×

ニュース

岩国市長 福田氏3選 艦載機移転 最終判断へ

 岩国市長選は24日投開票され、無所属現職の福田良彦氏(45)=自民、公明推薦=が元市議で無所属新人の姫野敦子氏(56)を大差で退け、3選を果たした。同市の米海兵隊岩国基地には2017年ごろまでに米海軍厚木基地(神奈川県)から空母艦載機59機の移転が予定される。在日米軍再編に協力姿勢を示す福田氏の当選で、市は安心安全対策やまちづくり支援をめぐる国との協議を踏まえ、受け入れを最終判断することになる。

 投票率は47・49%で、前回の64・01%を16・52ポイントも下回った。今季一番の寒波の影響もあり、06年の新市発足以降で最低となった。

 福田氏は2期8年の実績として財政健全化への取り組みや子育て施策の充実を強調。艦載機移転を認めるかどうかは「国との協議の先にある」とする一方「基地との共存」を掲げ、基地と滑走路を共用する岩国錦帯橋空港を軸に企業誘致や観光振興を図り、人口減少に歯止めをかけると訴えた。自民党県議や市議の大半の支援を受けて組織戦を展開し、初めて連合山口の推薦も得て支持を固めた。

 姫野氏は艦載機移転に反対し、国の米軍再編交付金に頼らない市政運営を訴えたが、及ばなかった。

 当日有権者数は11万4459人。(野田華奈子)

岩国市長選最終結果(敬称略)

当39,074 福田良彦 無現
 14,820 姫野敦子 無新

 福田良彦(ふくだ・よしひこ)氏 衆院議員秘書から1999年、旧岩国市議に当選。2003年、山口県議に転じ、05年の衆院選山口2区で当選。08年の岩国市長選で初当選した。岩国市出身。法政大法学部卒。

空港活用し観光振興

福田市長の話
 今後のまちづくりに大きな期待をいただいた。3月に合併10周年を迎える市のさらなる飛躍に向け、中山間地域の振興や岩国錦帯橋空港を活用した観光振興、企業誘致などにしっかり取り組みたい。

「基地共存」掲げ福田さん 岩国市長選 2期の実績アピール

 2017年ごろまでに迫る米海兵隊岩国基地への空母艦載機移転への対応などが争点となった岩国市長選は24日、現職の福田良彦さん(45)が3度目の当選を決めた。「基地との共存」を掲げるまちづくりを、民意は「現実的な対応」と選択した。旧8市町村の合併から3月20日で10年。周辺部で加速する人口減少への対策も問われる。(野田華奈子)

 当選確実の一報を受け、福田さんが岩国市岩国のホテルに姿を見せると、集まった支持者からは「おめでとう」と大きな拍手が湧き起こった。

 妻の朋江さん(44)や、選挙戦を支援した自民党の国会議員と山口県議、市議たちと壇上で万歳した。福田さんは「初心に立ち返って市民の声を聞き、市民と同じ目線で行政を進めたい」と、3期目への決意を語った。

 選挙戦では、2期8年の市政運営を「市民の気持ちを一つに、新たなまちづくりの礎を築くことができた」と振り返り、岩国錦帯橋空港開港や消防防災センターの建設、JR岩国駅のリニューアル工事着工など拠点整備の進展や財政健全化への取り組みを実績としてアピールした。

 艦載機移転をめぐっては、対立候補の反対の訴えを「騒音や治安の問題で、しっかり国と協議している」とかわした。受け入れの最終判断は「その先にある」と説明する一方、人口減少対策を最優先の課題とし、さらなる企業誘致や観光振興で人を呼び込む仕組みづくりの必要性を訴えた。

岩国市長選最終結果(敬称略)

当39,074 福田良彦 無現
 14,820 姫野敦子 無新

姫野さん、訴え及ばず

 「皆さんの思いに応えられず申し訳ない」。艦載機移転反対を掲げて挑んだ新人の姫野敦子さん(56)は、岩国市岩国の事務所で悔しさをにじませて支持者に頭を下げた。

 昨年10月、「平和で安心して子育てできるまちにしたい」と立候補を表明。井原勝介前市長(65)が代表を務める政治団体など、艦載機移転や愛宕山地区への米軍家族住宅の建設に反対する5団体の支援を受けた。

 旧市時代を含め15年半の市議経験をアピール。米軍再編交付金に頼らないまちづくりを訴え、「岩国は自立できる」をキャッチフレーズに市内をくまなく回った。

 医療、福祉の現場で働いた経験も前面に出し、「市民派」として浸透を図ったが及ばなかった。(大村隆)

【解説】安全対策 重い責任 主体性持ちまちづくりを

 来年にも予定される米海兵隊岩国基地への米空母艦載機移転の対応が争点になるのは、市長選では最後だろう。「基地との共存」を掲げる現職福田良彦氏が当選した。受け入れの最終判断は「国との協議の先にある」とした福田氏。騒音や治安といった安心安全対策に責任を果たさなければならない。

 岩国基地内と愛宕山地区では、国による移転受け入れのための米軍施設工事が着々と進む。大半の市民にとって、移転は是非を超えた不可避なものに映るだろう。この点も現職続投の結果に作用したと思われる。

 福田氏を推した移転容認派は国からの「基地マネー」に期待する。一方で爆音をまき散らす艦載機が移ってくれば、極東最大級になりゆく基地は市民に大きな負担とリスクをもたらす。

 だが基地の持つ負の側面や生活への影響について、福田氏は選挙戦で積極的には触れなかった。具体的な議論を急ぎ、市民が納得する対策を国と米軍に果たさせることが福田氏に求められる。

 岩国錦帯橋空港の開港・増便や消防防災センター整備、米軍家族住宅に併設される大型運動施設など、基地負担の見返りが市中心部で形になっていっても市の活力に直結する人口は減少が続く。「基地を生かしたまちづくり」が、米軍の都合が優先される「基地次第のまち」になってはならない。(野田華奈子)

(2016年1月25日朝刊掲載)

年別アーカイブ