日本共産党

2003年2月4日(火)「しんぶん赤旗」

岩手・陸前高田に共産党員市長誕生

福祉・くらし重視 わかりやすい政策

市民が勇気もって投票


不要不急 “タラソテラピー(海洋療法施設)なんかいらない”

声届く市政 草の根の力で

写真

初当選から−夜明け、市民の激励を受ける中里氏(右)=3日、陸前高田市

 良質なカキと三陸ワカメで知られる岩手県南の陸前高田市(人口二万六千四百人)。

 二日投票の同市長選は「新しい陸前高田市をつくる市民の声」(「市民の声」)の中里長門(ながと)氏(56)=無所属、日本共産党前市議=が、五選をめざした菅野俊吾氏(67)=無所属=を千二百四十四票の差をつけ、激戦を制して初当選をはたしました。(岩手県 三国大助記者)

喜びの涙

 中里氏の獲得した得票は九千四百十七票(得票率53・54%)でした。

 同日夜、「市民の声」の祝賀会場に「当選」の第一報が入ると、詰めかけた三百人の市民は「やった!」「バンザイ」と歓喜の声をあげました。喜びで涙し、抱き合う姿も、あちこちで見られました。

 感激の面持ちで中里氏は「一人ひとりの市政改革の願いが実を結んだ。私の知らないところで、市民が努力した結果が現れた。市民と力を合わせて公約を実現する。市民の声を聞き、市民の目線で市政をすすめたい」と力強く決意をのべました。

 「市民の声」の戸羽太選対幹事長は「市民の勝利だ」と強調しました。

 会場に駆けつけた河野万里さん(48)は「やっと市民の声が届き、中里さんが当選してうれしい」と熱っぽく語りました。

保守系市議も

 「市民の声」には、市が八億円を投入するタラソテラピー(海洋療法)施設建設の中止を求める市民と市議七人(日本共産党二人、保守系の「爽風会」五人)が参加し、草の根の運動を展開しました。

 市長選では同施設建設の是非が最大の争点になり、不要不急の同施設建設にたいして、市民はノーをつきつけました。

 中里氏は、市がホテル買い取りなど開発優先で借金残高を百六十六億円に増やしたことを批判。タラソテラピー施設建設はただちに中止すべきだと主張し、リゾート優先から市民のくらし、福祉を第一にする市政に転換することを訴えました。

 また、すぐできることとして、市長専用車の廃止、市長交際費の削減と公開、市長報酬の削減などを掲げました。

 街頭演説や個人演説会では、中里氏とともに、「市民の声」の米澤政敏会長(理容業)や、戸羽太選対幹事長も「市民の声が届かない市政を変えよう」と訴えました。

住民請求にも

 同市では昨年一月に、「陸前高田市政を考える市民の会」(菅野整交会長)が結成され、市のホテル買い取りに反対する運動を展開しました。「市民の会」は昨年の十二月議会に、タラソテラピー施設建設の可否を問う住民投票条例案を、二千六百七十七人分の署名を添えて直接請求。しかし、菅野市長は同条例案に「制定する必要がない」という反対意見を付けて提出し、議会は賛成少数で否決しました。

 「市民の会」は、菅野市政では市民の声が届かなくなったとして、市長選で市民の意志を示そうと意思統一。タラソテラピー問題などで共同してきた八人の市議に、市長選への出馬を要請しました。

 昨年十二月末に「市民の声」が約二百人の市民で結成。日本共産党市議を四期十六年間務めた中里氏の鋭い論戦力と市民の目線での活動を評価され、無所属で立候補することになりました。

広がる共感

 同市は県内十三市のなかで市民所得が最下位。農漁業や商業なども衰退しています。

 こうしたなか中里氏の暮らしを応援する姿勢を鮮明にした演説を聞いた市民が「涙が出た」と語ったり、「国保税を下げてほしい」と一円玉が多数入った袋を渡し、願いを託すなど、共感が大きくひろがっていきました。

 主婦の佐々木玉子さん(56)は「タラソの署名を集め、議会も傍聴したが、菅野市長は市民の声に耳をかそうとしないことを実感した。市長選で支持を訴えたが、声を出す市民が多くなってきたと思う。中里さんには市民の声を聞きながら市政に反映してほしい」と期待をのべます。

 無党派の三十代の男性は「タラソをつくることで借金が市民に回ってくることになる。それにたいする反発で運動に参加した。若い人に職がない。くらし重視の政策を主張している中里さんを応援した」と語ります。

反共攻撃退け

 市民らの動きに危機感を抱いた菅野陣営は、八十以上の企業・団体の推薦を受け、第一声から自由党の国会議員や県議、十四人の市議を投入。街頭宣伝では、ある市議が「市長選は共産党員とのたたかいだ」と争点そらしの演説を続けました。

 しかし、「市民の声」は「党派を超えた市民運動を妨害し、タラソ施設建設など争点を有権者から、そらすもの」と法定ビラで反論しました。

新市長とともに頑張る

 あたらしい陸前高田市をつくる市民の声幹事長の戸羽太さん(38)=「爽風会」市議

 有権者が勇気をもって投票した結果で、タラソテラピーの見直しや福祉・暮らし重視など、すごく分かりやすい政策が市民に広く支持されたのだと思う。今回の政策は中里さんの四期十六年間のライフスタイルから生まれたもので、選挙目当てではないことは市民も分かっていた。私は自民党員だが、無駄遣いをやめさせることなど地域の課題では、私の考えとも共通する。国保税引き下げや第三子の保育料の無料化などの公約を実現してほしいとの期待がさっそく寄せられている。新市長とともに公約を形にするためがんばりたい。


市民感覚に

より近く地元紙報道

 地元紙・河北新報三日付は、中里陣営の主張が「不況に苦しむ市民感覚により近く、支持は市全域へと広がった」とし、岩手日報の同日付は、今回の選挙結果について「同市に漂う閉塞(へいそく)感を打破してほしいという市民の意識のうねり、菅野市政への批判が表れた結果と言える」と論評しています。


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