2種代表のWizards FCを15-0と圧倒し、京都府内で格の違いを見せ付け、本大会に挑戦する。
 1986年に佐川印刷サッカー部として創部。京都府4部リーグからコツコツと実力に磨きをかけてきた。98年に1部昇格を果たしたことをきっかけに、会社はサッカー部の本格的な強化に乗り出した。2002年に関西リーグを制し、念願だったJFLに昇格。京都府内で積極的にサッカー教室を開催するなど、地域に密着した活動にも熱心だ。
 昨季はJ2水戸から獲得したFW塩沢勝吾がリーグ得点王となる17点を挙げる活躍を見せたこともあり、9位に躍進し、JFL昇格から7年目で初めて目標に掲げ続けてきた一けた順位を果たした。更なる上位進出を目指す今季は、第23節終了時点で11位に甘んじている。塩沢を中心に37得点をたたき出す一方、37失点を喫している不安定な守備が上位進出への課題となっている。
 伝統的に堅守速攻を武器とする。今季はDFの高橋弘章と及川準を中心にしっかりとブロックをつくり、ボールを奪ってからは素早いカウンターを仕掛ける。攻撃時には、戦術眼と足元の技術に優れる元京都サンガFCのMF大槻紘士がタクトを振るい、塩沢とFW平井晋太郎がゴールを重ねる。全体練習では徹底的に走り込んでフィジカルを強化しており、豊富な運動量も大きな武器だ。
 天皇杯は、毎回、打倒Jリーグクラブを掲げている。昨季は2回戦で清水に0-2で敗れるなど、これまでにJリーグ勢とは計5度の対戦で全敗している。今回は、奈良クラブとの1回戦を突破すれば、2回戦で京都サンガと顔を合わせる。中森大介監督は「地元のJリーグチームと公式戦で戦える機会はほとんどない。精いっぱいチャレンジしたい」と意気込んでいる。
(京都新聞)

大阪府/ 大阪体育大学

 1965年に創部された大阪体育大学学友会サッカー部。1986年、2008年の総理大臣杯優勝、1985年の全日本大学サッカー選手権(インカレ)優勝、今大会で天皇杯出場13回目を誇る実績のあるチームだ。今年度は関西学生リーグ2部ながら、関西学生サッカー選手権で準優勝し、総理大臣杯に出場。総理大臣杯では緒戦敗退となったが、第15回大阪サッカー選手権大会では決勝でアイン食品株式会社サッカー部を4-0で破り天皇杯出場権獲得。今季2度目の全国大会に駒を進めた。基本布陣は4-5-1。菅原渉、濱上孝次を中心としたDFラインは安定感がある。スピードのある左SBの藤春廣輝の攻撃参加にも注目だ。主将の村田和哉は来季C大阪へ加入が内定。スピードのあるドリブル突破、裏への抜け出し、クロスの精度が魅力のサイドアタッカーだ。1トップの川西翔太はキープ力、得点能力が高く、攻守ともに力のある選手が揃う。今季は関西学生2部のため、インカレへの出場権はなく、村田ら4年生にとっては今大会が最後の全国の大舞台だ。「天皇杯に賭ける4回生の思いは強いので、それを見て後輩が刺激になれば。まず緒戦に勝つことですが、ガンバを倒すくらいの勢いで頑張ります!」と村田。「まず緒戦に勝たなければなりませんが、ガンバと対戦して自分たちがやっていることがどれくらい通用するか試してみたい。ガンバに点を獲りたいですね」と坂本康博総監督。緒戦突破を果たせば、G大阪にも学生らしく真っ向勝負で臨むだろう。
(フリーライター 尾崎ルミ)

兵庫県/ 関西学院大学

 平成22年度の第13回兵庫県サッカー選手権で2連覇を飾り、天皇杯の兵庫代表に名乗りを上げた。決勝は関西学院大学サッカー部OBらでつくる「関西学院SC」との“同門対決”を2-1で制した。前半22分にMF松本圭介が右スローインからのこぼれ球をけり込んで先制すると、後半2分にはFW山内一樹のヘディングシュートで加点。先輩たちのプレスやカウンターなどに苦しみながらも、現役生の意地を見せた。
 元日本代表監督で卒業生の加茂周氏が平成19年から指揮を執り、代名詞の戦術「ゾーンプレス」をたたき込んだ。ハードな走り込みなどで運動量を鍛え上げ、ボールへの集散を繰り返す躍動的なサッカーを徹底。昨季の関西学生サッカーリーグでは11年ぶりの優勝を遂げ、古豪復活をアピールした。今季は加茂氏が総監督に就任し、成山一郎ヘッドコーチが監督に昇格。指導陣の若返りで全国タイトルを狙う。7月の総理大臣杯全日本大学サッカートーナメントは1回戦で敗れ、関西学生サッカーリーグでも現在7位と全日本大学サッカー選手権出場(上位3校)に向け苦戦が続くだけに、天皇杯で弾みをつけたい。
 5月にU-21(21歳以下)日本代表に初選出されたMF阿部浩之が、右ひざの手術で離脱。中盤の大きな柱を失った状態だが、当たりの強さと足元のうまさを兼ね備えたポスト役のFW村井匠、豊富な運動量と正確なパスワークで攻撃にリズムを生むMF梶川諒太ら前線にタレントは多い。広島皆実高校時代に全国高校サッカー選手権を制したDF井林章も、ヘディングの高さと鋭い読みで最終ラインを支える。
 天皇杯1回戦では日本フットボールリーグのMIOびわこ草津(滋賀代表)と対戦。勝てばJリーグ1部・ヴィッセル神戸との“兵庫ダービー”が実現する。村井は「選手としての夢だった。活躍すれば、もっと上のレベルに行けるチャンス」と闘志を燃やし、MF渡辺毅仁主将は「Jリーグとの真剣勝負が楽しみ」と力を込めた。 創部は1918年(大正7年)。日本代表監督や日本サッカー協会会長を歴任した長沼健氏のほか、Jリーグの名古屋グランパスエイト初代監督を務めた平木隆三氏、ヴィッセル神戸の安達貞至副会長らの人材が巣立った伝統校。「関学クラブ」として天皇杯を4度制覇し、関西学生サッカーリーグでも史上最多28度の優勝を誇る。
(神戸新聞)

奈良県/ 奈良クラブ

 奈良クラブは2年連続2度目の本大会出場。県代表決定戦では、同じ社会人チームとして県サッカーをけん引してきたディアブロッサ高田FCに3―0のスコア、試合内容とも上回り、本大会でも活躍が期待されている。
 「地元・奈良からJリーグ」を目標に活動。コーチ兼選手のMF矢部次郎、MF中村祥朗など、県出身の元Jリーガーらがチームの中核を担う。所属する関西リーでは今季から1部に昇格し、昇格初年度ながら上位争いを展開。同時に、定期的に県内の学校、幼稚園、イベントを巡回して行うサッカー教室など、競技の普及や地域貢献活動でも注目を集めている。
 チーム全体の組織的な守備と、豊富な攻撃パターンが特徴。GK松石雄二、DF梶村卓主将のホットラインを中心に統率されたDF陣は相手MF、FWへの粘り強いチェックと相互の堅実なフォローで突破を阻む。
 攻撃はベテラン勢の中盤での安定したパスワークを起点に、俊足のMF畑中俊逸、FW檜山勇人らがスペースに走り込む。相手チームの出方に合わせた、臨機応変な戦い方ができるメンバーがそろっている。
 チームの理念への共感やリーグでの躍進をきっかけに新戦力が加入し、決定戦でも厳しいチャージを見せたDF三本菅崇、MF大塚靖治、果敢なシュートが持ち味のFW牧悠二ら加入選手の貢献が光った。
 格上チームとの戦いで課題になるのは、経験者中心ゆえの平均年齢の高さと、試合終盤における運動量か。各選手が仕事を持つ社会人であることに加え、練習拠点や環境面も整備途上。個々の、チームの意識の高さで苦しい局面をしのぐため、試合終盤に登場する控え選手も強い自覚を持つ。試合のたびに熱い声援を送るサポーターの存在も欠かせない。
 本大会初出場の昨年はサウルコス福井(福井代表)を破って2回戦に進出した。Jリーグ加入を目指す奈良クラブにとっては格上チームも単なるあこがれではなく〝倒すべき相手〟。前回を上回る健闘に、県民の期待が高まっている。
(奈良新聞)

和歌山県/ アルテリーヴォ和歌山

 第15回和歌山県サッカー選手権大会決勝では1-1で迎えた93分、MF上赤坂佳孝の劇的な決勝ゴールで海南フットボールクラブを2-1で破り、2年連続2度目の天皇杯全日本サッカー選手権大会出場権を獲得した。初出場を果たした昨年度の大会では1回戦で佐賀東高に2-3で敗戦。その悔しさを胸に挑んだ今大会は、「いい準備はできている」(上赤坂佳)と初戦突破を誓う。和歌山大会決勝で2得点の上赤坂佳を中心とした攻撃陣は破壊力十分。同決勝では重松直志を1トップに、両サイドに張った柴﨑純平、松下侑司の前線3人と、やや引き気味に位置した上赤坂佳がポジションチェンジを繰り返し相手ゴールに迫った。上赤坂佳、主将のDF阿部巧也、MF田丸誠らJFL経験者と、松下ら若手が融合した魅力あふれるチームだ。
 クラブは2007年にNPO法人として認証され正式発足。「アルテリーヴォ」はイタリア語の「ARTE」(芸術)と「ARRIVO」(到達)を組み合わせた造語。現在は和歌山県社会人1部リーグに所属し、Jリーグ入りを目指している。「Jリーグを目指しているチームだし、和歌山で勝つのが目標じゃない。なんとか1回戦に勝って、2回戦でガンバ大阪と対戦できたら」と原見仁志監督。「どの試合にも“和歌山を代表する”という気持ちで取り組んでいますし、その気持ちをプレーで表現しているので、そういうところを見てもらいたい」と上赤坂佳。まずは初戦突破を果たし、2連覇中の王者、G大阪に挑みたい。
(フリーライター 尾崎ルミ)

鳥取県/米子北高校

 県選手権で初優勝を飾り、高校勢としては1999年の境高校以来、11年ぶりとなる天皇杯出場を果たした。昨年は県勢初となるインターハイ準優勝や高円宮杯出場、今夏もインターハイで流通経大柏(千葉)など強豪を下しての2年連続ベスト8と躍進を見せている。
 県大会では、1回戦で中国大学リーグ所属の鳥取大学に7-0。決勝では、県リーグ1部で首位を走るSC鳥取ドリームスと対戦。JFLガイナーレ鳥取出身選手をそろえ、技術と経験で勝る相手に先制を許しはしたが、自慢のスタミナで走り勝ち、素早い攻守の切り替えから決定機を何度もつくった。シュート23本を浴びせ、2-1で逆転勝利をおさめた。
 チームの基本スタイルは「堅守速攻」。しっかりした守備ブロックを敷き、ボール保持者に素早く複数でプレスをかける。カバーリングの連動性も良い。守備の要は、J1鹿島アントラーズに入団が内定している昌子。中学時代は前線のポジションのため足元の技術にたけ、正確なロングキックを持つ。1対1やヘディングの競り合いの強さも兼ね備え、道下との2センターバックで相手をはじき返す。左の谷田主将が冷静なプレーで後方からチームを支え、長身のGK助田は2年生ながら大舞台での経験を積んできている。
 攻撃は、中盤を忙しく動き回る野原がセカンドボールを拾い、素早く展開していく。速攻のターゲットは、J1川崎フロンターレ入りが決まっているFW谷尾。昨年のインターハイ得点王で、シュート意識・精度が高く、コンスタントに点を取れる。179㌢、73㌔で体幹が強さを生かしたポストプレー、反転してからのシュート、打点の高いヘディングが武器。2トップを組む小笹も献身的な動きが光り、スーパーサブとして突破力のある山本が控える。2トップの下にはドリブラー川元。重心が低く切れ味するどいドリブルで仕掛け、県決勝でも決勝ゴールを決めている。
 さらに今年はサイド攻撃も強化。FW谷尾にマークが集中したことで空いたサイドで、パス、ドリブル、シュートとなんでもできる薮田、左足のキックが強烈な西田が起点となる。サイドバックの庫谷も正確なクロス、ロングパスで攻撃に絡む。
 春先から中国プリンスリーグ、インターハイ、各種大会で強豪と好勝負を演じ、チームは成長してきている。社会人からの勝利もさらに自信を加え、「県の代表としてしっかり戦いたい。まずは初戦だが、1勝してJのチームと戦いたい」と谷田主将。臆することなくチャレンジしていき、頂点を目指す全国選手権に向けて弾みをつけたい。
(日本海新聞)

島根県/ デッツォーラ島根E.C

 島根県予選を兼ねた第15回島根県サッカー選手権決勝で同じ中国リーグのヴォラドール松江を2-0で下し、2年ぶり6度目の出場を決めた。昨年は決勝で浜田FCコスモス(県リーグ1部)に敗れ、連続出場記録が5で途切れたが、「優勝しかない」と強い気持ちで雪辱を果たした。2001年にセントラル中国のチーム名で創立。2006年に中国リーグに昇格。08年に現チーム名になった。04年の84回大会で初出場。同大会の3回戦進出が最高成績。
 基本布陣は「4-2-3-1」。スピード生かしたサイド攻撃と、小気味よいパス回しをうまく使い分け、多彩な攻撃を繰り広げる。攻撃の中心は1・5列目の3選手。中央で攻撃を組み立てる主将MF庄司、得点感覚に優れチーム得点王のMF平田、スピードが魅力のMF清水。空山、田栗などもベンチに控え選手層は厚い。1トップの篠原は175センチと高さはないが、ボディバランスに長けている。篠原にボールが収まると選手が次々と飛び出してくる。守備はベテランで182センチの高さがある渥美が中心。県予選3試合で1失点と安定感が光った。
 1回戦の相手は広島県代表の佐川急便中国SC。同じ中国リーグのチーム相手に気合いも入る。若三監督は「まずは初戦突破して、2回戦でサンフレッチェ広島と戦いたい」と島根県勢4年ぶりの初戦突破と、強豪との対戦を目標に据える。
(山陰中央新報)

岡山県/ 環太平洋大学

 岡山県代表を争う第30回岡山県サッカー選手権大会決勝戦で強豪クラブチーム・RKクラシックを1-0で下し、初出場を決めた。決勝では序盤からボールを支配し、チームが目指すパスサッカーで何度も決定機をつくったが、相手の堅守を崩せず前半を終わって0-0。後半は、効果的にサイド攻撃を織り交ぜることで守備を揺さぶると17分、待望の得点を奪って勝負を決めた。
 1回戦では、Jリーグ2部ファジアーノ岡山のセカンドチーム・ネクスファジに1-0で辛勝。格上相手に堅守速攻の戦術で臨み、少ないチャンスを確実に生かした。準決勝では、中国サッカーリーグで上位争いを繰り広げる新日本石油精製水島を3-1で破って勢いに乗った。
 2007年4月の開学と同時に創部。横浜フリューゲルスなどでプレーした桂秀樹監督が指揮を執り、全国から集まった選手たちが日々、厳しい練習に励む。大学は岡山市東部の東区瀬戸町にあり、学内と赤磐市の2カ所に人工芝グラウンドを持つ恵まれた練習環境。09年には岡山学生サッカーリーグ1部で初優勝を飾るなど学年がそろうにつれ、着実に力をつけてきた。今年は5月の全日本大学トーナメント中国地域予選を制し、初の全国切符を獲得。本戦では優勝した駒大に1回戦で敗れたものの、「全国でも自分たちのサッカーが通用する」という手応えを得たことで練習の雰囲気が一変し、選手たちはこれまで以上に質の高いトレーニングに励んでいる。
 基本布陣は中盤の底に守備的MF(アンカー)を配した4-3-3。攻守の切り替えの速さと豊富な運動量を生かした全員攻撃、全員守備を掲げる。攻撃では複数の選手が連動し、テンポよくパスをつないでシュートへ結びつける。守備は、長身選手が少なく高さがないだけに、前線からの激しいプレスでボールを奪うことを徹底している。  前線の柱はFW森川龍誠。168㌢と上背はないが、抜群のスピードと技術を生かしてゴールを量産。ドリブル突破が武器のMF吉波毅顕、中盤から前線へと走り込むMF中村隼人らも攻撃にアクセントを加える。抜群の安定感を誇るGK植田峻佑が守備陣を引き締める。
 今大会の目標は初戦を突破し、Jリーグ1部の横浜・F・マリノスと対戦すること。主将のMF桑江創は「初戦の長崎代表戦から格上との対戦が続くだろうが全力でぶつかり、大舞台を楽しみたい」と力を込める。
(山陽新聞)

広島県/ 佐川急便中国SC

 広島県予選を兼ねる全広島サッカー選手権で出場枠が都道府県単位になった1996年以降、初めて社会人チーム同士が顔を合わせた決勝。前、後半に2得点ずつを挙げ、初出場を目指した富士ゼロックス広島に4-1で快勝。2005年以来となる2度目の出場を決めた。
 昨年は決勝で福山大に0-4で敗れ、天皇杯出場を今季最大の目標に置いてきた。「2年越しのリベンジ」の合言葉とは裏腹に、1回戦の福山平成大戦はPK戦勝ち、続く準々決勝の瀬戸内高戦も3-2と大会序盤は、波に乗れない戦いが続いた。 
 本調子に戻ったのは、準決勝の広島大戦から。堅守をベースに、攻撃も細かいパス回しを中心とした本来の持ち味を発揮。2-0で完封勝ちし、決勝へ弾みをつけた。
 J2甲府などに在籍、今季松本山雅FC(長野)から加入した寄井を7月以降、センターバックに置いて最終ラインは安定感が増した。攻撃は、決勝で2アシストを記録したMF本田と河上を中心に組み立てる。4得点を異なる選手が決めた決勝が示すように、守備位置に関係なくチャンスと判断すれば、前線へ上がり、得点を狙う意識が浸透している。
 創部は89年。25人の部員はグループ企業で働き、その多くが宅配業務をするセールスドライバーだ。広島県リーグ3部から徐々に力を蓄えて04年、中国リーグ昇格を果たした。翌年、早くもリーグ制覇を達成。09年には、2度目の優勝を飾った。
 全体練習は、社業を優先するため、週2回がやっと。それも、仕事が終わった午後8時すぎから、主に広島市内の高校のグラウンドを借りて練習している。「練習時間や環境を言い出したら、大学生などには勝てない。勝つために、みんなで知恵を絞って戦うのが面白い」と堀下主将。ハングリー精神も武器の1つだ。
 前回出場時は、1回戦に勝ったが、続く2回戦で敗退。Jリーグ勢と当たる3回戦進出を目前で逃した。9月3日の1回戦では、同じ中国リーグ所属のデッツォーラ島根(島根)と顔を合わせる。初戦を突破すれば、5日の2回戦では、Jリーグ1部(J1)のサンフレッチェ広島が待つ。「公式戦でJリーグ、それも地元のチームとできるめったにないチャンス。選手のモチベーションも高まっている」と広田監督。5年越しの夢をかなえるため、チーム一丸となって本大会に臨む。
(中国新聞)

山口県/ レノファ山口

 山口県サッカー教員団を母体として、山口市を本拠地に2006年に発足した。4月1日に就任した月岡監督の下で臨んだ山口県サッカー選手権では、決勝で徳山大に4―1で快勝し、2年連続3度目の出場を決めた。昨季の中国リーグでは13勝1分4敗と2位だったが、今季は首位を独走中。日本フットボールリーグ(JFL)昇格と、来年10月に控えた山口国体での優勝を目標に据える選手たちの士気は高い。
 県選手権では、豊富な運動量を発揮して順当に勝ち抜いた。「4―2―3―1」を基本布陣に、トップのFW中川と、背後の鈴木、福原、田村の3人がポジションをチェンジしながら相手守備をかき回し、決勝までの3試合で計18得点。月岡監督が「春先から最も成長し、波に乗っている」と評価するMF田村は、決勝でもDF伊藤とのコンビでCKから2点を上げるなど、2アシスト2得点と好調さを維持。中国リーグで14得点のMF福原は、攻撃面だけでなく守備面でも存在感を見せている。
 昨年の天皇杯は、1回戦で三菱自動車水島(岡山)をPK戦で下したものの、2回戦でJ1の川崎に敗れた。今年は、1回戦で鳥取県代表の米子北高と対戦。突破すれば2回戦でJ1の湘南と顔を合わせる。「相手が油断やすきを見せれば勝機はある。勝ちたいという気持ちでは絶対に負けていない」と月岡監督は語気を強める。
 今年のスローガンは「常昇から常勝へ~最後は、気持ち」。月岡監督は「運動量の強化を中心に、練習は十分に積んできた。何よりチーム全体の気持ちが乗っている。強い気持ちで一つ一つ着実に勝ち上がりたい」と力強く話す。新監督の下で勢いに乗るチームは、格上との一戦を見据える。
(中国新聞)

香川県/ カマタマーレ讃岐

 今大会の予選を兼ねた第15回香川県サッカー選手権大会決勝で、大学県王者の高松大に5-0で快勝。6年連続12度目の出場を決めた。
 高松市などを拠点にJリーグ参入を目指して活動するクラブチーム。1956年に発足した高商OBサッカー部が前身で、以降、香川紫雲FC、サンライフFC、高松FCと名称を変更し、2006年に公募で現チーム名になった。カマタマーレは、香川の名産「さぬきうどん」の食べ方の一つの「釜玉(かまたま)うどん」と、イタリア語で海を意味する「マーレ」を合わせた造語。
 昨季まで車いす指導者の羽中田昌氏が指揮を執っていたが、今季は高松市出身で、昨年Jリーグ2部(J2)熊本の監督を務めた北野誠氏が新監督に就任。現在、主戦場の四国リーグでは9勝2分けの勝ち点29で首位を快走。目標に掲げる「JFL(日本フットボールリーグ)昇格」へ向けて大きな手応えを感じている。
 基本システムは4-4-2。北野監督の方針で「走るサッカー」を徹底し、豊富な運動量と個々のスピードを生かした突破力が武器のチームに様変わりした。始動から半年以上が経過して選手間の連動性も増しており、体幹などのフィジカル強化にも継続的に取り組む。先発メンバーは流動的だが、7月にJFLのFC町田ゼルビアから期限付き移籍で加入した飯塚や、Jリーグ1部(J1)鹿島出身の吉沢ら特に中盤に好選手を多くそろえ、DF陣も187㌢の波多野、経験豊富な神崎の両センターバックを中心に堅実だ。
 昨大会は1回戦でSC鳥取ドリームス(鳥取)に1-0で辛勝し、2回戦でJ1のFC東京と敵地の東京・味の素スタジアムで対戦。0-4で完敗したが、選手たちは自分たちの戦い方を最後まで貫き、大きな財産を得た。今大会も初戦突破が大前提となるが、2回戦で待ち構えるJ1大宮と相対し、残るリーグ戦はもちろん、JFL昇格の懸かる11月の全国地域リーグ決勝大会へも弾みをつけたいところ。
 Jリーグ入りを本格的に見据え、クラブ組織を株式会社化して3シーズン目。経営環境は依然厳しいが、3月には今季中に準加盟申請する方針を示し、ジュニアユースを発足させるなど、一歩ずつ「J」の舞台へ向けて歩みを進める。ユニホームには今季も「さぬきうどん」の文字が踊る。どの試合も地域の誇りを胸に最後まで精いっぱい戦うだけだ。
(四国新聞)

徳島県/ 徳島ヴォルティス・セカンド

 天皇杯全日本選手権への出場を懸けた第15回徳島県選手権決勝では三洋電機徳島を5-0で圧倒し、5年連続の出場権を獲得した。飛び抜けた選手はいないものの、堅守からの速攻を武器に2年ぶりの初戦突破を目指す。
 例年に比べやや攻撃力を欠きながらも、全員が最後まで走り負けない。基本システムは4-4-2。春先は前線からプレスをかけて高い位置でボールを奪う攻撃スタイルだったが、夏を迎えて戦術にメリハリをつけた。ラインを少し下げて2列目、3列目で堅い守備ブロックを敷き、奪い取ると素早く攻め上がる。
 ポストプレーの得意な185センチの河村とスピードあふれる高田の2トップが攻撃の柱。縦への突破力がある佐藤とパスのうまい中川のサイドMFも攻めに厚みを加える。両サイドを何度もアップダウンする野口、二瓶の左右サイドバックも貴重な得点源となる。
 守りは対人プレーに強い志水、武内の両センターバックと筒井、古山のダブルボランチが要となる。GK福岡はシュートを止める能力に優れ、ハイボールの処理も得意だ。
 J2で戦う徳島ヴォルティスへ選手を昇格させることがチームの最大の目的。これまでに5選手を送り出した。日本フットボールリーグ(JFL)入りも大きな目標。
 トップチーム入りへのモチベーションを高めようと、ヴォルティスが練習する午前中に隣接するグラウンドで練習。選手たちは午後から、スポーツジムのインストラクターや飲食店店員などのアルバイトをしている。選手の在籍期間は原則2年と決まっており、1、2年目のフレッシュなメンバーがトップ入りを目指し切磋琢磨(せっさたくま)している。
 2連覇を狙う四国リーグでは試合を終え(8月31日現在)8チーム中3位とやや苦戦しているが、選手たちは現在、天皇杯に照準を絞って猛練習に励んでいる。県選手権決勝ではボールを奪ってからの素早い攻撃に課題が残った。出場決定後は守から攻への切り替えに力を注ぐ。
 1回戦の相手はJFLの強豪・FC琉球(沖縄)。個々の能力では相手が上回るが、昨年も同じ沖縄勢に初戦で敗れているだけに雪辱を誓う。勝てばJ2の千葉との対戦を控えており、選手たちは気合十分だ。
 筒井主将は「自分たちの持っている力を出し切る」。就任4年目の東監督は「見ている人にひたむきさが伝わる思い切ったプレーができれば」と意気込んでいる。
(徳島新聞)

愛媛県/ 愛媛FCしまなみ

 2010年愛媛県サッカー選手権大会決勝で社会人チームの久枝FCを4-0で下し、2年連続の全国出場を決めた。
 1976年、社会人チーム「大西サッカークラブ」として設立。2001年以降は四国リーグを主戦場とし、09年にJ2愛媛FC傘下のアマチュアチームとなった。再スタートを切った昨季は四国リーグ3位、国体選抜にも8選手が選出された。さらに地元・済美高出の渡辺一仁とG大阪ユース出身の持留新作の2選手がトップ昇格を果たすなど実績を残した。
 今季の所属選手は23人(コーチ兼任含む)。昨季から指揮を執る元J1鹿島育成部コーチの八木邦靖監督の指導のもと、プロ選手の輩出と日本フットボールリーグ加盟を目指しレベル向上を図っている。今季の四国リーグは11試合を終えて8勝2分け1敗で2位につける。
 基本システムは4-4-2で、ボールを保持して個の持ち味を前面に押し出すサッカーが持ち味。攻撃のキープレーヤーは北森。足元の技術が高く展開力がある。小笠原は得点力があり、柏木健は強烈なヘッドで得点を量産するなど前線は役者ぞろい。スピードのあるドリブルが得意な中原や運動量の豊富な柏木享がサイドからチャンスメークする。守備では主将の稲田がDFラインを統率。中盤ではボランチの山口がバランスを取る。
 県大会準決勝は、高校勢の済美高に前半2失点。後半にも勝ち越しを許すなど冷や汗をかいた。その反省を生かし、決勝では立ち上がりから攻めて得点を重ね完勝。全国大会に向けて自信を取り戻した。
 1回戦は福岡県代表の福岡教育大と対戦。八木監督は「相手はハードワークしてくるチームと聞いている。しっかり地に足を着け、持ち味を出して結果を残したい」と話す。昨年は1回戦で高知県代表の高知大に0-4の完封負け。今回も大学勢が相手とあって「Jの下部組織として負けるわけにはいかない」とイレブンの鼻息は荒い。勝てば2回戦はJリーグチームの磐田と当たり、プロを目指す選手たちにとって絶好のアピールの場にもなる。稲田主将は「チーム一丸となって勝ち上がり、J1にチャレンジしたい」と意気込んでいる。
(愛媛新聞社)

高知県/ 高知大学

 天皇杯出場権を懸けた8月22日の第15回高知県選手権決勝は、四国リーグの南国高知FCとの15年連続の顔合わせになった。1-0で折り返した後半の立ち上がりに追い付かれたが、終盤の決勝ゴールで、8年連続15度目の優勝を手にした。
 近年の活躍は目覚ましく、夏の全日本大学トーナメントは昨年準優勝、一昨年3位、全日本大学選手権も昨年ベスト16、一昨年ベスト8。Jリーガーも続々誕生し、今年もDF実藤がJ1川崎入りを決めている。
 現在、部員は過去最多の90人。高校時代から全国の舞台で活躍した選手も多く、チーム内競争も激しい。昨年の主力がほとんど残り、今夏の全日本大学トーナメントもベスト8。四国インカレでは、2年ぶりにタイトルを取り戻した。
 野球部と半分ずつ共用する土のグラウンドは、サッカー場が1面取れるかどうか。恵まれた環境ではないが、狭いスペースを生かして基本を磨き、フットサルやビーチサッカーなどでフィジカルを鍛えている。
 素速い攻守の切り替えから手数を掛けずに攻め上がる「シンプルサッカー」が特長で、スピードのあるパスワークも持ち味。運動量も豊富で、能力の高い選手がそろっている。
 基本システムは、FW布施をワントップに置く4-5-1。中盤を厚くし、ボールへの寄せを速くするスタイルは昨年から変わっていない。
 香川、芝野、西山らのMF陣は得点力があり、突破力を備えた両サイドバックと連係した攻撃も武器だ。MFの主将酒井は攻守の要。DF陣は170㌢台の選手が多く、上背はそれほどないが競り合いには強い。
 最終ラインを統率する実藤を中心に堅実で、GKの片山は185㌢の長身。高いボールに強く、判断力も優れている。
 ドリブルでの突破力のあるMF永瀬ら、控え組も充実。国体成年男子県チームのメンバーでもあるFW大西は、香川県との国体四国予選決勝で決勝点を含む2ゴール。高知県の4年ぶり国体出場に貢献した。1年生塚本は県選手権決勝に途中出場。鋭い飛び出しで再三、好機をつくった。
 昨年大会は、3年ぶりに初戦突破。2回戦はJ1磐田に0-2で敗れたが、善戦は自信になった。野地監督は「地方大学の意地を見せたい。高知大らしいサッカーで、Jへの挑戦権を得たい」と、香川県代表との初戦に闘志を燃やしている。
(高知新聞)

福岡県/ 福岡教育大学

 平成22年度第14回福岡県サッカー選手権大会で、準決勝、決勝と続けて逆転勝ち。3年ぶり4度目の出場を決めた。九州大学リーグでは前期を終えて10チーム中4位と苦しんでいるものの、失点はリーグで2番目に少ない6。伝統の堅守と確実につなぐパスサッカーで勝ち上がった。
 チームの中心を担うのは、来年のJ1サンフレッチェ広島入りが内定しているMF西岡だ。1年時からレギュラーを守り続けるボランチで、前回出場した3年前の天皇杯も経験した。視野の広さと正確なロングパスを武器に攻撃を組み立てる。福岡県サッカー選手権準決勝では昨年天皇杯2回戦でJ2水戸ホーリーホックを破った福岡大に同点の直接FKを決め、チームを救った。
 攻めてはアビスパ福岡U-18出身で中盤もこなせるDF佐々木やMF中原、DF肥田ら前線に駆け上がる選手が多く、どこからでも点を狙える。2年前の全国高校総体で3位に入った大津高出身のGK江藤をはじめ、高校時代に全国大会を経験している選手が多く、大舞台でも力を出しきれそうだ。
 悲しみを乗り越えての天皇杯出場でもある。長年監督を務めてきた三本松正敏氏が2月下旬に病気で亡くなった。「春先はショックで九州大学リーグでも勝てなかったけど、次第に勝とうと一丸になってきた」。昨年まで現役だった大学院生の中野大地・現監督は振り返る。
 練習メニューは監督と4年生が話し合って作成。西岡が広島のペドロヴィッチ監督から教わった「全員がイメージを共有する」という連係プレーを、選手同士が意見をぶつけ合いながら練習してきた。スローガンは、仲間のために戦う「戦友」。レギュラーと補欠を分け隔てず、選手全員で練習させてきた三本松氏の教えにも沿っている。西岡は「目立った技術のある選手はいないけど、チーム全員が同じ方向に気持ちを持っていけば結果を出すのが福岡教育大なんです」とチームワークを強調する。
 公式戦では今も必ず三本松氏の遺影をベンチに置いて戦っている。「天皇杯でもJ1のチームにひと泡吹かせたい。どこまで通用するか分からないけど、可能性がある限りはチャレンジする」と西岡は決意した。初戦で愛媛FCしまなみに勝てば、2回戦の相手はJ1のジュビロ磐田。亡き恩師のサッカーを花開かせるためにも、同校初のJリーグ勢撃破を狙っている。
(西日本新聞)

佐賀県/ 佐賀大学

 昨年敗れた九州INAXに準決勝でPK戦の末、雪辱を果たすと、決勝は川副クラブに3-2。九州リーグの社会人を連破し、3年ぶり4回目の佐賀県代表の座に就いた。「ベストアメニテイスタジアムで試合をしたい」。2回戦で待ち受ける地元J2・サガン鳥栖との対戦を心待ちにしている。
 部員は約50人。今季は天皇杯と九州大学リーグ上位進出に照準を合わせてきた。目標の一つをクリアしたが、過去出場した天皇杯はいずれも2回戦の壁に阻まれている。主将のDF小宮山哲夫は「天皇杯の切符を得たのは大きいが、あくまでも出発点。佐賀代表の自覚を持って大会に臨み、未知の扉をこじ開けたい」と意気込む。
 課題のスタミナ不足解消のため、練習にランニングメニューを取り入れた。島崎弘規監督は「ただ走るだけではダメ。ボールを使い、より試合で生きるよう心掛けて取り組んでいる」と話す。
 基本布陣は3-5-2。ただ、ポジションにとらわれない攻撃が持ち味だ。軸はMF黒木晃平。Jリーグ特別指定選手としてサガン鳥栖に在籍し、ボランチとしてスタメン出場も果たした。大学ではトップ下でプレー。線の細さが課題だったが、筋力トレーニングで力強さが増した。高い技術に加え、局面を打開するドリブル突破も魅力だ。
 チーム1のスピードを誇る1年生MF松山周平は左サイドからチャンスメーク。裏に抜けるスピードが持ち味のFW井上博喜らがゴールを狙う。これにMF中内田浩介、山口伸らが絡み、相手に的を絞らせない分厚い攻撃を展開する。
 守備はDF小宮山を中心に堅実。小宮山は最終ラインからのコーチングでチームを鼓舞。カバーリングも正確だ。DF串間亮太は、170㌢後半の上背ながら高さにも強く、セットプレーでは攻守両面で威力を発揮する。チーム唯一の180㌢台のGK長尾祐介が、最後のとりでとしてゴールを死守する。
 県選手権決勝では、炎天下で運動量が落ち、相手に押し込まれる場面が相次いだ。小宮山は「ペース配分を考えずに一本調子でやる悪い面が出た」と振り返る一方、「技術は社会人相手でも十分通じることが分かった。後はメンタルを鍛えるだけ」と手応えも語る。
 天皇杯1回戦は熊本県代表の熊本学園大付属高が相手。強豪ぞろいの熊本予選を勝ち上がってきただけに、高校生といえども油断はない。「初戦を必ず突破し、佐賀対決を実現したい。あわよくばその上も」。島崎監督は虎視眈々(たんたん)と〝番狂わせ〟を狙う。
(佐賀新聞)

長崎県/ V・ファーレン長崎

 第21回県サッカー選手権決勝で三菱重工長崎を3-2で下し、2年連続の出場を決めた。Jリーグ入りを目指し2005年に「有明SC」を母体に発足。日本フットボールリーグ(JFL)に初参戦した昨季は12勝8分け14敗の11位という不本意な成績に終わった。
 今季は監督に昨季J2のザスパ草津を率いた佐野達氏が就任。「美しく勝つサッカー」を掲げ、攻撃的な姿勢を貫いている。リーグ前期こそ7勝3分け7敗と勢いに乗れなかったが、後期は6試合を終え3勝2分け1敗と調子は上向き。順位も6位まで上がり、目標の4位以内が現実味を帯びてきた。(後期第6節終了時点)。
 チームの軸はGK近藤、DF藤井、MF山本、FW有光のセンターラインだ。今季ザスパ草津から加入した藤井は、DFリーダーとしてラインを統率。空中戦にも強く、堅守を支える。近藤は昨季全34試合にフル出場。今季も全試合でゴールマウスを守り続け、ここまでの1試合平均失点は1点以下に抑えている。
 中盤の底には今季J2ロアッソ熊本から加入した山本。闘争心むき出しでピッチ上を駆け回り、プレーに妥協がない。ミドルシュートが得意の川崎がトップ下で攻撃をけん引。サイドにも精度の高いクロスが武器の佐藤由、ドリブルで局面を打開できる大塚ら個性豊かな選手がそろう。
 FW陣は今季ここまで8得点のエース有光、成長著しい2年目の宮尾らを中心にレギュラー争いが過熱している。7月にはJリーグ通算53得点を挙げた32歳のベテラン森田を補強。加入直後の3試合で2ゴールと早くも勝負強さを発揮している。
 昨年は2回戦でJ1の横浜F・マリノスに0-4で敗北。今年も初戦を勝ち上がれば2回戦でマリノスと対戦する。同クラブOBでもある佐野監督は「どこが相手でも自分たちのスタイルは変わらない。まずは初戦をしっかり突破したい」と力を込める。
(長崎新聞)

熊本県/ 熊本学園大学付属高校

 県予選はいずれも接戦を制し、初の天皇杯出場を決めた。1回戦は社会人クラブチームのFCKマリーゴールドにPK勝ち。準決勝は連覇を狙った熊本学園大に2―1で競り勝ち、決勝は昨冬の全国高校選手権と夏のインターハイで8強入りしたルーテル学院高をPK戦の末に下した。「子どものころから、正月の決勝を楽しみにしてきた。名誉ある大会に出場でき、喜びを感じている」と厚晴仁監督。
 1967(昭和42)年創部。1994(平成6)年、全国高校選手権に初出場し、ベスト8入りした。厚監督は当時のGKで副主将。しかし、その後は大津高、ルーテル学院高の2強の牙城を崩せず、全国の舞台から遠ざかっていた。
 現在、部員は83人。今季は「革命を起こす」をスローガンに掲げており、「いつまでも大津、ルーテルの時代じゃいけない」(坂本敬主将)とイレブンの士気は高い。今回、2強の一角を崩したことは、16年ぶりの全国高校選手権出場に向けても、大きな収穫となった。
 厚監督が「ここ10年で最も充実している」と自信を見せるのが攻撃陣。決勝で2ゴールを決めたFW溝口祐真をはじめ、小気味よいドリブルが持ち味のMF橋本隆治、センス抜群のFW西脇晶哉ら個人技に優れた選手がそろう。1月の新人戦準決勝はルーテル学院高に0-7で大敗するなど守備面に不安を抱えていたが、ボランチの坂本主将、ディフェンスリーダーのCB仲道康平を中心に統率がとれてきた。
 基本布陣は4-3-3。全体に守備の意識が浸透しており、ボール保持者に対して2、3人で囲い込み、ボールを奪うと素早く前へ送る。前線の選手はポジションにとらわれず動き回り、少ないタッチ数でパスをつなぎゴールをめざす。球際の激しさ、攻守のあらゆる局面で数的優位をつくることをテーマに掲げており、かなりの運動量を必要とするスタイルだが、厚監督は「例年以上に走り込んできましたから」と自信を見せる。準決勝は格上の大学生を相手に当たり負けせず、決勝は終了間際に2ゴールを許したものの序盤から高い個人技を誇るルーテル攻撃陣をはねかえし続けた。
 天皇杯1回戦の相手は佐賀大。2回戦はJリーグ2部のサガン鳥栖が待ち受ける。坂本主将は「自分たちのサッカーがどれだけ通用するか試したい。佐賀大に勝って、Jリーグのチームと対戦してみたい」と燃えている。
(熊本日日新聞)

大分県/ HOYO Atletico ELAN

 大分県代表はHOYOAtleticoELAN。悲願だった天皇杯の出場権を創立8年目で獲得した。
 代表を決める県サッカー選手権決勝トーナメントの準決勝(8月15日・大分市)では、大分トリニータU-18に4-1で快勝。決勝(29日・同)では、同じ社会人チームの新日鉄大分と1-1で延長戦に突入。それでも決着がつかずPK戦で4-1で勝利。代表権を得ると、ベンチ前で全選手がもみくちゃになりながら喜びを全身で表した。 チームは今季から九州サッカーリーグに昇格。元Jリーガーの堀健人、田中淳也、長谷川豊喜らの活躍で、連勝街道を突っ走っている(8月末現在10連勝中)。13試合を戦って12勝PK負け1。勝ち点37で首位をキープしており、チームも好調を維持している。
 センターバックは、長身の田中淳也と、フィジカルの強い清永研治。この2人を中心にした守りは堅く、リーグ戦13試合での失点は、わずか5。同リーグで戦う9チームの中で最少で、安定感は抜群。チーム最年少のGK野寺和音が、決勝トーナメント決勝で好セーブを連発するなど、若い選手が活躍している。
 攻撃は早い攻守の切り替えから攻めるサイド攻撃が持ち味。右サイドバックの長谷川豊喜は運動量が豊富でスピードがある。左サイドバックの宮田繁輝は1対1に強い。
 スピードが身上の左サイドハーフの原一生、視野が広く正確なパスを出す中島崇文らが攻撃の基点。エースの堀健人はテクニックとスピードを兼ね備えたFW。リーグでは17得点、13アシスト(8月末現在)を挙げ、いずれもランキング1位。このほか豊富な運動量で前線を駆け回るFWの金正旭もいる。
 指揮を執るブラジル出身のブレノ・エンヒケ・バレンチン監督は「勝ち進めばJリーグのチームと戦える。しっかりと準備をして、チャレンジャー精神で思い切りぶつかりたい」と、格上チームとの対戦を楽しみにしている。堀は「チームの得点に絡んで、勝利に貢献したい」と意欲を燃やしている。
 チームは、豊洋精工(本社・大分県国東市)と、ソイテックスジャパン(同・大分市)の社員らが中心となって2003年8月に発足した「HOYOFC」が前身。05年4月に下部組織の挟間ジュニアサッカーチームAtleticoELANと合併し、現在のチーム名になった。大分県の大分市、由布市、別府市がホームタウン。09年に県リーグ1部で優勝。10年1月、九州各県リーグ決勝大会で優勝し、九州リーグに昇格。今季はJFL昇格を目標に掲げている。
(大分合同新聞)

宮崎県/ ホンダロック

 第14回宮日旗・NHK杯宮崎県サッカー選手権大会決勝で宮崎産経大を1-0で破り、4年連続9度目の出場を決めた。1964年創部の企業チームで、宮崎市がホーム。「アマチュア日本一」を目指し、県サッカー界をリードしている。
 九州リーグを初制覇した2004年に、日本フットボールリーグ(JFL)へ昇格。成績不振で06年に降格した。昨年、3年ぶりにJFLへ復帰。今季は後期第6節終了時点で6勝8分け9敗と18チーム中13位につけている。
 基本システムは3-4-3。3バックの中央に入るベテランDF白川伸也は、的確な指示とカバーリングで相手のチャンスを確実につぶす。
 中盤は2人の守備的MFに注目してほしい。ルーキーの諏訪園良平は170㌢、64㌔と小柄だが運動量が豊富。90分間、献身的にボールを奪いに行く。前田悠佑はキープ力と視野の広さに優れ、自らもゴールを狙うゲームメーカーだ。
 FW陣は層が厚い。ポストプレーが得意な熊元敬典、ボールコントロールの巧みな山下優一郎、ドリブラーの下木屋翔、裏への飛び出しが持ち味の伊勢隆司など、タイプの異なる選手が多くそろう。
 天皇杯は相性が良く、昨年は2回戦でJリーグ2部(J2)の東京Vを撃破。05年は県勢最高の4回戦まで勝ち進んでいる。隣県対決となる1回戦を勝ち進めば、J2大分が対戦相手。廣池寿監督は「目標は3回戦進出。自分たちの力がどれだけプロに通用するのか挑戦したい。県予選で敗れたチームの分も大暴れしたい」と抱負を語った。
(宮崎日日新聞)

鹿児島県/ 鹿屋体育大学

 8月29日の第25回鹿児島県サッカー選手権決勝で、神村学園高を4―0で破り、2年連続11度目の出場権を手にした。日本唯一の国立体育大学の体育会サッカー部として1984年に創部。九州大学リーグ1部では、過去に7連覇の実績を持つ。昨年の天皇杯では、2回戦でJ2徳島を3―1で撃破、3回戦でJ1磐田に敗れたものの、延長までもつれ込む接戦を演じた。今回は悲願の「J1越え」を狙う。
 今年のチームは、スピードに乗った攻撃が武器。九州大学リーグで得点ランク2位につけるFW岡田(3年)は、常にDFラインの裏を狙い、得点感覚にも優れる。多田(4年)、桃井(2年)の両サイドMFは、自由にポジションチェンジを繰り返し、相手守備を切り裂く。この3人に、守備的MFの小森(4年)が果敢な飛び出しで絡み、攻撃に厚みを加える。守備は高さのあるセンターバック坂井(2年)が中心となる。
 昨年は、主将赤尾(現JFL鳥取)が強力なリーダーシップを発揮したが、今年は「グラウンドに『大将』がいない」(井上尚武監督)ことが悩み。チーム一丸となって、Jリーグ勢に対抗したい。長年、指揮を執ってきた井上監督が、今年度限りで定年退官となる。「最後の年に花を添えたい」とチームの士気は高まっている。
(南日本新聞)

沖縄県/ FC琉球

 沖縄からJリーグを目指し、現在はJFLで戦うプロチーム。天皇杯県予選決勝は海邦銀行SC(九州リーグ)に4-1で快勝。格の違いをみせつけ、4年ぶりの奪還を果たした。
 JFL参入5年目の今季、後期第6節を終え5位と好調。J昇格に必要な準加盟こそ果たしていないが上位争いを繰り広げ、来季以降の昇格を目指し飛躍を遂げている。
 2006年のJFL参入から思うような結果が残せず低迷したが、08年シーズンには、元日本代表監督のフィリップ・トルシエ氏を総監督に招へいし、チームの形を模索してきた。
 今季は09年シーズンから就任した新里裕之監督が継続して指揮。DF大澤雄樹やMF國仲厚助、中村友亮ら、軸になる選手も残留したことで、チームの成熟度が高まってきている。
 琉球が目指すのは、パスを細かくつなぎながらボールを支配し、ピッチを広く使って相手ゴールを目指す「ポゼッション・サッカー」。まだ荒削りながら、確実に成長の跡をみせている。
 攻撃力が飛躍的にアップした。その攻撃を生み出す中盤を支えているのは、新里監督が「琉球の心臓」と信頼を置く國仲と秦賢二の両ボランチ。彼らが、積極的に前線に顔を出すことで、攻撃に厚みが増した。
 昨季リーグ戦の得点は國仲2点、秦は1点だけ。今季はすでに國仲7点、秦が5点と数字にも表れている。
 さらに、新加入のFW田中康平が天皇杯予選決勝でも見せたように、中盤の底でディフェンスとオフェンスのつなぎ役を担う「アンカー」のポジションにも適性を見せ、オプションも豊富だ。
 MFの中村や松田英樹は運動量が多く、献身的な動きを惜しまない。大ベテランの永井秀樹の存在感は絶大で、チームの精神的な柱になっている。
 FWはベテランの山下芳輝、スピードのある新川織部、スーパーサブの杉山洋一郎らがいるが、もう少し決定力がほしい。今季のリーグ戦でチーム最多の8得点を挙げるなど、成長著しい田中靖大の故障からの復帰が待たれる。
 DFはセンターバック陣が大澤を中心に、初田真也、新加入の伊藤竜司も180センチ台と高さがある。両サイドバックの安定がチームの課題だ。
 JFLで上位争いを繰り広げることで、サポーターらによるJ昇格に必要なスタジアム建設の署名活動など、徐々にその機運が高まってきている。
 永井主将は「天皇杯は唯一、上のカテゴリーのチームと対戦できるチャンス。琉球旋風を起こしたい」。結果を出すことで、Jへの道を切り開く。
(沖縄タイムス)

大学/ 駒澤大学

 第34回総理大臣杯全日本大学サッカートーナメント決勝では中京大に1-2とリードされた90分に、大塚涼太が同点シュートをたたき込み延長戦に持ち込むと、104分に湯澤洋介が決勝点を挙げ、3-2の勝利で6年ぶり6回目の優勝を果たした。「最後まであきらめずに戦って逆転していくという力がついてきた」と、守備の要であり、ボランチもこなす金正也主将は語る。
   駒澤大学体育会サッカー部は1931年に創立。総理大臣杯では2002~04年、全日本大学サッカー選手権大会では04~06年に3連覇を達成した強豪チームだ。06年以来の全国タイトル獲得となった今季のチームは、「どちらかというとディフェンスのチーム。しっかりスペースを抑えたり、ボールに行ったりという部分の頑張る力、守備力はたけていると思う」(秋田浩一監督)と堅守が光る。
 攻撃はスピードがあり、伝統の「堅守速攻」は健在だ。攻撃をつかさどるのは、パスセンス、戦術眼に優れ、2009年度の全国高等学校サッカー選手権大会で山梨学院大附属高を優勝へけん引した碓井鉄平。スピードのある184センチの大型FW棗佑喜、得点能力の高い山本大貴、田中信也、正確なクロス、豊富な運動量が魅力の金久保彩ら攻撃陣も輝きを見せる。
 総理大臣杯優勝後、「ここが終着点ではない。みんなで力を出し合って粘り強くやることが、もう一つ上のレベルでやれることかなと思っている」と秋田監督。「最後まであきらめずに戦う」術を身に付けた大学王者が、さらなる高みを目指し、天皇杯全日本サッカー選手権大会に挑む。
(フリーライター 尾崎ルミ)