1 水彩絵の具の成分
成分は、着色顔料に体質顔料、接着剤の役割をするアラビアガムとデキストリン等の水溶性樹脂、水、乾燥を調節する為のグリセリン等の湿潤剤、添加剤(分散剤や保存料)を加えたものです。
2 水彩絵の具の誤飲、誤食
当組合加盟企業で、児童用に作られた水彩絵の具の場合、多少の誤飲であれば特別、ご心配頂く必要はございません。まず誤飲したお子様の状態をご確認頂き、問題がなさそうなら、経過観察して下さい。
万が一いつもと違うような様子が見受けられたり、何らかのアレルギー反応の様子その他の異常が確認できたりするようでしたら、医師に連絡し、指示を受けて下さい。
また、お口の中に絵の具の後味が残らないよう、うがいをさせて下さい。うがいができないお子さま等が誤飲された場合には濡れタオルなどでお口の中を拭いてあげてください。
3 水彩絵の具の作り方
@ 色の元になる顔料と体質顔料に、水溶性樹脂と湿潤剤と水を容器に入れて混合します。
A ボールミル・ロールミルなどの機械で混合、攪拌、擦りつぶしの工程を経て、粒子の細かい適度の粘度のある水彩絵の具ができます。
B できた絵の具を検査し、チューブなどに充填していきます。
C 全部の色が揃ったら、容器に並べて完成。 |
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4.絵の具の種類
下地の色が透けて見える透明水彩絵の具、上の絵の具が下の色を覆い隠す不透明水彩絵の具、水の加減で透明にも不透明にも描ける半透明水彩絵の具があります。
学童用絵の具は一般には半透明水彩絵の具です。ポスター制作などに使われるポスターカラーは不透明水彩絵の具です。水溶性樹脂の代わりに乾くと耐水性のあるアクリル樹脂を使ったアクリルカラーやアクリルガッシュと呼ばれる絵の具もあります。
携帯に便利な固形絵の具(ケーキカラー)もあります。
5.顔料とは
絵の具の色の元を顔料といいます。古くは天然の鉱物(土、石など)を細かく砕いたり、動物の骨を焼いて細かく砕いたものなどを顔料として使用していました。
しかし、これらは不純物が多く又色が鮮やかでなかったため、現在ではほとんどの顔料は金属や石油から合成された顔料を使用しています。
特に白色で着色力の少ない顔料を体質顔料といい、塗りやすくする為に加えています。
6.水彩絵の具は何色まであるの
JIS(日本工業規格)では36色の色名と色調が規定されています。
学童用に市販されているものでは26色まであります。
7.絵の具の廃棄
搾りだした絵の具は原則として燃やせるゴミです。 チューブと容器は、材質表示を見て、各自治体で定める廃棄方法に従ってください。自治体によっては、大量の絵の具の中身は、産業廃棄物とみなされる場合もあるようです。
8.汚れの落し方
水彩絵の具の落し方
対象物 |
汚れの落し方 |
落ち具合 |
ガラス/金属/
プラスチック |
水で洗い流すか、濡れ雑巾で拭き取る |
ほぼ完全に落ちます |
布類(木綿) |
1. 少し熱めのお湯(40-50℃)に汚れた部分を浸す
2. 汚れた部分に洗剤を付け、固めの歯ブラシでこする
3. 1.2.を繰り返し、最後に水ですすぐ |
完全には落ちません。
多少色が残ります。 |
※ 絵の具が乾く前に処理すると比較的容易です。なるべく時間が経たない内に処理してください。
9 変なにおいがする、カビが生えた
絵の具には、でんぷん質のデキストリンや、アラビアガムのなどの食品にも使われる安全な材料を使用しているのでカビが生えることがあります。これらの絵の具には保存料を加えてありますが、添加量を低く抑えておりますので、古くなると腐敗する場合もあります。絞り出した絵の具は早めにご使用ください。また、使い残ったものは再び容器に戻さないようにして下さい。
10.水彩絵の具の歴史
■ 「水彩絵の具の歴史」文責:清水靖子(サクラアートミュージアム主任学芸員)
参考文献:森田恒之著『画材の博物誌』(中央公論美術出版、1986年)、サクラアートミュージアム編『クレパス画事典』(潟Tクラクレパス出版部、2005年)、社史編集会議編『サクラクレパスの七十年』(1991年、潟Tクラクレパス)
顔料を水や固着剤と混ぜて色どりに用いた水彩絵の具のようなのものを考え出したのは紀元前のギリシャの画家だとも言われている。しかし現在、人類最古の絵と見られるラスコーの洞窟画は、数万年前の氷河期に描かれたものです。これは身近にあった墨や土など鉱物質のものを使って描かれていて、絵の具の始まりといえるかもしれません。我が国へは明治になってから輸入され、児童用として使われだしたのは、大正から昭和の初期ころだといわれています。学校の図画教育の中で水彩絵の具が使われだしたのは明治43年です。
今日の私たちが水彩絵の具と呼んでいる透明水彩絵の具、不透明水彩絵の具は18世紀後半から19世紀初頭にかけてヨーロッパで完成されたものです。このヨーロッパを源流とする水彩絵の具が日本に輸入されたのは1887年(明治20)頃のことで、それはケーキと呼ばれる墨のように固めた乾性の固形水彩でした。その二年後には国産の水彩絵の具が製造されるようになりますが、当時のものは皿入りで、日本画に使われていたものの改良品でした。この水彩絵の具が教育用の描画材料として使われるのは、文部省が図画教育を正課として採択した1893年(明治26)からです。チューブ入りの絵の具が輸入されたのは1897年(明治30)頃のことで、1909年(明治42)頃から本格的に国産のチューブ入り水彩絵の具の製造が始まりました。
日本では昭和初期から、鉛チューブ入りの透明水彩絵の具が小学校高学年向けに商品化されました。しかし、透明水彩絵の具は一度塗った色を最後まで生かした効果が絵具の特性であり、たとえば描き間違えると塗り重ねて修正するということができなかったので、小学生にとってはあまり扱い易いものではありませんでした。そこで、発色を不透明化することによって、塗られた色がその都度自由に修正ができ、子供でも思う通りに作品を仕上げることができる水彩絵の具が開発されました。それが1950年(昭和25)に開発された半透明水彩絵の具でした。
この半透明水彩絵の具は、一般には不透明水彩絵の具として括られて分類されていますが、不透明な不透明水彩絵の具(ガッシュ)やポスターカラーに対して、透明水彩絵の具との中間的なものとして差別化しています。この半透明水彩絵の具は、たっぷりの水で薄く溶いて使えば透明水彩絵の具のように淡い色使いができ、その反対に水を少なくして濃く使えば不透明水彩絵の具のような色彩表現ができます。さらに、描き間違えた個所を塗り重ねてなおすことができるので、失敗を気にしないでのびのびと描けます。以降、学校教材で使われている水彩絵の具は、この半透明水彩絵の具がほとんどです。 |